2016年10月21日金曜日

「繭と絆」

これから、世界遺産になった富岡製糸工場について学ぶ機会があるので、事前学習(?)として「繭と絆」を読んでみました。
サブタイトルは「富岡製糸場ものがたり」
私の好きな植松三十里さんの作品です。


主人公は、富岡製糸工場の初代場長となった尾高惇忠(じゅんちゅう)の娘、勇です。

彼女は下手計(しもてばか)村に住んでいる、織物を好む普通の少女でした。
その村は中山道にあり、現在は深谷市のあたりのようです。

彼女には婚約者がいたのですが、父に騙されるようにして婚約を破棄して、父の赴任地である富岡に連れていかれます。
まだ14歳でした。

そして5年間のさまざまな試練を乗り越えて、尾高親子はいちおうの区切りを見て製糸工場を後にします。
勇も婚約者と共に新しい道を歩んでいくのでした。

このような物ですが、勇が富岡で出会ったフランス人技師たち、集まってきた少女たちとの体験や苦労をつづったものです。

明治の初期、世の中がまだ混とんとしていた時代に、父と娘が協力して工場を軌道に乗せたというのは興味深い物語でした。
彼女は、渋沢栄一の姪にもあたるので、彼も登場して活躍しています。

工女たちは、お互いの個性の違いや経験の違いがいがみ合いになり、そしてそのいがみ合いののちの合意を得て、世界に通用する生糸を作るために奮闘しました。
若い少女同士のやり取りは面白いものでした。

明治の初期に「日本のため、そして父のため」に、工女となった勇。
こういう少女たちがいたからこそ、日本の発展があったのでしょう。

また、勇のおじたちは幕末の上野の戦争に巻き込まれ、悲惨な最期を遂げています。
幕府と新政権の対立も、ずっと続いていました。
そういう悲劇もこの物語の底流に隠されています。

こういう物語を頭に入れて、富岡製糸工場について学んでみたいと思います。





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