諸田玲子さんの「四十八人目の忠臣」。
これはご存じ忠臣蔵の四十七士に次ぐ、四十八人目の忠臣は誰だったか、というお話です。
その答えは、浅野内匠頭の小姓上がりの磯貝十郎佐衛門という美男剣士の恋人だったきよという女性です。
彼女は内匠頭の正室である阿久利に仕える侍女でしたが、磯貝と付き合い、将来を誓い合っていました。
ところが内匠頭が殿中で吉良上野介を斬り付けるという例の松の廊下の事件を起こした結果、磯貝の人生も変わってしまいます。
お家は断絶。そして仇討ちのために生きることになります。
きよも愛する人とは離れ離れになり、そしてその本懐後、武士たちは切腹を言い渡され、彼女は生きる望みを失ってしまいます。
ここまでのお話なら、きよと十郎佐衛門のラブストーリーとして終わるのですが、その後、思いがけない続きがあるのでした。
「女だけにできること」を武器として彼女は見事によみがえります。
つまり次代将軍の側室となって生き、なんと7代将軍の母となり、島流しになっていた忠臣たちの遺児の赦免役目をしたのでした。
そしてお家も復興します。
このきよは、実は7代将軍・家継の母である月光院だったというあっと驚くストーリーでした。
登場人物があれこれと多すぎて、誰が誰だか分からなくなってしまうという欠点はありますが、女性から見た忠臣蔵という発想が面白いですね。
300年以上も昔の事件が歌舞伎になり、映画になり、小説となり、日本人の血を湧き立たせていますが、その時代の背景にこういう女性がいたという話は面白かったですね。
さすがに諸田さんの作品でした。
ちなみに私が一番いいな、と思ったのは、きよと彼氏が別れ離れになるとき、お互いの肌着を交換するシーンです。
今だと男女の肌着はあまりに形状が異なり、性別を超えて着用することはできませんが、当時は袖なしの半襦袢だったので、お互いの肌着を変えて着用していても分からなかったそうです。
これって、恋人の肌を直接感じることができ、いつもそばにいるようで、ロマンチックで素敵ですよね。
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