2012年10月8日月曜日

玉村咏さんの着物

先日、着物仲間のUさんとご一緒に南青山にある福井県のアンテナショップに出かけたとき▼の続きのお話です。

「南青山ふくい291」では、福井県ご出身で、私が勝手に「色使いの魔術師」と名づけている染色家・玉村咏さんの作品展示会が開かれていました。

玉村さんの正式ホームページはこちら▼です。
(お時間のある方はどうぞごゆっくりとご鑑賞されてくださいね。多くの作品が見られます。)

展示会には、前に拝見した「源氏物語~色綴り~」もありましたが、何回見ても素敵でした。
源氏物語54巻を表わす54色のどれもが淡くて気品があり、平安時代の貴族たちを彷彿とさせるような色でした。

会場では、源氏物語研究家の有田祐子さんから直接お話を伺い、色を指定するときのご苦労なども聞かせていただきました。有田さんは白に深緑の模様の入った素敵なお召し物を着ていらっしゃいました。


たとえば「青」といってもお互いのイメージによって色が確定しないので、
「MONO消しゴムに使ってある青」と有田さんが説明をして、それを玉村さんが染め上げていった、などという裏話も聞かせていただきました。
お互いの専門がうまくコラボされたのですね。

玉村さんの作品は、和風でも洋風でもそのどちらでもない独特のセンスが光っていました。

個人のおうちに飾ってもよいインテリア、雪洞のようなランプ、ホテルや会議場などの大きな壁面を飾るものなど、そのどれもがすばらしい色合いでした。

ビー玉を使った面白いデザインの壁面インテリアがありましたが、これは玉村さんが誤ってビール瓶を転がしてしまった時、その瓶から見えた向こう側の景色が面白かったので、そこから発想が生まれたなどという面白いお話も伺えました。

玉村さんの色づかいの特徴は、グラデーションだと思うのです。
たとえば、白から薄いベージュを経て濃い茶色になったり、水色から青を経て緑になったり、とにかく口では表せないような微妙な色の変化が楽しめました。
玉村さんの説明によれば、ほんの1メートルほどの長さの糸であっても、その間には40くらいの色を使っているのだそうです。
そのようにして、初めて微妙な色の変化が表れるのでしょうね。

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インテリアのコーナーの隣には、布のコーナーがありました。
小さな風呂敷、帯揚げやスカーフにしてもよいような細長い布、幾何学模様の着物などが飾ってありました。
どれもとてもとても素敵な色でした。

その中でぱっと目に付いたのが、「白玉」という名前の着物。

言葉ではうまく伝えられないのですが、黄色、紫、茶色、灰色、ピンク、ベージュなど色違いの着物でしたが、どの着物も裾と袖のところに白い小さな水玉が描かれていて、見ているだけでも楽しくなるようなものでした。

「白玉」には万葉集にあるという歌が書かれていました。

     白玉は人に知らえず 知らずともよし
     知らずとも 我れし知れらば 知らずともよし

海中にある真珠のように 私の価値は人に知られない。
人が知らなくても構わない。
私自身が自分の価値を知っていれば。

という意味だそうです。
万葉時代には真珠のことを「白玉」と呼ばれていたのですね。

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玉村ワールドのマジックに出会ったためでしょうか、なんとこの私が、その白玉の着物を注文してしまったのです!

これまでの私の着物は、ほとんどが頂き物の着物で、買うとしたらだいたいがリサイクルショップや骨董市。下は数百円という着物もありました。それが玉村さんの着物を見たら、もう値段は気にならなくなりました。福沢諭吉さんが何枚などということは忘れてしまうほどの、魅力的な着物だったのです。

展示会場でこの着物を着ている方がいらっしゃいましたので、ご参考に写真をご覧ください。
色違いですが、シンプルで上品、それでいて可愛らしいでしょ?
裾と袖に白玉模様が入っています。
色白の美人の方でしたので、このようなピンク系のお色が似合っていました。


私が注文したのは「灰色」とでも呼ぶのでしょうか、明るい光沢のあるグレイです。
自分で言うのもおかしいのですが、これを着ると顔がぱーっと明るくなり、幸せな気分になれたのです。

玉村さんから「本当に似合う色を着ると、自然と喜びや笑顔が出てくる」と言われましたが、私にも似合う色が見つかってよかったわ。

仕立ては1か月ほどすると出来上がってくるそうなので、今から楽しみだわ。

私の「勝負着物」にしようと思っています。





6 件のコメント:

  1. siroajisai10/09/2012

    本当に可愛らしくて
    としちゃんさんらしいお着物ですね♪
    色はどんな感じでしょうか・・はやくお目にかかりたいです!

    ☆海中にある真珠のように『この着物』の価値は人に知られない。
    人が知らなくても構わない。
    私自身が『この着物』の価値を知っていれば。☆

    深い意味を持つ一節で遊んでしまってすみません。
    でも、着物を着るときの心境にあまりにぴったりなので、ちょっとお借りしてしまいました・・☆
    着物って、なんだか不思議な服飾だな、と思います・・♪

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  2. siroajisaiさん、こんにちは。
    お久しぶりです。

    注文した着物の色は、このブログの文字が書かれている部分のような色かしら? もうちょっと緑っぽいかしら?
    パソコンによっても見え方が違うのでなんともいえないんですけど・・・。

    万葉集の替え歌(?)、そうですね、私も着物を着るとそういう気持ちになります。
    着物って本当に不思議ですよね。

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  3. まぁ、なんて、美しく上品な着物ですこと。
    出来上がってくるのが、ホントに楽しみですね。

    この日のとしちゃんのお召し物も素敵ですよ。
    シックで上品で。
    着物の世界がどんどん広がっていますね。

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  4. マサさん、白玉模様が歩くと微妙に揺れて見えるんですよ。気品がありますよね。私が着るとどうなるか分かりませんが・・・・。

    まさか作家モノの着物を着ることになるなんて夢にも思わなかったわ。不思議な出会いでしたよ。

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  5. 「色は形を凌駕する」納得ですね。

    色を作られたり、色そのものの組み合わせを
    研究なさっていらっしゃる方とは次元が違いますが、お花も、やはり色あわせが大事だといつも心して選んでいます。

    としちゃん、作家ものの着物を注文なさったのね。素晴らしいわ。勝負着物ですね。
    拝見するのが楽しみです。

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  6. 真蘭さんのようにいつも色や形と格闘されていらっしゃる方のコメントはさすがに的確ですね。
    私は着物の場合は手触りというか着心地を重視していたので、色のことは二の次だったのですけれど、今回の染色家の色使いを拝見したら、色の魅力を痛感しましたね。

    そうそう、勝負着物なの。とはいえ私にとってはすごく高い買い物なので、何回も着て元を取ろうと思っているの。少なくとも100回は着ないとだめだわ・・・。

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