酒井順子さんのエッセイは、どれもこれも女心の本心がズバリと書かれていて面白いのですが、こちらの「紫式部の欲望」も、とても面白く読みました。
酒井さん特有の言い回しがうますぎて、笑いながら読んだところもあるほどです。
この本を簡単に紹介すると、「源氏物語」とは、著者である紫式部の本心が表れているものだろう、という視点の論文風エッセイです。
酒井さんの個人的感想だけでなく、検証も具体的でしっかりと書かれている、と思います。
読んでいると、「そうそう、そうなのよ」とか、「よくぞ書いてくれたわ」と思う個所がたくさんありました。
本書の良い点は、光源氏が女性と出会った時の年齢も書かれているので、「うーむ、この年でねぇ」とか「そうか、この年になってもねぇ」とかがよく分かりました。
また複雑な人間関係も、その人物の特徴が分かりやすく書いてあるので、混乱することはありませんでした。
酒井さんは、若い頃、源氏物語を読んで、その時は光源氏の異常性(女性を追いかけるばかりとか、難しい状況の女性ばかりを相手にするとか)が気になっていたそうです。
ところが30歳を過ぎて、原文を少しずつ読み、何年かかって全巻を読み通したそうですが、すると今までとは違った視点で考えることができた、ということでした。
その結果、著者である紫式部の欲望、という視点から源氏物語の特徴をまとめたのが、この本でした。
それぞれの章のタイトルを書いてみると、
「連れ去られたい」
「ブスを笑いたい」
「頭がいいと思われたい」
「専業主婦になりたい」
「出家したい」
など、どれもが源氏物語のそれぞれのヒロインを説明しながら、それは著者の本心でもある、とうまく説明してあります。
そしてこのことは、現代に生きる女性も、平安時代の女性も、同じような悩みや欲望を持っていたのではないか、と書かれています。
酒井さんの軽妙で、それでいてきちんと裏付けされた説明により、きっと源氏物語を全巻ちゃんと読んだことがない人にも、「それならもう一度読んでみようか」と思わせる力のある本でした。
後ろの解説が三浦しをんさん、というのもこれも適役で良かったですね。
また「枕草子」の著者である清少納言との比較も描かれています。
たまたま9月6日には、BS11で尾上松也の歴史ミステリー▼で、<『源氏物語』と『枕草子』~愛と憎悪とユーモアと>という番組を見ました。
ミステリーというほどではありませんが、二人の対比がまとめられていました。
さてさて、私も酒井さんに倣って、というわけでもありませんが、源氏物語の原文に挑戦してみることにしました。
一人で読むのはとうてい無理なので、指導していただく方がいらっしゃるので安心です。
「源氏物語を原文で読む会」▼というグループに参加してみることにしました。
今から楽しみです。
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