今年お亡くなりになった、山本兼一さんの「火天の城(かてん)」を読みました。
この作家さんの小説を読んだのは初めてです。
「火天の城」は小説だけだと思っていたら、西田敏行主演で映画にもなり、またゲームにもなっているそうですね。
ちなみに「火天」というのはインドの仏教用語で、火の神様、というようなことでしょうか。
どんな物語かといえば、幻の城ともいえる安土城を建てた人のお話。
安土城といえばもちろん織田信長ですが、この小説では信長は主役ではなく、メインは城を実際に建てた大工さんや石工さんなのです。
とくに総棟梁となった人の活躍ぶりはすごいですね。
城のデザインをして、山へ行って樹を探し、それを川で運び、どこにどのような大きさの材木や釘をどれくらい使うかを計算して、手下の手配も考えます。
奇抜なデザインでありながら、地震にも耐え、火事にも強風にも耐えるようなお城。
それを考え抜いて行くのです。
総合プロデューサーかな。
読後感としては、安土桃山時代の「プロジェクトX」だと思いました。
「今までにないような南蛮風の城を建てろ」と信長から命令された大工が、あれこれ困難に立ち向かいながら、すばらしいお城を建てます。
その途中には親子の葛藤があったり、反対勢力からの陰謀があったり、そのあれこれをうまくお話にしてありました。
その外観はガウディのサクラダ・ファミリアのようだったのかしら。
夢が広がりますね。
ただしなんというか、建築関係の専門用語が多いことと、女性がうまく描かれていない(ただ肉体的に魅力的だとか、ただおとなしいだけとか)なので、その点が不満ですね。
それで「早く次のページを読みたい」という意欲がそれほど湧かずに、早読みの私にしては、割と読むのに時間がかかりました。
でもケチをつけているわけではありません。
きっとこの作家は、膨大な資料を基に、この小説を書いたのだろうと思います。
それにしても絢爛豪華な幻の安土城、現存していたら良かったのに、とつくづく思いました。
今度は同じ作者の「利休にたずねよ」を読んでいるところです。
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