これは和田竜さんという作家の歴史小説で、映画化もされたのでご存じの方も多いと思います。
この文庫本のカバーですが、上巻は、「のぼうさま」こと、成田長親の似顔絵。
下巻は成田軍を攻めた石田三成の似顔絵だそうです。
「のぼうの城」の「のぼう」というのは、「でくのぼう」から「でく」を取った言葉で、当然、良い意味ではありませんね。
その「のぼうさま」は行田市にあった忍城の総大将です。
彼は城主のいとこにあたります。
ストーリーは、簡単に言うと、豊臣秀吉が全国制覇を狙って、関東の大勢力である北条家を滅ぼすために、その周囲にあった忍城をやっつけるという話です。
初めて読んだときは、よく分かりませんでした。
とくに上巻は、どうしてこの本が本屋大賞を取ったのか理解に苦しむほど、面白くなかった。登場人物の説明やら、時代背景のことばかりで続いていたのです。
それでチンタラと読んでいて、時間ばかりかかってしまいました。
私は本を読むのはすごく早いのですが、この上巻だけは1週間以上かかってしまったと思います。
ところが下巻に入ると、突然、目の前の風景が変わったように面白くなる。
こちらは一気に読んでしまいました。
主人公の「のぼう」というのは、身体が大きいだけで、ほんとにボーっとしていて、百姓たちからもバカにされるような人でした。
その彼が、天下の石田三成と戦うということになって、さぁ、どうする!
石田軍は2万人の勢力。
それに対する成田軍は10分の一程度。
勝つ見込みはありません。
ところが、のぼうさまたちは、三成軍に勝ってしまうのですね。
三成はすごく頭脳明晰な人なのですが、この戦いは失敗してしまいます。
物語には、のぼうさまの家臣たちや、三成方の武将たちが登場します。
そしてイキイキとした百姓たちも。
面白かったのは、田んぼの中の戦いでしょうか。
武将たちは、深い田んぼの中に足を取られてしまい、うまく進むことはできなかったのに、百姓たちは、慣れた田んぼの中でもスイスイと歩くことができたのです。
地の利をうまく利用した戦いでしたね。
そしてなんといっても面白かったのは、のぼうさまの踊りのシーン。
これは読んでみてのお楽しみにしておきますが。
この小説は、映画化された時はのぼうは野村萬斎さんだったようですが、ちょっときれいすぎるかな?
話は別ですが、今は「花戦」も上映されていて、こちらは戦国時代の華道の話ですが、これも面白そう。
来週、また行田市にお邪魔する予定なのですが、この小説を読んだ後では、前回見たお城が違ったように見えるかもしれません。
三成軍の拠点となっていた古墳も見てみたいですね。
こちらは5月に行った時の忍城です。
このお城は最近建て直されたものですが、この地で400年以上前に、実際に人々がイキイキと生きていた、ということが分かるだけで、歴史小説は面白いと思います。
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