文楽を見るのはまだ二回目という素人ながら、
二代目吉田玉男襲名披露公演▼に立ち会うという幸せな体験をしてきました。
会場には、満員御礼の札が出ていました。
今回の襲名は、これまでは玉女(たまめ)さんというお名前だった人形遣いの方が、玉男になる、つまり女から男になる、というちょっと珍しい襲名でした。
この方は、こちらのチラシでもお分かりのように、かなりのハンサムさん。
なんとなく三浦友和の雰囲気が漂っています。
人形遣いというのは、このように人形の首と右側を担当するメインの方(主遣い)と、人形の左側を担当する方(左遣い)と、足を担当する方(足遣い)の3人一組で行われます。
そしてメインの方だけはお顔を出していますが、左と足の担当者は被り物をして顔を隠しているのです。
玉女さんも、お若い時はお顔を隠していたわけですが、こんなハンサムな方が顔を隠していたのはもったいないですね。
襲名披露のチケットはとても入手しにくいそうですが、着物友達のY子さんが、用意してくださいました。
彼女は、文楽好きのご主人の影響で、文楽が好きになったそうです。
襲名披露のご祝儀の前で。
今回の出し物はまずは「五條橋」。
これは牛若丸と弁慶のお話です。
牛若丸の軽やかな動きがかっこよかったですね。
次は「新版歌祭文 野村崎の段」。
これはいわゆる「お染久松」と言われる、心中のお話ですね。
舞台にはいろいろな小道具が使われていて、人形が船に乗ったり、籠に乗ったりするシーンもあり、面白かったですね。
ちょっと寝ぼけた顔をしています。
その後は、この日のメイン、人形遣いの吉田玉女さんが吉田玉男になるという襲名披露でした。
歌舞伎と違って、文楽の場合は、襲名する本人は何も語らずに、ただ頭を下げておくだけというのが珍しかったです。他の方の口上をずっと聞いている姿勢でした。
まぁ、役者さんではないので、しゃべらない方がいいのかも。
そして最後は披露狂言「一谷嫰軍記(いちのたにふたばぐんき)」でした。
これも源氏と平家のお話ですね。
それにしても忠義を尽くすために、我が子を身代わりにして、その首を切ってしまうというなんとも切ない父親の心情を描いたお話でしたが、平和な時代に生きている者としては、なんとなく納得できないわね。悲しみに打ちひしがれる母親の悲しみが伝わってきました。
今回は人形遣いさんの襲名披露でしたが、文楽はやはり義太夫の太夫さんの演技力が大きいのではないかと感じました。
身体全体で声を振り絞るように出す姿は、素晴らしいですね。
今回は舞台の両脇に浄瑠璃が表示されていたし、イヤホンガイドも借りていたので、よく分かりました。
襲名披露をじかに見るなんてことは、そうそうあることではないので、非常に貴重な体験をさせていただきました。
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この日の装い。
実は、
歌舞伎の鴈治郎さん襲名披露の時▼、あまり考えずに紬の着物で行ったら、周りの方は訪問着や華やかな帯ばかりで、ちょっと引いてしまったことがありました。
それで今回は、私としてはちょっと気張っておしゃれしていきました。
文楽の襲名披露の着物着用率は歌舞伎座よりも高いように感じましたが、それほど派手にお洒落している人は少ないようで、ふつうの紬に名古屋帯、という方もかなりいらっしゃいました。
全体的には、文楽の着物姿の方が、ちょっと渋い感じだったかしら。
こちらは、三重織という特殊な織り方で笹の模様を浮かび上がらせている単衣着物。
ちょっと透けたような感じに見えたりします。
帯は、お花模様の袋帯です。
裏面は黒っぽい生地に京野菜のカブなども描かれています。
どちらの面にしようかと思いましたが、おめでたい時は明るい方が良いと思って、水色の面を出してみました。
色鮮やかな作品がお得意なようで、呉服屋さんに飾ってあった牡丹の花は素晴らしいものでした。
こちらの作家さんの振袖を羽織って、ドヤ顔の私です。というか、お局様ですね。
彼岸花が見事でした。
左は工房の染職人さんです。
この作家さんの衣装は、女優さんやモデルさんが愛用されているのだとか?
たしかに華やかな素敵な着物ですが、日常生活に着用するのは、ちょいと無理がありますね。
それで着物は止めて、帯だけを注文することにしたのでした。