2008年11月1日土曜日

源氏 香道と十二単


( 京都旅行はちょっとおあずけね。)

今日はまた日野市にある実践女子大学まで源氏物語の講演会に行ってきました。

これまで文学や歴史からの視点、映画からの視点、絵画からの視点などで源氏物語を分析してくれたこの公開講座。

最終回は、とても優雅な世界を味あわせていただきました。

それは、「香道」という不思議な世界と、十二単の「装束」という雅な世界でした。


これは会場に展示してあったもの。香道ではないのだけれど、「薫物(たきもの)」といって、まあ一種の香水のような練りものを着物に沁みこませるようにしてあるの。

光源氏も匂宮もこういう着物を着て、いい香りをさせていたのかしらね?

開場は1時からだというのに、早くから、この王朝世界を体験しようという方がたくさん来ていました。

私も頑張って早くから席を見つけました。
だって、今日は写真撮影がOKの日なのです。
それで、一番前のかぶりつきに陣取って、お話を聞くとこにしたのです。


第一部は「香道」。

香道という言葉は知っていたけれど、実際に目の前で見たのは初めて。
そして会場に来た全員に、聞香(もんこう)体験をさせてもらいました。

とても優雅で教養がある道だと分かりました。

単純に言ってしまえば、いろんな香りを当てるゲームです。
でもすごく奥が深くて、単に鼻が利く、というだけではできないものだと分かりました。

香道の中にもいろいろあるようですけれど、今日、会場でみんなが体験したのは、「源氏香」というもの。

5種類の香り(そばちょこのような大きさの容器に灰が入っていて、それぞれの香木から香りがするもの)を当てるの。

一番目の香りと二番目の香りが同じとか、三番目の香りと四番目の香りが同じとか、当てるのです。
そして同じだったら、解答用紙にある5本の縦線を横線でつなげるのです。

その組み合わせは52種類になるそうで、つまり源氏物語54帖のうちの、最初の桐壺と最後の浮舟を除くと52帖になるので、どの巻になるかを当てるの。

その形がこの写真。
ローマ数字のような形をしているでしょ?
これで52の組み合わせになるんですって。


横線の形によって、この印のうち、どれになるかを当てるのです。
それも単に当てるだけでなくて、文学的な知識と教養が必要なの。

答えが外れた場合にも、単に×というのではなく、文学的お遊びで評価されるのです。

私は匂いにはうるさいほうなのだけど、どうもよく分からなかったな。
すごく微妙な香りなんです。

この遊びは江戸時代に盛んになったらしいけれど、昔の人は風流な遊びをしていたのね。

会場全体がいい香りがしていたわ。

香りというのは仏教伝来と結びつきがあり、「日本書記」にはすでに記載されているそうです。

正倉院にある「蘭奢待(らんじゃたい)」というのは、多くの権力者も夢中になった香りだとか。

当時も香りのもとは輸入品だったので、すごく高価だったらしいのですが、今でも1キロ1500万円、つまい1グラムが15000円もするんですって。へー、ですね。

******

第二部は十二単の実演会。

最初に先生のお話があって、その後はモデルさん(お方様という役)に着付けをします。

着付けのことを「お服上げ」(おふくあげ)というそうよ。
前に座って着付ける人と、後ろに立って着付ける人の二人ひと組でします。

お方様は、最初は肌着と袴だけなの。


目の前で着付けが始まりました。
最初は黄色→赤→赤→ピンク→ピンク→ピンク→海老茶→黄緑→赤→白(裳)と続くの。


出来上がりました。


後姿。白い裳がこんなに引きずっています。


扇を持って歩いているお姫様。

すごいなと思ったのは、これだけ枚数を重ねていても、紐はたったの1本なのよ。

一枚着せて紐でしばり、次の一枚を着せて紐でしばると、その下に締めていた紐は抜かれてしまうの。
だから最後まで紐1本なのです。

その紐をほどくと、なんということ、あれだけたくさん着ていた十二単が、はらりと脱げてしまうの。
まるでマジックショーのようでした。

それだから、当時の社会で男女関係になったときも、その紐を1本だけほどけば、すぐにできたというわけ。
うまい仕組みだなと思ったわ。


脱いだ状態はこんなふうになっているの。セミの抜け殻のようでしょ?

空蝉もこんなふうにして衣装を置いて、源氏のもとから逃げだしたのかしらね?

でもね、この十二単はなんと20キロ以上の重さがあるそうよ。

モデルさんはそれを着て、会場をしゃなりしゃなりと歩いたけれど、袴もはいているし、すごく大変そうでした。


会場をぐるりと歩くお姫様。

*****

今日の講演会はとても楽しかったわ。

古のことを知ると、こんなに豊かな気分になれるとは。

こういうことを知ったからといって、実生活に何の役に立つかどうかは分からないけれど、やはり本で読むだけと、目の前で繰り広げられるショーを実際に見るのでは、源氏物語や他の古典を読むときにも、違ってくると思うの。

何でも体験してみないと分からないものね。

4 件のコメント:

  1. わぁ元気ねぇ。
    凄いです。今日も源氏物語。
    京都も盛り上がってるようですよ。
    昨夜はあるホテルで有馬稲子の源氏物語の朗読があったようです。

    十二単の着付けは私の着付けの先生がよく実演をされていたので知っています。
    1本の紐ですものねぇ(笑)
    目で見ると違いますものね。
    楽しそうでしたね、香道も。なんでも奥が深いです。

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  2. そうそう、さとさんは紐一本だということをご存じだとおっしゃっていたわよね。私はどういうふうに着るのか不思議だったのだけど、百聞は一見にしかずで、目の前で見てよく分かったわ。脱ぐほうも、びっくりでしたよ!

    この大学には香道研究会というクラブがあって、そこの学生さんがみなさん着物姿で会場にいたので、今日はとても華やかでした。

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  3. 私は、紐1本って知らなかった。けっこうビックリ!
    脱いだあとも、しなしなと風情があるわね。はらりと一瞬にして脱げるところを見てみたい(笑)脱いだあとは、肌着と袴になるのよね?それは、ちょっと風情にかけるのかしら?

    香道もこんなに奥深いものとは、知らなかったわ。勉強になりました!

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  4. マサさん、十二単を一気に脱いだところは、まるで手品のようでしたよ。はらり・・・という感じでした。
    香道もね、教養がないと全然できない遊びでしたね。
    たまたま、この日は香水をつけて行って、おまけにランチはハーブがたくさん入ったカレーを食べちゃったのよ。それで、全然、鼻が利かなかったわ。こういうときは匂いの強いものを食べたらだめだと分かりました。

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