2019年8月15日木曜日

「池田山舞台」にて

以前の私からは信じられないことですが、最近は能や狂言の舞台を見ることが多くなりました。
古典芸能鑑賞も興味がありますが、それに加えて、知らなかった場所に出かけて、知らなかった未知の世界を観察できるのは、とても楽しいことです。

グーグルマップや、駅前の看板を頼りに、行ったことのない場所を探し出すということが、私の趣味でもあります。
そして到着したところが、今まで出会ったことのないような素敵な場所であると、ますますお出かけが楽しくなるのです。

前置きがながくなりましたね。

さて、先日は、能の仕舞やお囃子の発表会があるというので、35度の猛暑の中、五反田にある「池田山舞台」というところに初めて行ってみました。


池田山といえば、高級住宅地として有名なところです。
美智子さまのご実家もたしか、このあたりだったはずです。
さて、どんな出会いがあるか、楽しみにして行きました。

場所は、JR五反田駅からちょっと入ったところの石畳の坂道を登った先のようです。


登り坂の写真です。
写し方が悪くて、あまり坂のようには見えませんが、結構な角度の坂道でした。


坂の両側には桜の木の葉が生い茂っていて、桜の季節にはさぞ美しいことだろうと想像しながら歩きました。
とはいえ、真夏の暑さには、この坂はちょっとこたえました。

場所がイマイチ分からなかったのですが、浴衣姿の方が「入り口はこちらよ」と教えてくれました。


「東京杉会+合同稽古会」という会です。

合同ということは、いろいろな会でお稽古をされている方たちが出演されているようです。


重い扉を押して中に入ってみると、目の前にどーんと立派な能舞台が見えました。
私のような者が入ってもよいのだろうかと、一瞬、躊躇しましたが、そこは年の功で、中に入らせていただきました。

舞台は、国立能楽堂と同じ寸法だそうです。


とてもきれいで、それでいて落ち着いた素晴らしい空間でした。

舞台を囲むように椅子席と座敷の客席がありましたが、舞台は低い位置にあり、目の前にありました。

この会ではプロの方に混じって、お稽古をされている方たちが発表をしていました。
学生さんから、かなりのお年を召した方までいらっしゃいましたが、みなさん、真剣な表情でした。

facebookで知り合ったTさんは、お一人で小鼓を演奏されました。
「三輪」という能でした。
奈良の三輪山に住む僧のところに、毎日、水を持ってくる女性がいて・・・・というお話だそうです。
謡の方と、たった二人で舞台に立つ(座っていましたが)のは、どれほど緊張されたことだろうと思いました。
堂々と発表されていました。
しっかりとお稽古を積まれたことでしょう。
お母様から譲られたという青い紗の夏着物が、とても涼しそうでした。

みなさん、よく通る声と、堂々とした演奏でした。
扇を持つ手の美しいこと。ピーンと伸びていて、清々しさを感じました。
まるで別世界にいるようでした。
真剣に取り組んでいる姿を見るとは、こちらまでピリッとしてきますね。


舞台に上がる人は男性が多かったのですが、浴衣や白い絣などの夏の着物に、袴をつけていました。
いろいろな模様の浴衣があって、楽しめました。

お客様の着物姿もみなそれぞれで、ラフな浴衣の方もいらっしゃれば、きちんと袋帯を締めた方もいらっしゃいました。
会場は冷房が効いていたので、着物でも楽でした。

会場には、出演者のお友達やご家族が多かったように思いました。
小さなよちよち歩きの子供もいましたが、大人しく聞いていました。
こういう環境で育つ子供たちは、やはり将来はこの道に進むのかもしれませんね。

こういう発表会を見ていると、世の中には能や舞などに関わっている人は、ずいぶん多いのだと意外に思いました。
ご自身の発表が終わった若い男性が、普通の洋服に着替えて客席に移りましたが、ごく普通の青年のように見えました。
気が付かないだけで、私たちの周りにも古典芸能を学んでいる人もいるのかもしれませんね。
若い人たちが、どのようなことがきっかけとなって、能や謡を習い始めたのか、聞いてみたい気持ちになりました。

帰りの下り坂です。


写真で見るとたいした斜面ではありませんが、草履で歩くと、下り坂の方が大変でした。

この日は、素敵な場所で、素敵なものに出会えました。
私などがお邪魔して、場違いかもしれないと思っていましたが、気分もキリリと引き締まり、身体も浄化されたような感じでした。

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この日の装い。

こういう会には何を着て行ったらよいのか分かりませんでしたが、Tさんから「今回の曲は夜の色っぽいところもある曲」だと聞いていたので、夜の雰囲気のある紗の着物にしました。


実はこの夏着物は、川越に住むfacebookの友人の奥様のお姉さまが着ていらっしゃったというものです。
奥様には、丈が短くて着られないというので、私のところに回ってきました。


帯は、シルバーの○が三つの絽の帯にしました。

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