2011年11月19日土曜日

貴婦人の輪奈天鵞絨(わなビロード)

「ビロード」と聞いて、みなさんはどんなものを想像されますか?

ビロードというのは今から400年ほど前の天文年間にポルトガルより伝来したものだそうですが、ビロードというと、ショールとか下駄の鼻緒、重みのあるカーテンなどを思い浮かべるのではないかしら?

ところがそんな決まり切った想像を見事に裏切られたのが、長浜で見学した「タケツネ」のビロードだったのです。

それはまさに天鵞絨(てんがじゅう)という名にふさわしい、ソフトで上品で光沢があり、そして美しい絵柄の入った夢のような生地だったのです。

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長浜駅を降りて、「タケツネ」に電話をしました。
この会社にはインターネットを通じて、会社見学を希望していることを伝えていたのですが、会社の方がわざわざ駅まで車で迎えに来て下さいました。

そして到着したのがこちらの会社です。


この会社は大正8年創業のビロード専門の織物会社ですが、輪奈(わな)ビロードという特殊なビロードを作っています。

「輪奈」というのは「パイル」という意味だそうで、昔は胴線を使用していたそうですが、現在では改良を重ねて「ポリエチレンモノフィラメント」という材料を布地に織り込んでいるのです。

こちらの写真がその「輪奈」の原料で、緑・紺・赤の三色があり、色によってその太さが違っているそうです。




こちらの写真の上の方が、現在の材料を織り込んだもの。
ループ状になっていますよね。それが特徴なんだそうです。

下の方が胴線を織り込んだものですが、これは一本一本手で抜き取っていたそうです。


お隣にある工場で、この針金を「紋紙」を使って織るそうです。

そして織り上がったこの布地を今度は「紋切」(もんきり)といって、特殊な小刀で絵の部分だけを切り取るのです。


気の遠くなるような作業をされていました。
反物というのはコート用は長さが11.5メートル、着物用は長さが13メートルあるので、その作業をずっと繰り返すのですね。

写真にある虫眼鏡で覗いてみましたが、きれいに絵が切り取られていました。


このようにパイルをカットするので、ふわふわの状態のなるのだとか。

この布地を今度は水に漬けてそして乾燥をして、その後、この線を抜くのだそうです。
そして白い生地にしてから色を染めて、検査をしてようやく製品になるのです。

ものすごく手がかかっていますね。いったい何工程あるのでしょうか。

できあがった製品を触らせていただきましたが、とても柔らかく、おまけに軽く、そして空気を含んでいるので着ているととても暖かいので、究極のコートになるんだそうです。

それというのもこのビロードは絹100パーセントでできているので、レーヨンなどが入ったものとは違うのでしょうね。


このような製造過程の説明をしていただいたのちには、お茶とお菓子までご馳走になってしまいました。

こちらの会社では80歳くらいの美しい女性社長ともお会いできましたが、
「伝統を守っているだけではだめなの。新しいものを取り入れていかないとね」とお話しされていたのが印象的でした。

今年の年末には池袋の東武デパートの職人展でこちらの会社の製品も出店するそうなので、是非行ってみようと思います。本当に素晴らしい職人技を間近で拝見させていただいて、ありがとうございました。


「タケツネ」には着物には詳しい京都のさとさんも一緒に行きましたが、二人して「いいものを見せていただいてよかったわね」と感激して、会社を後にしたのでした。

タケツネ▼

さとさんのブログ▼

6 件のコメント:

  1. これはすごく貴重なものを見せて頂き感激しました。
    会社を探し連絡して見学希望をメールしていただいたとしちゃんの行動力にも感謝だわ!

    それにしてもこちらの会社のビロードは私が今まで思っていたイメージと全然違っていたのに驚きです。
    細かい作業の繰り返しですものね。
    目が良くないと出来ませんね、それと根気。

    軽くて暖かい・・・着てみたくなりましたよ(笑)
    いつかビロードのコート・・夢見てます♪

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  2. ビロードって、光沢のある手触りのいい布のことだと思っていたわ。
    若いころ、クリスマスパーティーとかで、ビロードのワンピースを、着ませんでした?たいしたお値段じゃなかったし、絹でもなかったから、あれは偽ビロードだったのかしら。
    こんなに、手間ひまかけて作り出すとは、驚きです。
    それにしても、お店のもてなしのたいそう厚いこと!嬉しいですね。これも、としちゃんとさとさんの人徳でしょう~。

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  3. さとさん、同行していただいて私も感謝していますよ。私だけだったらあんなにおもてなしをしていただけたか分かりませんもの。やはり同じ滋賀県の人、というので話も弾んだのでしょう。
    私もビロードに対する認識が変わりましたね。あの手触りの良かったこと!
    タケツネさんにはお礼状を出しておきました。

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  4. マサさん、そうそう、臙脂色とか黒とかのワンピース着ましたよね。でもあれは多分化繊が入っていたものだと思うのよ。わりとずしりと重かったでしょ。でもこの輪奈ビロードはとても軽くて、それでコートにしても重くないからいいんですって。
    ビロードにも、ぼかしとかすかし模様のような柄があるのは知らなかったわ。
    でもかなりいいお値段でした。あれだけ手をかけているから仕方ないですけどね。

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  5. タケツネです。
    私は、佐賀玉屋でした。
    長さは正確にはコート用11.5m・きもの用13mです。

    お会いできず残念です、母は88才でまだ現役です、役員でもあります。

    東武池袋百貨店8Fの催事(年末29日~新年10日まで)是非お越しください、お友達とよろしく。

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  6. タケツネさま
    九州ご出張お疲れ様でした。

    ご多忙のところコメントありがとうございます。
    反物の長さは訂正いたしました。

    お母様、88歳でいらっしゃるのですか、お美しくてお元気で素晴らしいですね。

    池袋はよく参りますので、是非伺わせていただきますね。

    夢のような時間を過ごさせていただきました。ありがとうございました。

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