2014年1月20日月曜日

銀座で2つの展覧会

先週の話になってしまいますが、銀座で2つ展覧会を見てきました。

ひとつは草乃しずかさんという刺繍作家さんの作品展です。
草乃しずかの世界展▼


草乃さんは日本刺繍の作家さんですが、今年で刺繍を初めて40年だそうです。

ちょうど私が会場(銀座松屋)に行ったとき、「これから草乃さんご本人のギャラリートークが始まります」というアナウンスがありました。
ついていましたね。
それで草乃さん直々の説明をお聞きしながら、作品を鑑賞することができました。

(お土産に買った絵葉書や栞を載せてみました。)


最初のほうのコーナーには、人生を10年ごとに区切って色と刺繍で表した作品がありました。
十代、二十代、三十代・・・・・それぞれがピンクや白や紫、緑などで表現してありました。

私は自分の年代のところが興味があったのですが、そこには「我を知り、人を知る」年代だと説明されていて、色は薄い水色でした。
なるほど。


草乃さんのお母様も刺繍をされる方なのですが、なんと5月には101歳になられるというお母さまが車椅子で会場にいらっしゃっていました。
独り暮らしをされていらっしゃるそうです。

お母様と草乃さんの合作というアップリケ(お兄様の浴衣生地を使用したもの)と刺繍がミックスされた作品を見せていただきましたが、とてもダイナミックでした。
お母さまはとてもお元気な様子でした。

草乃さんの素晴らしいところは、古典文学との融合作品を刺繍で表したことでしょうね。とくに源氏物語は素晴らしい刺繍がたくさんありました。色といい図案といい、よくここまで考えられたものだと、感動しました。

そして草乃さんの生き方は、刺繍だけでなく、社会的な活動にも関わっていらっしゃいました。
特に東日本大震災で被害に遭われた方の心に響くよう、その悲しみと不安をぬぐい去るように、60人もの人の手をリレーして作られたという刺繍はとても素晴らしいものでした。刺繍で悲しみを乗り越えよう、というお気持ちが作品に表れていました。

「一針に祈りをこめて」というテーマがぴったりだと思いました。

草乃さんはご自身の作品の着物と帯をお召しになっていて、楚々とした女性のようにお見受けしましたが、実はとても自立心のある、強い心の持ち主でいらっしゃるということが伝わってきました。

草乃しずかの世界展は1月20日まで。



もうひとつは御召しの着物ばかりを集めた展覧会でした。

「今甦る昭和のトップモード”御召”~谷博義コレクション~」▼というのを銀座松崎画廊で見てきました。
松崎画廊というのは、松崎煎餅が経営している画廊なのですね。1階がおせんべい屋さんでした。


ここには昭和30年代頃に作られた御召と、それの復刻版が展示されていました。

大田区の「丸や呉服店」というお店の初代の谷博義さんという方が、絹織物を後世に残すために、たくさん集めたものだそうです。

御召というとどうも矢絣とか、かっちりとしてイメージがあったのですが、同じ御召でも京都の御召、桐生の御召、十日町の御召などと産地によってそれぞれの個性があることも分かりました。

お店の若奥様に案内をしていただきました。

昭和の香りがしていて、とても懐かしく思いました。
「あっ、こういうのは母が着ていてわ」とか「昔の婦人雑誌で眺めたことがあるわ」という着物がたくさん並んでいました。


面白かったのは、当時の説明があまりにも現代とかけ離れていることでした。
たとえば今だったら80歳のおばあさんが着るような超地味な茶色の御召なのに、「50代の女性向き」などと書いてあって、「えー、ウソでしょ!」と言いたくなるほどでした。
昭和30年代といえば、平均寿命もまだ短かったでしょうし、きっと30歳を過ぎたら女でない、50歳をすぎたらおばあさん、という時代だったのだろうなと思いました。

このように御召だけの展覧会というのはあまりないと思いますが、たくさん拝見できたので、御召とはどんなものであるかも少しは分かりましたし、また縫いとりをしてある御召もあったし、いろいろと勉強させてもらいました。

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この日の装い。

刺繍でもなく、御召でもありませんでしたが、頂き物の藍色の紬。部分的に、こぎん刺繍のような模様が入っています。

とても暖かいので、今頃の季節にはしょっちゅう着用しています。


帯は柿色(?)ふくれ織。
若草色の帯締めばかり目立ってしまったようですが。

私もたまには刺繍入りの着物を着てみたいな、とは思いましたが、当分無理でしょうね。





2 件のコメント:

ずんこ さんのコメント...

刺繍作家というお仕事、初めて知りましたがとても素敵ですね。
まるで絵のように細かくて驚きました。
沢山の人のリレーで作られた祈りの刺繍、見てみたいです。思いを込めて作り上げた作品だからこそ心に響くのでしょうね。

御召の説明、笑ってしまいました。私だったら好きな服を着たいから「○代向き」なんて書かないで欲しいかも・・

おおしまとしこ さんのコメント...

ずんこさん、すべてが手刺繍なのですが、絵のように素晴らしかったですね。この方は初めはフランス刺繍をされていて、その後、日本刺繍をするようになったそうです。東北支援のリレー刺繍も素敵でしたよ。

御召ですが、30代向け女性というのもありましたよ。でもいちいち指定されたくないですよね。私など、今になってピンクの着物など着ていますから。