先日、新田次郎の「孤高の人」を読んで面白かったので、また同じ作者の山岳小説を借りてきました。
「孤高の人」のブログはこちら→https://toshiko72.blogspot.com/2021/07/blog-post_20.html?m=1
今度の小説は「風の遺産」といって、登山と、男女の恋愛関係を絡めたものでした。
ヒロインは若い人妻です。タイピストとして共働きで働いています。彼女の夫は新聞記者で昼夜となく忙しく働いていて、妻のことは置き去りです。
ヒーローは大学の助教授です。研究と山登りに没頭するかっこいい山男です。
二人はふとしたことで出会います。
そして彼らに絡むのが、ヒロインの同僚の女性や、ヒーローのいとこの男性や、ちょっと異色の優男など。
かれらがみんなで山登りをすることになるのですが、あれこれと事情が発生して、結局、ヒロインとヒーローの二人だけが雪山に残されてしまいます。
そして吹雪の中、一週間、食料も燃料もない状態で二人で過ごします。体を暖めるには、ひとつの寝袋で寝ることになりました。さて彼らの運勢はいかに。。。。
というお話なのですが、この小説が最初に書かれたのが昭和36年だそうです。そしてその後、16年経って、新田さんはもう一度書き直して出版したのが昭和52年のことでした。
ということなので、読んでいると、昭和の世界がよみがえってきます。
たとえば、彼らが連絡をとるときは、アパートの階段を降りたところにある公衆電話からです。家に電話すらない時代でした。
上野駅からスキー場に行くときは、長いスキー板を持ち、満員の列車に乗って行きます。紙の切符を車掌さんに切ってもらって電車に乗るのです。
また病院に電話をすると、入院患者の部屋を教えてくれたりなど、現代の個人情報に照らし合わせたら、まるで時代錯誤のストーリーが続きます。
細かいことですか、ヒーローの肩書ですが、昔は助教授でしたが、現在は准教授ですね。
そして前の「孤高の人」でも女性の描き方が一面的であると思いましたが、今回も同様です。新田さんはよほど芯の強い控えめな女性がお好きだったのでしょうね。
山岳小説を期待していた人には甘すぎた内容だろうし、恋愛小説を期待していた人には中途半端だっただろうと思いました。
だいたい、偶然に出会った人と、その日のうちに一緒に山登りするのを決めるなんて、ありえないですよね。それもロッククライミングですよ。嘘っぽいですよね。
人妻の同僚として、ちょっと蓮っ葉な若い女性も登場するのですが、私は彼女の方が、自分の心情に素直に行動しているぶん、好意がもてました。
いやいや、辛口批評になってしまいましたが、登山の部分は、知らないことが多いので、参考になりました。
またストーリーは別として、文章は力強くて、読みやすく、引き込む力はありました。
ただしタイトルもちょっと昔風な感じがしますね。
ザ昭和の小説でした。
昭和人の私が読むとそう思いますが、平成生まれや令和の人はどう読むのかしらね。
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一日一句
暑い日は 雪の世界で 遊ぶなり
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