2017年3月9日木曜日

「一路」上・下

最近、読んだ本の中で一番面白かったのは、浅田次郎さんの「一路」。
上下二巻でかなりのボリュームですが、それぞれ2回ずつ読みました。


タイトルの「一路」は「いちろう」ではなく、「いちろ」と読みますが、主人公・小野寺一路の名前です。
彼は、なんとなくイチローに似ている雰囲気を醸し出している若い武士です。
名前通り、まっすぐな道を行くという人です。

ストーリーを簡単に言ってしまうと、参勤交代のお話。
美濃の某藩から、中山道を通って江戸までの道中のお話です。
それにお家騒動も絡んでいます。

さて、一路は屋敷が火事になり、そのため急死した父の家督を相続します。
そして蒔坂家の御供頭として、江戸への参勤行列を差配することになります。
とはいえ、彼は生まれついての江戸住まいのため、参勤交代など経験したことがないのに、19歳の若さでその道中を取りまとめなくてはならない。
さぁ、大変!
それでも家伝の「行軍録」を手がかりにして、一路の一行は中山道を辿って江戸に向かいます。

逝く手には幾重もの難関が待ち受けていました。
それでも行軍録の教えに従って、それらを見事克服していきます。


物語には、いろいろな人物が登場してきます。

「うつけもの」という評判のバカ殿も登場しますが、私は彼こそがこの物語の隠れた主人公ではないかと思いました。
お殿様たるもの、感情や表情を表してはならないそうでで、「大儀じゃ」「執着じゃ」「よきに計らえ」などしか発してはいけない時代なのに、結構いろんな本音をしゃべっています。決してうつけものではないことが分かります。

お殿様の他にも、巨漢の双子とか、悪事をたくらむやから、可憐なお姫様などが登場します。
それぞれ、この時代独特の、それぞれの身分の言葉や態度で、たっぷりと人物像が描かれています。

それと人間ではないのですが、お殿様の馬も2頭登場してきて、彼らが話す馬語がとても面白くて、本質をついていると思います。

ちなみにこの「一路」は去年、テレビでも放送▼されたそうです。
主人公の一路役は永山なんとかさんという若い俳優さんでした。

また以前、「超高速参勤交代」という映画を私も見ました▼が、それもこの「一路」の影響があるかもしれませんね。

一路たちの一行は、いろいろな苦難を乗り越えて、江戸に辿り着きます。
物語はここで終了していますが、しかしその何年か後には、江戸幕府そのものが解体され、参勤交代の制度もあえなく崩れてしまいました。
一路はその後の世界で、どのような人生を歩んだのでしょうね。

これは、私の好きな男性作家(男性で好きな作家はあまりいませんが)の浅田次郎さんの傑作だと思いました。

大好きな世界を堪能できて、満足した時代小説でした。




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