今年の4月から始まった「日本絵画名品比べ」もいよいよ最終回を迎えました。
毎回、出光美術館の学芸部長さんから面白い解説と、たくさんのスライドを見せていただきました。歴史資料も山ほど用意していただき、こんなに充実したセミナーを、1回あたり1000円もしないで受講できたのはとても幸せでした。
最終回は2部に分かれています。
1部は与謝蕪村 VS 池大雅のお話。
2部は江戸名所図屏風 VS 洛中洛外図屏風のお話でした。
まずは1部の簡単なまとめから。
与謝蕪村や池大雅のように、本業は絵描きさんではなく、知識人(医者、詩人、先生など)が「自娯(じご)」のために描いた、いわゆる「文人画」についてのお話でした。
この分野の絵はある時期、流行しましたが100年くらいの後には廃れてしまったそうです。
当時、1700年代の日本というのは、天変地異が多く、飢饉や一揆などの社会的不安状況が続き、世の中が不穏なムードに溢れていました。(なんとなく現代のような感じですね。)
そんな時に、現実から逃避して、自分の理想とする世界を実現するために描かれたのが、この「文人画」だそうです。
したがって、すごく上手とか優れているというよりも、味わいがあるという絵が多いようです。なんとなく「下手ウマ絵」のような感じがしました。
こちらは蕪村の「夜色楼台図」。
とても横に細長い絵でした。右に大きく題名が書かれています。
これは京都・東山の冬景色になります。
雪が桜の花びらのように舞い散っています。
蕪村は俳人としておなじみの人ですね。
彼は祇園の近くに住んでいたそうで、この絵は鴨川の行きつけの料亭を描いたものとも言われているそうです。
さて、こちらは池大雅の「浅間山真景図」。
大雅という人は自然が好きだったようで、屋内ではなく屋外で絵を描いていたそうです。そして登山が好きで、なんと富士山には3回も登ったことがあるのだとか。江戸時代、京都に住んでいて、よくできたものですね。そしてこの絵の右奥にも富士山が小さく描かれていました。
この絵はよく見ると、後ろの空が青く描かれていますが、日本絵画で空を青く塗って表現したというのは、この人が初めてなんだそうです。それまでは青い空は、考えられないことだったのだとか。
この二人はかなり対比的な人物なのですが、「十便十宜帖」という二人の合作があります。
これは別荘を建てるのならどんなところがいいか、ということを一人10枚ずつ絵で表したもので、たとえば「釣りができるところ」とか「春夏秋冬のいつがよいか」など、いろいろな角度から描かれています。
こちらは蕪村の理想とする別荘のひとつ。
こちらは大雅の理想だそうで、釣りが好きだったのでしょうね。
「釣便」という言葉を使っていますね。
こういう絵はほんとに無邪気な感じがします。
武者小路実篤もこの系統になるのかもしれませんね。
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2部はおなじみの町の風景を描いたものですが、私はこういう絵を見るといつも「ウォーリーを探せ」を思い出してしまいます。何人の人が描かれているのでしょうね。
「江戸名所図屏風」
江戸名所図屏風は左右2つに分かれています。
右の屏風には隅田川から始まり、浅草、上野、神田、吉原、湯島、日本橋が描かれています。
左の屏風には江戸城、京橋、銀座、木挽町、愛宕山、品川が描かれています。
ここに描かれている江戸城は天守閣が描かれているので、明暦の大火以前のものだそうです。
また江戸の町には川が多かったというのが分かります。
「洛中洛外図屏風」
狩野探幽の洛中洛外図屏風には、右の屏風には東山や鴨川あたり、左の屏風には桂川あたりが描かれています。細かいところを見ていくと、かなり問題のありそうな風俗シーンも描かれていました。
どちらの絵にも、いろいろな職業の人が詳しく描かれていて、よく見るといろいろな発見ができそうです。
これらの屏風絵から、浮世絵の時代に移っていったわけです。
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出光の学芸部長さんには長時間に説明していただきました。
スライドを写すとき、部屋が暗くなると眠くなることもありましたが、楽しい雑談もありました。
本当に絵画鑑賞がお好きなんだろうなと思わせる方でした。
来年の4月には、こちらの学芸部長さんの企画で「日本絵画の魅力」というテーマで出光で展覧会が開かれるそうです。
楽しみにしていましょう。