「朗読者」の解説のところに、「この本は2回読んで下さい」と書いてあったの。
それほど分厚い本ではないので、もう一度、読んでみました。
すると、1回だけでは気づかなかったことが、はっきりしてきました。
最初読んだときは、主人公の男の子とハンナのSEXシーンが気になったし、最後はどういう結末になるのかしら、というストーリーばかりが気になっていました。
おまけにこれは映画化された本なので、あるシーンを読んでいても、ここは映画ではどうやって表現したのかしら、ということが気になりました。
たとえばハンナが男の子の目の前でストッキングを履くシーンだとか、彼女がワンピースの裾をひらひらさせながら自転車をこいでいるシーンだとか、教会の屋根が燃え落ちて、炎に包まれてしまうシーンだとか。
そういうことが脳裏に浮かんでくるので、なかなか読むことに集中できませんでした。
ところが2回目はストーリーも分かっているので、じっくりと読むことができました。
それで分かったことといえば、この本で言いたかったのは、ハンナが裁判長に対して、
「それならあなたならどうしたのか?」という投げかけじゃなかったのか、ということだと思ったのです。
戦争下に強制収容所の看守として働いていた人間には、囚人を解放させるなんてできなかったはず。いったいどんな行動をとればよかったのでしょう。
その投げかけは、読者である私たちに向かっても質問しているのではないか、と気づいたのです。
それって「橋のない川」で、部落の人たちがいわれのない差別と闘っている姿と共通しているのではないかと思ったわ。どうしようもないことって、あるんですよね。
それともう一つ、気づいたこと。
それはハンナが看守をしていた時にも、女の子の囚人に朗読をしてもらっていたこと。
最初読んでいた時は、どうもそのあたり、適当に飛ばして読んでいたいみたい。
主人公の男の子に朗読をしてもらう前から、彼女はやはり文字に飢えていたのでしょうね。
彼女は娑婆で仕事をしていた時には、日々の労働に追われていて、文字の学習なんてできなかっただろう、と思うわ。
それが刑を執行するために牢屋に入れられたことによって、ようやく自由な学習の時間がとれたわけ。
それは彼女にとっては非常な喜びだったと思うの。
それと、この本で重要な役目をするのは、彼のお父さんだと思うの。たくさんの蔵書に囲まれて、子供たちとフランクに接することのできない威厳のあるお父さん。そういう父親がいるからこそ、この男の子は反動でハンナと深くつきあるようになったのかもしれない、と思いました。
この本はやはり1回では分かりません。
というか、2回読んでも、まだまだ不可解な部分が残ります。
映画では分かりませんが、本では、どうして彼女が文盲だと気づいたか、というシーンですが、山里を散策していた時に、はっと気付いたというのよ。そういうことってあるのかしらね。
それとどうしても私には理解できないのが、8年たったら、若い時に付き合っていた彼女をこんなに客観的に見られるのかしら、ということ。あまりにそっけなくて、主人公に同情できなかったわ。
もうひとつ、気づいたこと。
それは、ハンナの匂いのこと。
最初の出会いのころは、ハンナに対しては、成熟した女性の匂いをかぎ取っていたのだけれど、彼女が年を取って再開するときには、もはや老人の臭いになっていたというのよね。
どうしてそんなに急に老化してしまったのか、私には分からないわ。
3回読んだらまた違った感想が生まれてくると思うの。
でもね、翻訳が分かりにくい(というか、原作もそうなのかな?)ところもあるので、もう3回目は読まないとは思うけれどね。
でもつくづく、字が読めて、いろんな本が読めるという楽しみを経験することができて、ほんとうにありがたいと思いました。
写真はキャンパスの風景です。
としちゃん、凄いわ。2回も読むなんて。私は、気に入った本でも、読み返すことはほとんどないから。
返信削除そう、私も、被告席のハンナが罪を問われ、「では、あなたならどうしますか」というのが、この映画のテーマのひとつだと思った。ハンナの罪を問うのはたやすい。でも戦時中の特殊な環境下で、彼女は自分の仕事をまっとうしようとしただけ。他にどんな選択があったでしょう。
「あなたならどうしますか」と問いを、たぶん映画は、観客にも投げかけている気がします。
老人となったハンナを、ケイトは違和感なく演じていますよ。
「これが素顔?」って、勘違いするくらい(笑)
マサさん、私も同じ本を2回も読むなんてことはめったにありません。でもこの本は薄いし、通勤時間で読めたからね。
返信削除著者が言いたいことが当たっていて(?)良かったわ。ほかにどうしようもないことだったんですよね。
老人(と、言っても今の私くらいの年齢よね)になったハンナの姿も演じてしまうって、やはり女優さんって、すごいのね。