2020年6月28日日曜日

「私が源氏物語を書いたわけ」

今日の読書案内は、山本淳子さんの「私が源氏物語を書いたわけ」です。


作者の山本さんは源氏物語や枕草子の研究者ですが、この本は、一般書と研究書の中間くらいでしょうか。
なんと「源氏物語を楽しむ会」のメンバーであるKさんの後輩にあたる方なんだそうです。

これは山本さんが、中宮彰子の女官として宮中で働いていた紫式部になり代わって書いたスタイルのものです。
それで「紫式部ひとり語り」というサブタイトルがついています。

内容は、タイトルにもあるように、紫式部が源氏物語を書いたわけから始まり、宮中の生活全般、他の女房との人付き合い、娘・賢子への伝言、清少納言への批判などを綴ったものなど広範囲に渡り、そんな気持ちを、紫式部本人の言葉で語っています。

面白いのはやはり清少納言への面当てでしょうか。
清少納言も漢文に詳しく、能力のある女性だったという定評がありますが、紫式部に言わせれば、それは漢文のほんの上っ面しか理解していないという厳しい文言がありました。
それなのに、清少納言はなんでも「いとをかし」でくくってしまい、本質を知らないおバカさん、だと言い切っていることです。
いやー、キビシイなぁと思いましたね。

でも紫式部は清少納言のように漢学自慢はせず、絶対他人にはそのそぶりすら見せない人なのでした。
紫式部は、「私は一という字も知らないの」という態度を取っていました。
実際にそういう人が身近にいたら、嫌な奴と思うかもしれませんね。
といいつつ、源氏物語の中には、漢文の素養がないと分からないこともいろいろと書かれているので、分かる人には分かる、といった感じでしょうか。

また藤原道長を頂点とした彼の一族のたくらみや、貴族のいやらしさも存分に描かれています。

以前読んだ、こちらの「源氏物語の時代 ~一条天皇と后たちのものがたり~」▼も面白かったですが、当時の天皇という方は、現在の象徴性の天皇とは大違いなほど、地位も高かったのがよく分かりますね。


やはりこの後は、彼女の本心が書かれているという「紫式部日記」を読んでみたいと思うようになりました。

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「一日一句」

梅雨空や源氏の話いとをかし


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