2015年9月8日火曜日

最近読んだ本 2015年8月

先月、読んだ本の覚え書きです。

冊数が少ないのは、あまりに暑くてお出かけをせず、そのため電車の中での読書時間が減ってしまったからです。
私が本を読むのは、ほとんど電車での移動中ですので、電車に乗らないと必然的に読書量が減るのです。

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「寒椿」
宮尾登美子 著
新潮文庫
2002年

高知の芸妓子方屋「松崎」で、修業を積んだ4人の女性と、彼女たちと姉妹のように育った松崎の娘である悦子。(宮尾さん自身がモデル)
女性たちが男たちに身を任せ、金にまみれながら堂々と、あるいは細々と生きていく姿を、悦子の目から見た小説です。
あまりに辛い環境におかれ、そして太平洋戦争を生き、運命に翻弄される彼女たち。
読んでいて、こんなひどいことが本当にあったのだろうかと思う場面もたびたびあり、本を置きたくなるくらいでした。
4人の女性の一人一人が、一つの章に描かれています。

「黒船秘恋」
諸田玲子 著
新潮文庫
2004年4月出版「紅の袖」改題


幕末のお江戸。川越藩の武士が、品川にお台場を作るため単身赴任することになりました。
そこは砂ぼこりにまみれて、荒くれた工事人もいるところ。
その後、彼の妻もやってきて、その下屋敷に女中を雇うことになりました。
ただし、この女性、なにやらいわくつきの女で、男の気を引くのが上手そう。
そこに武士の幼馴染も鉄砲係りとしてやってきて、同じ家に居候をすることになりました。
この4人の男女の人間模様の機微を描いた小説ですが、当時の幕末の騒然とした社会情勢とうまくかみ合わせて描かれています。
妖しい雰囲気が漂ってくるような小説です。
さて、結果はどうなるのかは、お楽しみ。

「青い壺」
有吉佐和子 著
文春文庫
初出誌 「文藝春秋」 昭和51年1月~52年2月号


無名の陶芸家が作った美しい青磁の壺。
この壺が、売られたり盗まれたり、あれこれ持ち主を転々としていく様子を描いたオムニバス小説。十余年後には、この壺は作者の元に持ってくることになるのですが、その間、この壺の持ち主の人生が語られます。
壺を通して、人間の有為転変を鮮やかに描いた有吉文学の傑作です。
これを書いたとき、有吉さんは45歳くらいの頃だったと思うのですが、老人たちの実生活や生きる虚しさも非常によく描けていて、本当にもっと長生きしてたくさんの小説を描いてもらいたかったと思います。

「開幕ベルは華やかに」
有吉佐和子 著
新潮文庫
画像は最近のものですが、私が読んだのは2013年版です。


初代の水谷八重子を思わせる大女優と、先代の勘三郎を思わせる名歌舞伎役者が同じ舞台に立ち、「川島芳子」を演じているとき、脅迫電話がかかってきて、帝劇で殺人事件が発生。
おりしもその時は、女優の文化勲章受章が決定。
そんな時に、脚本家と演出家はどのような行動をとったのでしょう。
ミステリー仕立てのお話ですが、役者の世界の裏側が垣間見えて、本当に面白い小説です。
有吉さんは天才ですね。

「マイ・フェイヴァリット」
稲葉賀恵 著
集英社インターナショナル
2014年

あちこちの書評で評判が良かった本なので、図書館で見つけた時は嬉しくなりました。
稲葉さんという方は、私が子供の時、母が読んでいた「ミセス」という雑誌のモデルさんをされていて、とても知的で素敵な人だと子供心に思っていました。
ですから洋服というイメージが強かったのですが、ある時から着物に目覚めて、そして極めていったということを綴ってある本、というか写真集です。
ただし、素敵な着物ライフには違いないのですが、私の好みとはちょっと違っているように思いました。
伊平織の着物などとてもシックで素敵で、また民藝館好みのライフスタイルも憧れますが、もう少し肩の力を抜いた気楽な着物の方が好きですね。

「檀流きもの巡礼 守りたい日本の手仕事」
檀ふみ 著
世界文化社
2012年
こちらも写真が多い本です。
檀さんは、織物のことなどに対して、知ったかぶりをせずに、「分からないことは分からない」「こういういうことも知らなかった」という姿勢が良いですね。
あちこちの織物産地を訪ねている本ですが、そういうことができるのは、女優さんの強みですね。
羨ましい本です。

「今、次世代へつなぐ想い きもの春秋」
木村 孝著
ハースト婦人画報社
2014年

永年、きものの世界にいらっしゃる御年94歳の木村さんのきもの随筆集。
お若い時の美しいお姿も掲載されていて、若い世代に残したい思いを綴っています。
「一つ紋の無地着物」を進めていますが、私にはあまりご縁がなさそうな着物です。
きちんとした着物を着たい方には必要な着物本かもしれませんが、私はパラパラと眺めただけでした。

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今読みかけているのは、松井今朝子さんの「円朝の女」
これは語り口が小気味よくて、面白い小説です。



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