2011年7月1日金曜日

「燃えたぎる石」

植松三十里さんの「燃えたぎる石」を読んでいます。


これは江戸末期に、常磐炭鉱を発掘して、その石炭を売り、あの咸臨丸の燃料にまでしてしまった商人の話で、日本のものづくりの近代化の過程が詳しく描かれています。

主人公は実在の人物で、片寄平蔵(かたよせへいぞう)さんというのですが、若い時は材木商を営んでいたそうですが、それが38歳くらいのとき、世の中に「燃える石」というのがあり、それを探し求めて、そして開国の地であった横浜に店を開いて商売にした人の物語です。

当時の日本はアメリカやイギリスなどの列強から囲まれるようにして鎖国を解くわけですが、異国の黒船に対抗するにはそれに匹敵する技術が必要ということになり、平蔵さんはいろいろな人に石炭の重要性を説き、日本の国家のために石炭産業を事業化しました。

平蔵さんはいわき市出身で、いわきと江戸とを何回も行き来していますが、家族や周囲の人に反対されてもそれを貫く不屈の精神は素晴らしいものでした。

「国を富ますのも滅ぼすのも、幕府でも朝廷でもない、普通の商人の力によるものだ」と書いてありましたが、それは現代にも通用することですね。

また炭鉱が爆発してしまい、炭鉱夫が埋もれて亡くなってしまうという悲劇もありましたが、それを乗り越えていきました。飢饉に苦しむ農民にとっては炭鉱でお金を得ることのほうが、仕事がないことよりもありがたいことだったのです。

その常磐炭鉱も昭和の時代になり、エネルギー源が石炭から石油と移っていくうちにすたれてしまい、「常盤ハワイアンセンター」に変身をして、そして今回の大震災と原発ではいわき市は大被害を受けました。しかし平蔵さんのような不屈の精神のもと、強く立ちあがってほしいと思います。

ちょっと個人的なことですけれど、この本はいわき市出身で、某化学メーカーで営業をしている娘婿にも読んでもらいたいと思いました。

平蔵さんのことはこちらのうつくしま電子事典に載っています。

2 件のコメント:

マサ さんのコメント...

としちゃん、植松三十里さんの本にはまっていますね。
私は歴史にはとんと疎いのだけど、幕末から明治にかけては、「新しい日本を作ろう」とする情熱と理想に燃える志の高い人が、沢山いた気がします。
今はどうなんでしょう。あまり人のことは言えませんが。

おおしまとしこ さんのコメント...

マサさん、私の読書傾向は同じ著者の本をずっと読み続けるというのですが、今はまさに植松さんに、はまっていますね。

この本を読んでいると、エネルギー革命ということが連想してきます。原子力を推進した人は当時はこれは夢のようなものだろうと思ったのでしょうけれど、今はそれが無残になってしまいましたね。これから風力や地熱や他のエネルギーを考えている人も今は周囲に理解されないかもしれませんが、この主人公のように頑張ってもらいたいと思います。でもこの人、最後は若くして攘夷派に殺されてしまうのよ。それが可哀相だったわ。