2016年5月5日木曜日

最近読んだ本 ~2016年初夏~

最近読んだ本を、ちょっとまとめてみました。

例によって、私の好みは偏在しているので、誰にでもおススメできるというものではなく、自分の忘備録のつもりで書いておりますので、そのおつもりでどうぞ。

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「為吉」 宇江佐真理 著

私の大好きな宇江佐さんが、2013年から2015年にかけてある月刊誌に書いたものをまとめたものです。
両親を皆殺しにされて、一人生き残った不幸な生い立ちの奉行所付き中間である為吉という若い男を中心に、彼の周囲に登場する人物を一人ずつスポットライトを当てて展開していく小説です。
中でも私の心に響いたのは、「与力の妻 村井あさ」の章でした。
あさには両親も認めた許嫁がいたのですが、あさの兄が不慮の事故で死んだことにより、あさは彼とは結ばれることなく、現在はあまりぱっとしない与力の妻として生きています。
それでもあさには夫との間に二男二女がいて幸せに暮らしていますが、かつての許嫁である与力が、仕事の上でトラブルを起こしてしまいます。
そのトラブルを解決してくれたのは、現在の夫でした。
昔の思い出と、現在の夫との間であさの心は揺れました。
その女心を繊細に描いたもので、艶めいた話ではありませんが、じっくりと読むことができました。
他にも数編、このような話が続いています。


「マルガリータ」 村木 嵐 著

この方は司馬遼太郎さんの奥様の個人秘書をされていらっしゃる方だそうですが、その方が描いた江戸時代初期のキリスト教信者迫害の話です。
なんというか後半になると、読んでいて苦しくなるような感じでした。
主人公たちの科白の応答が続き、真に迫るような感じはすごいのですが、あまりに救いのない内容なので、息苦しさを感じてしまいました。
それだけ筆の力がすごいのでしょうが、どこかに救いが欲しかったと思います。
それにしても徳川幕府の異教徒迫害は凄まじいもので、気分が悪くなるほどでした。


「東京島」 桐野夏生 著

桐野さんの本はいつもぐっと胸に差し込む迫力がありますが、これはその度合いがいつも以上に強烈です。
無人島に流されてしまった女性、清子ですが、そこで数十人の男に囲まれて暮らすことになります。
それまでは中年で何も取り柄のなかった彼女ですが、この島では女王として君臨することになります。
著者が様々な状況における人間の真の姿をここまであくどく書けるというのは、きっと作家というのは自分をさらけ出すことが怖くないのだろうと思わざるを得ません。
最終章では、清子の産んだ双子の姉弟が登場して、ようやく嵐の中から微光が見えてきたような様子になり、少しはホッとしました。
この本は映画化されたそうですが、白豚とののしられた主人公の中年女役は、なんと楚々として美しい木村多江さんが演じたそうで、びっくりこけました。他の男性陣もいわゆるかっこいい俳優さんばかりで、それはちょっとウソっぽいですね。
それだから原作に感動しても、映画化されたものは見る気になれないのです。


「エイジハラスメント」 内館牧子 著

前に読んだ内館さんの「十二単を着た悪魔」▼があまりに面白かったので、同じ著者の本を読んでみましたが、これは現代劇でそれほど感激はしませんでした。
「私ってもう年なのよね」というのが口癖の34歳の主婦を中心にしたお話ですが、これは小説よりも辛口のエッセイにしておいたほうがよかったのでは、と思いました。


「小町殺し」 山口恵以子 著

食堂のおばちゃんをしながら松本清張賞を受賞したことで一躍有名になった山口さんの小説。
こちらは時代劇だけど面白かったわ。
錦絵に描かれた美人ばかりが小指を切られて殺されてしまうという話ですが、犯人は分からず仕舞い。
新内流しをしている女性剣士おれんが、かっこよく謎を解いていきます。
活劇とでもいう感じでしょうか。


「月下上海」 山口恵子 著

こちらは途中で挫折してしまった本。
上と同じ著書なのに、なんだか読みにくかったです。
松本清張賞を受賞した小説なのですが、うーん、なんとなく波長が合わなかったのか、途中で読むのをやめてしまいました。


「湿地帯」 宮尾登美子 著

これは著者ご本人も認めている通り、はっきりいって駄作です。
お若い時の作品ですが、あの宮尾さんもこういう小説を描いたことがあるのか、と唖然としたくらい内容も表現も稚拙でした。
仕方なく最後まで読みましたが、時間がもったいないくらいでした。
推理小説を意識したのでしょうが、夏樹静子のようにはなりませんでしたし、恋愛小説としても面白くない。
もし初の宮尾さんの小説がこれだった人は、きっとその後は彼女の作品を読むことはないだろうと思いました。
ケチをつけてしまいましたが、宮尾さんの著書は、これ以外はすべて素晴らしいものです。


2 件のコメント:

マサ さんのコメント...

としちゃん、ずいぶんたくさん本を読んでいるのね。
私が今読んでいるのは、宮本輝の「水のかたち」(下)です。宮本さんらしい高潔な小説ですが、最近本を手にするとすぐ眠くなってしまって、なかなかページが進みません。
寝る前にベッドの中で読むのが昔からの習慣なのですが、としちゃんはいつ読みますか?

ここに挙げられた中では、「東京島」を読みました。
体が汗でベトベトになりそうな?小説でしたね。
そうそう、映画では木村多江が主人公の清子を演じたのよね。木村多江には薄幸な女のイメージがつきまとうので、意外な配役でした。
私は、ちょっと太った薬師丸ひろ子をイメージしていました。薬師丸さんに悪いか(笑)

としちゃん さんのコメント...

マサさん、私の読書タイムは電車の中と、寝る前のベッドの中です。
読むのはかなり早い方だと思いますが、すぐに忘れてしまう(笑)。

東京島の主人公が木村多江というのは、絶対におかしいですよね。
うーん、薬師丸ひろ子ねえ。ちょっと可哀想かな。
あまり女優さんの名前が思いつかないのですが、そのへんにいるおばちゃんタイプでしょうね。