2013年11月1日金曜日

「歌舞伎座界隈」を語る

10月27日からは第67回読書週間ということで、図書館で文芸講演会が開催されました。

講演会のタイトルは「自書 『歌舞伎座界隈』を語る~心の柱・東京下町の今と昔~」です。


講師はこの本の著者・藤田三男さんという元・河出書房新社で編集者をされた方でした。藤田さんは、装丁家としても活躍されていらっしゃるそうです。

この方が書いた本「歌舞伎座界隈」をご自分で解説するという内容でした。


藤田さんは現在は75歳ですが、木挽町にあった洋傘職人の三男坊として生まれました。

この本には昭和20年から26年頃まで、日本がアメリカ軍に占領されていた時代、まだ少年だった藤田さんの目を通しての木挽町のお話がいろいろと書かれているそうです。

現在はその辺りは中央区銀座という地名になっていますが、当時の区は京橋区と日本橋区でした。それが昭和26年に統合されて中央区になった訳です。

現代、私たちは東京を「山の手」と「下町」を分けていますが、実際は下町と言われる範囲の中でも、木挽町と月島、あるいは銀座なども微妙なニュアンスの違いがあったそうです。たとえば言葉遣いなども独自のものがあったのだとか。

その木挽町は、1丁目から4丁目まであり、1丁目の辺りには職人や小さなお店が多く、また新橋寄りのほうには新橋芸者さんが住んでいたので、雰囲気も違ったようです。

当時の日本は敗戦直後のため、占領軍の軍人相手のパンパンという娼婦たちもいて、木挽町辺りにもそういう人たちが多くいたそうです。少年の目にも、どこか違うというように写っていたそうです。

下町の人間は「宵越しの金は持たない」というのが信条であり、実際におかねはどんどん使ってしまっていたようです。

また近所に迷惑をかけない、出過ぎたことをしない、挨拶はしっかりとする、ケチくさいことはしない(見栄っ張り)ということが大切なようです。
たとえば、家の前の道路を掃除するときには、気を利かしたつもりでお隣のところまで掃除をする、というのは下町の人間にとっては不要なことだったというのは、意外な話でした。

子どもの頃に育った環境が、その人の性格や行動にまで影響するのだということでしょうね。

藤田さんのお話はあちこち自由に飛んでいましたが、編集人としていろいろな作家さんとの付き合いのお話は面白かったですね。

池波正太郎、井伏鱒二、谷崎純一郎の裏話も聞かせてもらいました。
池波正太郎は食通ということになっていますが、藤田さんが実際にそのお店に行って食べてみるとそれほどおいしくない、というのも池波さんは幼少の頃は貧しくておいしいものを食べる経験をしていなかったのでは、というようなお話もありました。

最後には藤田さんの70年以上に渡る幼馴染の方がお二人会場に見えていて、紹介されていました。「友達っていいな」というご様子でした。

今回の講演には「歌舞伎座界隈」といっても、歌舞伎座そのもののお話はないので、ちょっと肩すかしではありました。「木挽町界隈」というタイトルのほうが良かったのではという感じもしました。
ただし、今の歌舞伎座ブームもあるので、こういうタイトルにしたのかもしれませんね。でも歌舞伎俳優の話を期待した方も多いと思います。

ただし藤田さんは「銀座歌舞伎座」というのが非常にお嫌いなようで、「木挽町歌舞伎座」という名称に復活させたいというお気持ちのように思いました。
たしかに「銀座」というのは銀貨を作るところの意味ですが、それと芝居小屋というのは結びつきませんね。今の地名は本当に機械的で面白みに欠けると思います。

会場は75歳以上の後期高齢者とお見受けする方が満員で、お年寄りの熱気を感じました。

実は私の母は、昭和のひとけたの頃は、この近くの新富町というところに住んでいたので、多分、京橋小学校に通っていたと思いますし、今の銀座にはしょっちゅう遊びに行っていたのだと思います。
そんなことで、木挽町の話は私にとって割と身近に感じられました。

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この日の装い。

前日の紬はかなりおデブに見えるので、柔らかめの紬に変えてみました。

こちらが前日バージョン。
胸のあたりが2割増しくらい太って見えます。


こちらが当日バージョン。
比較できるように、帯や帯揚げ、帯締めなどは前日とまるで同じです。


色の違いもありますが、やはり身体にフィットする布地だとそれほどおデブには見えないと思うのですが、どうでしょうか。


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