2012年12月20日木曜日

西陣の帯屋さんのお話

先日、西陣にある老舗機屋さんの職人さんのお話を聞く機会がありました。

私は、着物や帯に関してはまるで素人なので、織物のことを教えていただけるというので、よい機会だと思って参加してみました。

ちょうど先月、西陣織物会館に行ってきたので、その記憶が残っているうちに、教えていただこうと思いました。


職人さんから、スライドやパネルを見せていただきながら、お話を伺いました。
帯は縦糸と横糸を組み合わせて織りますが、決め手は縦糸なんだそうです。
触って見るとまるで手触りが違いました。

 
帯の幅というのは決まっているわけですが、そこに使う縦糸の本数が多ければ多いほど、細い糸で織られているので、細かい文様が作れるというわけです。
本数には何種類かあるそうですが、3600本というのもあるそうです。

まず絵師さんが図案を考えて絵を描きます。。
次に織物屋さんが、その絵に値段をつけて、一番高いところが落札します。
そしてその絵をこんどは5ミリ間隔くらいの細かい方眼紙に写し取り、色を塗ります。
この作業がけっこう時間がかかって大変なのだとか。
下の写真は方眼紙に描かれた絵です。


次にその絵に使う糸を染めますが、そのときは井戸水を使うのだそうです。
そして何回も染めて、色を出すそうです。

そしてその糸を乾燥させます。

つぎに「糸くり」という作業をします。
縦糸を棒のようなものに結びつけます。これは非常に根気のいる作業だそうです。

そして織るわけですが、それもいろいろな織り方があり、一口で説明するのは難しいですね。

とくに専門用語を使って説明されると、なかなか理解できないことも多かったですね。
それでもとにかく大変な作業で、手間もかかるということは分かりました。

こちらの帯の特徴は、絵画をもとにした織の帯です。
ゴッホやモネ、クリムトといった西洋の画家の絵を見事に織り上げていたのでびっくり。
本当の絵画のような微妙な色を出していました。
モネの「睡蓮」です。


こちらは「百名山」の山々が描かれている帯です。


なんと琳派の鈴木其一のヒマワリの帯まで帯になっていました。
素敵でしたね。


こういうことができるのは、やはり縦糸が細いからなのだそうです。

他にも「般若心経」の文字を描いたもの、観音様の姿を描いたもの、阿修羅立像、など見せていただきました。
写真はネットには載せないでと言われたので、掲載しませんが、織物とは思えないほど素晴らしい帯でした。

*****

もうひとつ、めったにお目にかかれない珍しいものも見せていただきました。
それはインドネシアに生息している クリキュラとアクカスという蛾の一種の蚕でした。

日本の蚕は「養蚕」といいますが、これは自然に生息しているものなので「野蚕」というのだそうです。日本の蚕は桑の葉っぱを食べますが、こちらの蚕はアボガドの葉っぱなどを食べるそうです。

また日本の蚕は白いのですが、インドネシアの蚕は茶色というか黄色というか、それだけではあまりきれいなものに見えませんでした。
しかしこの蛾から出てくる糸はとても良いものなんだそうです。

その糸で織られた帯は、ジャワ更紗を題材とした素敵な柄の帯でした。

この西陣織の会社では、日本とインドネシアの架け橋になるようにと、国際的な活動しているそうです。

「インドネシア 黄金の繭」▼というサイトにもクリキュラとアクカスのことが詳しく載っていましたが、私は今まで全然知らなかったので、驚きでした。

******

このような詳しい織物のスライドや珍しい蚕の資料などを見せていただいたのはよかったのですが、そのあとで、「この帯は○○デパートで買えば○○円だけど、今なら××円にしておきまっせ」などという話が出てしまったので、私は急に引いてしまいました。

織物の学習のチャンスだと思って参加したのに、急に販売の話をされるのは、嫌ですね。
もちろんお店としても買ってもらわなくては困るのでしょうが、あまり押し付けられるとかえって反発を招いてしまうのではないかしら。

私はどうしても自分が気に入れば、多少高いものでも手に入れたいとは思います。
けれど、人から勧められたのはたとえ1000円のものであっても、納得しなければ買わないタイプなので、売らんがため攻勢はちょっと苦手です。

このときは、わざと安物の帯をしていきました。
安くても好きなものは好き、高ければいいというわけではない、という気持ちからです。


着物屋さんへ足を運ぶというのは、ある種の自律心がないとなかなか難しいものです。

4 件のコメント:

  1. ずんこ12/20/2012

    なんと、これは絵ではなく帯ですか?
    素晴らしい作品ですね。
    しかし、着るよりも飾っておく方がよさそうですね・・。

    私も積極的に勧めてくる販売員さんは苦手です。聞きたいときだけ答えてくれればいいのにといつも思ってしまいます。

    明日はご不在の中すみません。
    何かおいたをしなければ良いのですが・・
    楽しみにしています☆

    返信削除
  2. 私もこの帯は絵だと思いましたよ。
    それが織物だというのでびっくりでした。
    ものすごくたくさんの色の糸を使っていました。

    仲良く遊んでくれればいいですので、
    怪我だけはしないようにね。

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  3. 着物屋さんへ行くには「ある種の自律心」ね。確かにそうだわ。
    私の場合は、自律心と言うか自制心かね。

    ついつい云われるがまま、勧められるがまま
    って感じです。

    としちゃんのようにちゃんと勉強していると
    やはり違うわね。

    しかし、帯も進化?しているのね。モネの絵やゴッホの向日葵が帯の図柄とは驚きです。

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  4. 真蘭さん、私も初めは何も分からなかったので、安いだけで買っていたので、不要なものも買ってしまったことがありましたね。それも勉強のうちでしょうが。
    着ていくうちに寸法だとか材質が重要だということが分かってきますね。
    そうそう「自制心」ですね。難しいですが。

    モネには驚いたでしょ。いろんなことができるのですね。著作権が切れているので、図案にできるのでしょうね。

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