2016年2月19日金曜日

「東福門院和子の涙」

久しぶりの読書感想です。

インフルエンザにかかって、外出できなかったので読んでいました。

私の好きな作家である宮尾登美子さん著の「東福門院和子(まさこ)の涙」。
かなり分厚い本です。


この小説を読んだのは2回目ですが、最初に読んだのは今から20年ほど前のことだと思いますが、細かいことは忘れてしまっていました。

東福門院という方は、徳川二代将軍の秀忠・お江与夫婦の末娘であり、時の帝である後水尾天皇と政略結婚させられた女性です。

彼女は14歳の時に江戸から京に上り、天皇の中宮となりましたが、この天皇、実に女好きというか、血統を絶やさないためにか、あちこちの女官に手を出して、なんと31人もの子供を産んだという人でした。

プライドだけは高い朝廷ですが、権力と財政力を持つ徳川家に対して、武家を見下していることは容易に想像されます。

そんなところに嫁がされた姫は、聡明さゆえに、下々のように苦言を発することもなく、毅然としていました。

それでも、「東国からやってきた弓矢の家の娘」というだけで、いわれなき冷たい仕打ちを受けます。
結婚の挙式があったのち2年余りも本当の夫婦としての生活はできず、また産んだ子供は女の子ばかり、せっかく男子が生まれても早世してしまうという悲劇の連続でした。

ところで、夫である後水尾天皇ですが、この方、意外と気骨があったのでしょうか、徳川家に対抗して、自ら退位されてしまったのですね。

その結果、東福門院との間にできた長女が、わずか8歳にして、奈良時代以来の女帝となりました。
第109代の明正(めいしょう)天皇です。

それは名誉なことではありましたでしょうが、和子にとっては、実の娘が制約が多く難しい立場の天皇になって、会うこともできない状況になるよりも、手元に置いて女性として育てていたかったでしょう。

その後、和子は他の女性が産んだ男子を引き取り、その子供がのちの天皇になったので、国母としての栄華は極めたのでしょう。

宮尾さんの小説は、くどくて好きでないという方もいらっしゃるかもしれませんね。
この小説にしても、和子が登場するのは随分と後のことで、まずは和子のおばあさんであるお市の方の話、そして母であるお江与の話、徳川家の話などが多いので、途中で挫折する方もいらっしゃるかもしれません。

それでも和子さんが嫁いだ後の話は面白いものでした。
多くのいじめや困難に負けずに生きていく和子の姿は、すがすがしく感じられました。

小説は、お付きの女性(ゆき)が見聞きした話として語られていますが、当時の江戸と京都の距離を考えると、ものの考え方や話し方など、なかなかなじむことが難しかっただろうと思います。

タイトルの「和子の涙」というのは、そんなそぶりを見せずに気丈に振る舞っていた和子が、人しれず涙をぬぐっていた紅絹の布ことです。

幕末には、反対に皇室から武家に嫁いだ皇女和宮もいましたが、どちらにしても、彼女たちは、権力者と縁続きになって威勢を張りたいという男たちの犠牲だったのかもしれません。





4 件のコメント:

  1. うたどん2/19/2016

    としちゃんのスケジュールがあまりにも忙し過ぎたのでは
    身体が少しお休みと知らせてくれたのではないでしょうか。
    ゆっくり安静にお休みくださいね。

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  2. マサ2/19/2016

    まぁ、インフルエンザだったのですか。
    インフルエンザというと、高熱、嘔吐、間接の痛みなど激しい症状を連想しますから、微熱だと「風邪かな」って思っちゃいますよね。
    お大事になさって下さいね。

    私は、今日午前中は母のところへ行ってきて、夕方はトラのお迎えです。介護と子守りのさえない日々です(苦笑)
    温かくなって、母の具合もよくなるといいのですけどね。

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  3. うたどんさん、お気遣いありがとうございます。
    私は自分がインフルエンザにかかるなんて思ってもいませんでした。
    それほど忙しくしているわけではありませんが、
    娘からは「高齢者なんだから、気を付けて!」と言われましたよ(笑)。

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  4. マサさん、たぶん、お嬢さんならよくご存じでしょうが、B型と言うのは症状が分からないそうです。それと熱が出て、48時間以内に薬を飲まないとダメなんだそうです。
    でも高熱でないので、そのままにしていました。
    お母様のお世話と、Tラちゃんのお世話、大変でしょうが、できるうちが花ですよ。
    期待されているのは、良いものです。
    私は来月になったら、こんど入所する下の孫の名札つけをしないといけないみたいだわ。

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