行先は目白にある「アダチ版画研究所」▼でした。
ここは江戸時代の浮世絵の技術を生かし、後世にその伝統を伝える役目を担っているところです。
また後継者育成のために、浮世絵の復刻をしたり、現代アートの育成にも努めています。
浮世絵というのは、完全に分業制で、絵師の描いたものを彫り師が彫って、それを摺り師が刷り上げます。
ただし、絵師の名前は残っても、彫り師や摺り師という職人さんのお名前までは分かっていません。
色の具合などは、絵師と版元が決めていたのだそうです。
現在、アダチ版画研究所では、彫り師3人、摺り師4人が研修を受けているそうです。
こちらは普通は賛助会員でないと、見学できないそうですが、今回は講師の先生のご縁で、私たちも見学させていただくことができました。
JR目白駅から炎天下を10数分歩いたところに、研究所はありました。
そこの地下一階がショールームとなっていました。
壁には素敵な浮世絵がたくさんかかっていました。
季節の朝顔がまず目に入りました。北斎のものでした。
美人画もずらり。
こちらはユーモアたっぷりの国芳の金魚ちゃんたち。
さて、これから摺り師の実演が始まります。
会場にはこのような道具が置いてありました。
私たちはその周囲に座って見学しました。
今回の摺り師さんは、こちらで修行を初めて4年目という方でした。
どっしりとあぐらをかいて、作業をされます。
今回、摺るのは、葛飾北斎の富岳三十六景のうちの「神奈川沖浪裏(かながわおきなみうら)」。超有名な絵ですね。
普通は一度に100枚単位で制作するそうですが、そうするととても長時間になるので、今回は4枚だけを仕上げていただきました。
最初は、墨の色で、全体の輪郭だけを摺ります。
この元になる絵に、色がずれないようにして、次の色を加えていきます。
そのためには、版木の角に「けんとう」という印のようなものをつけてあります。
板は硬い山桜の木を使用しています。
普通は薄い色から濃い色という順番で摺っていくそうです。
この絵の具は、黒、赤、青、黄色を混ぜ合わせたもので、天然の鉱物から取られる顔料だそうです。
波の間に漂う小舟の木の部分に色が付きました。
次の色を板に塗っているところです。
色を塗った後には、糊を少し垂らしていました。
写真では同じように見えますが、富士山周囲の空の色を足したところです。
微妙にぼかしてあります。
波の色を追加したところ。
このように、顔料を板に垂らして、それを紙に写し取るという作業を繰り返します。
こちらが出来上がり。
仕上げる様子を目の前で見せていただきました。
大変な手作業でした。
根気が必要ですし、力も必要です。何より、微妙な色をずれないように合わせるのが難しそうでした。
こちらは特製のばれんです。
中に見えるのは竹を細く切り裂いて、グルグルと巻いたもので特製です。
力をかけて使用するので、普通のばれんではだめなのだそうです。
刷りたての版画は、しっとりとしていていました。
こんなふうに、ふんわりとしていました。
それというのも、こちらで使われている用紙は、人間国宝の人が漉いた特別の和紙のため、顔料が紙の中に染み込んでいるからなのです。
そのため、出来上がりを触ってみても、手が汚れるということはありませんでした。
見学はおよそ1時間半くらいありました。
職人さんは、朝から晩までずっと同じ姿勢で作業をされるそうです。
無口で無駄なおしゃべりもせず、しっかりと仕事に打ち込んでいる様子が、清々しく思いました。
説明をしていただいたアダチ版画研究所さん、どうもありがとうございました。
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この見学を終えて帰宅したところ、ポストにこの絵ハガキが入っていました。
暑中見舞いの絵葉書でしたが、なんと北斎の赤富士で驚きました。
アダチ版画さんの説明によると、この浮世絵の摺り方は、とても難度が高いのだそうです。
富士山のグラデーションの部分が、とても難しいという説明を受けてきたばかりでした。
あまりの偶然に驚きました。
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東京はこのところ、連日35度の暑さです。
おまけにこちらの研究所は駅から遠いところにあるので、着物はやめました。
市民カレッジの担当者さんは、私がいつでも着物なので、洋服姿を見てびっくりされていました。
北斎ブルーに合わせて、ブルーのピアスをしてみました。
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