最近読んだ2冊の本について、ちょっと覚え書を残しておきます。
一冊は野上彌生子さんの「秀吉と利休」。
以前から一度読んでみたいと思っていた本ですが、図書館には古い版のものしかなく、あまりに黄ばんでいて、ちょっと手にする気にならなかったのです。それが2022年(今年)1月に改版が出て、きれいな文庫本になっていたので、読む気になったというわけです。
この本が最初に出版されたのは1964年(昭和37年)だそうで、作者が77歳のときに書き上げたもののようです。その後、文庫本になりましたが、その時、作者は84歳になっていました。それだけでもすごいですね。ちなみに野上さんは百歳まで生きていらっしゃった方です。
内容は太閤秀吉と、彼の茶の道の師である利休との物語です。
どんな話であるかは、三浦綾子さんの「千利休とその妻たち」や山本兼一さんの「利休にたずねよ」を読んでいたので、内容は分かっていました。
それにしても文章が難しかった。
修飾文が5行ほど長々と続き、その後でようやく主語述語が出てくる、といった感じで、今の基準で言ったら「悪文」になるのではないか、と思うような文章でした。
それでとにかく読むのに時間がかかりました。
本のカバーには「綿密重厚な筆で描ききる」という説明がありましたが、私は難儀しました。
それでも秀吉の人間の多面性が克明に描かれ、また利休を取り巻く人達、様々な武士たちや僧侶などが登場して、なるほどそうだったのか、と歴史の裏側を面白く読みました。
ただし気になったのは、利休の架空の三男を登場させていたことです。そういう人物を生み出したのはさすが小説家の発想だと思いますが、うーん、そういう人物を狂言回しのように使うのは、ちょっと気になりました。
歴史上の物語というのは、実は誰もその場に立ち会っていないので、自由に話を構成することができるのが、小説家にとっては醍醐味なのでしょうね。
この小説を読んでへとへとになってしまったのですが、その後に手にしたのは、富山和子さんという環境評論家の「水の文化史」です。
最近、川を扱った本を読み漁っていますが、たまたま富山さんの本は名著だという批評があったので、ネットの中古本専門店で購入しました。なんと326円で送料も無料でした。安すぎますね。
この本は1980年(昭和55年)発行だそうですが、この時、作者の富山さんは47歳です。川の物語を語っていますが、とにかく文章が分かりやすくて素晴らしい。一ヶ所もひっかかることなく、まるで川の流れるように書かれています。
まだほんの出だしを読んだだけですが、シンプルで美しい文章で、そしてきちんと伝えるべき内容があります。
現在は89歳でご存命とのことですが、どんな生活をされているのか気になります。きっとお年を召しても、きっちりとした老人になられているのではないでしょうか。
どちらも昭和の時代に書かれた古い本ですが、とても気になった2冊でした。
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「一日一句」
未知の道 春の読書で 広がりぬ
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