ちょっと前に読んだ小説ですが、似たような内容だったので、まとめて感想を書いてみます。
一冊目は、今回の直木賞受賞者・荻原浩さんの「明日の記憶」です。
これは2004年に出版されて、渡辺謙主演の映画でも有名になりました。
有能な広告代理店の男性が、若年性アルツハイマーになって、仕事や生活に支障をきたすようになりましたが、最後では彼は陶芸に自分の命をかけるようになったというお話です。
2冊目は、先日お亡くなりになられた夏樹静子さんの「白愁のとき」で、こちらは1992年の出版です。
造園設計家として数々の受賞もした有能な男性が、会議の途中で言葉を失ってしまい、病院で検査の結果、やはりアルツハイマーと診断されました。
たまたま出会った若い女性に魅かれたり、絶望のあまり自殺をしようと試みますが、最終的には生まれ故郷の田舎町の造園開発に捧げるところで終わっています。
両方とも50歳代の優秀な男性の記憶が薄れていくという設定は同じです。
そしてどちらも悲惨な結果とはなっていません。
こういう小説を読むと、どうしても自分のことと置き換えてしまうのは仕方ないのですが、登場人物があまりに優れていて、物忘れをする場面も、「そんなこと、私はしょっちゅうだわ」と思えてしまいます。
この程度でアルツハイマーなら、私はとっくに患者だろうと思わざるを得ません。
ところで若年性アルツハイマーというのは、65歳未満で発症した場合をいうのですが、実は私のいとこも63歳で発症しました。
とても元気でイキの良い女性でした。
発症直後はあまり私たちと会うこともありませんでしたが、今は介護施設でディケアサービスをうけているようです。
聞くところによると、穏やかに過ごしているようですが、家族の支えは本当に大変だろうと思います。
私もいずれは記憶が途切れ、周りに迷惑をかける存在となると思いますが、その時のことを考えても仕方ないですね。
記憶がなくなってしまった母を見ていると、昔のことも、ちょっと前のことも、みんな忘れてしまって、今のことだけ分かっていれば、それはそれで幸せなのかもしれません。
それでも花の名前は憶えているし、読み書き計算はちゃんとできるし、字も書ける。
人間の脳の不可解さですね。
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