宇江佐真理さんは、ずっと函館に住んでいらっしゃり、めったに上京されないのに、江戸の町の話を作り出すのがお上手な方でした。
大工さんのご主人、息子さんのお世話をしながら、台所で原稿用紙を広げて、時代小説をお書きになっていらっしゃいました。
私は宇江佐さんの小説が大好きで、彼女の書いたものはほとんど読んでいました。
そして大変惜しいことに、先日、66歳という若さでお亡くなりになりました。乳がんでした。
「糸車」は、その宇江佐さんが「小説すばる」に2011年から2012年にわたり、6回に分けて掲載された時代小説です。
蝦夷松前藩のお武家の奥方だったお絹は、仔細あって深川の裏店に住むことになりました。
それまでの生活とは一変して、背中に小間物の荷物を背負い、街中を行商するようになりました。
それというのも、行方不明になった一人息子を探すためでした。
ところが彼は陰間茶屋(今でいうおかまバーのようなところ?)で働いているのが分かり、愕然としますが、それでも久しぶりに息子と再会できたことに喜びます。
お絹の周りには、悲しい性を持つ女性も登場して、その彼女に「昔の恋は忘れてこれからを生きるようにと」助言して助けたつもりになっていたところ、その彼女は心中してしまいます。
そんなエピソードをはさみながら、本題のお絹の大人の恋が進行します。
町方奉行の男やもめは、お絹に「これからの半生を一緒にすごしてくれませんか」と声をかけますが、息子の行く末を気にするお絹は、なかなかYESと答えられません。
それでも彼と一夜を共にして、それが忘れられない思い出となりました。
そのうち、お絹と息子は故郷の松前藩に戻ることになり、3年が経ちました。
久しぶりに江戸にやってきた彼女は、その男やもめが亡くなったことを知るのでした。
お絹は、ものごとを割とはっきりという女で、またかなりの行動力もあり、現代的なヒロインだと思います。
当時は武家と町人では身分が違うため付き合うこともできず、また話す言葉も違っていたのですが、彼女はそういう世間の目を気にせずに、自分なりに生きた女性だったと思います。
一気に半日で読んでしまいました。
表紙の挿絵が美しく、素敵な小説でした。
宇江佐さんがお亡くなりになって半月ほど経ちました。
こんな素敵な大人の恋の物語も、もう読めなくなってしまうと思うと、本当に寂しいことです。
昨日の読売新聞の気流にも「宇江佐ワールド惜しむ」という投稿が載っていました。
返信削除「江戸の庶民が生き生きとえがかれた作品の数々に触れ、もしタイムスリップできるとしたら江戸時代に行ってみたいと思うほど宇江佐ワールドに引き込まれた」と。
一瞬、投稿者はとしちゃんじゃないかと思ったわ。年齢も同じです。
宇江佐さんってどんな方だろうと思っていましたが、写真を拝見すると予想外にフツーの感じの方ですね。
家族の世話をしながら台所で書いていたと知って、なるほどねと思いました。
お元気なら、まだまだたくさんの小説を生み出せたでしょうに本当に残念です。
マサさん、実は朝日の「声」欄にも、数日前、宇江佐さんを悼むという投書が載っていました。
返信削除やはり同年齢の女性でしたね。
私は投書はしませんが、やはり何か残しておきたいと思いましたね。
彼女のすごいところは、古地図だけをたよりに、江戸の町をうまく再現したことでしょうね。
一度も上京したことがない時から、そういう町を舞台にした小説を書いていたのは、すごいですね。
写真では、ちょっと太めのフツーのおばさんでしたね。
私は川島なおみが亡くなった時は特に何も思いませんでしたが、
宇江佐さんの時は、ショックでした。
我が家のご主人殿も、実は宇江佐さんの大ファン。
返信削除これから先、新刊が出ないと、衝撃を受けています。
どうも、行動体系がとしちゃんに似ていて、展覧会など
同じような所に出掛けています。
もしかしたらどこかですれ違っているかも・・・
ちょっと言っては失礼かなどと思いながら、言ってしまった!
まぁ、トントンのご主人様と私の趣味が一致しているだなんて
返信削除光栄ですわ。というか、そういう殿方もいらっしゃるのね。
一度、宇江佐ワールドについてお話してみたいですね。
ちなみにうちの夫は私の趣味とはまるで一致せずに、
展覧会なども見たいものが全く違います。
あちらはアウトドア派だから、宇江佐さんのことなど
きっと知らないと思うわ。