2019年2月25日月曜日

能舞台に立つ

先日、観世流シテ方能楽師で人間国宝である4世梅若実さんのご長女、梅若幸子さんから能についてのレクチャーを受ける機会がありました。


幸子さんは幼少の頃は能をされていたそうですが、現在はプロデューサーの立場で、能を世界に発信されるお仕事をされています。
ご家庭では10代の男の子の母親でいらっしゃいます。

650年、続いている能についての基礎的知識をお話していただきました。

初世・梅若実というのは江戸時代末期に生まれた方で、明治維新で多くの能楽師が、徳川家について静岡へ去って、能楽が衰退してしまった後も、東京で能の復興に力を入れた方です。

こちらは初代のお墓です。
会場である梅若能学院の玄関に立っています。


また文筆家の白洲正子さんと梅若家の交流についても、お話をされました。
白洲さんは2世梅若実から能を習い、女性で初めて能舞台で能を舞った方です。
すごいイケメン好きの方だったようで、ご主人の次郎さんに似た3世のファンだったそうです。

ところで、私はこちらの本を図書館から借りていました。
白洲正子さんの「お能の見方」です。


能の演目については読めばなんとなく分かりましたが、そのほかの随筆のようなところはまるで理解ができませんでした。

それでも今回の梅若幸子さんのお話を伺って、少しは能に近づけたような気がしました。
「能を見ていて、眠ってしまっても構いません。でもいびきはちょっと困りますけどね」とおっしゃられたので、安心しました。

お父上とはよく芸談議をされるそうですが、「よい能楽師は観客が育てるものだ」というお話をされるそうです。
それにしても、父親が人間国宝なんて、どんな気分なのでしょうね。

その後は、能楽師さんから、装束についての説明がありました。

若い女性用の装束。
これは江戸時代のものだそうです。
唐織というもので、草花が織り込まれて、とても美しいものでした。
ちょっとだけ羽織らせていただきましたが、見かけよりも軽い感じでした。


観客の方が着用されたところです。
若い女性の役の時は、このように衿の裏側の赤い部分を見せるのだそうです。


こちらはやはり若い女性の役が着るものですが、現代の技法で作られれたものです。
買うとなると、2000万円ほどするということでした。
とてもきれいな刺繍が施されていました。
これも羽織ってみましたが、裏地が違うせいで、江戸時代のものよりもずしりと重さを感じました。
これを着て舞うのは大変だろうと思います。


こちらのシックな装束は、中年女性用です。
とくに子供を亡くした母親などの役のときに、着用するようです。
生地そのものは男性用ですが、スズメやススキの刺繍がとても見事でした。


この袖の長いのは、天女などが着用するものです。
絽の生地です。
透けていてとてもきれいでした。


説明の後には、私たち一般人も能の舞台に登り、装束をまとってみる、という貴重な体験をさせていただきました。

楽屋の方から恐る恐る入って行きました。
そこには初世から3世までの3人の梅若実さんの写真が掲げられてありました。

大きな鏡がありました。
ここで衣装を確認するのでしょうか。


橋懸りと呼ばれる廊下は、中央のところは避けて歩きます。
すり足で歩きました。


素敵な装束を間近に拝見しました。
舞台の上に広げられた装束です。


近寄ってみました。




私も着用させていただきました。
軽くて、天女になったような気分でした。


その後は、能面についての説明がありました。
こちらは若い女性ですが、口角のあたりが微妙に違いますね。


鬼と般若。
角が生えています。
怖いですね。


不思議なおじいさんの面。
ギリシャにも連れて行ったとか?


イケメンの面。


こんな感じで、みなさま、いつまでも装束や能面を眺めていました。


なかなかできない体験をさせていただきました。

これは余談ですが、舞台の上からは、客席がとてもよく見えるものです。
誰が寝ているとか、お見通しでした。
これから気をつけなくてはね。

****

この日の装い。

能舞台に上るということでしたので、真面目に白襟、白足袋に、藍色の大島紬にしました。


帯は、ぽわるさんの福袋に入っていた、つづれ織り。


この日は、参加者には着物の方も何名かいらっしゃいました。
みなさん、きちんと素敵に着こなしていましたね。

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