たまには新しい作家の作品でも読んでみようと思いました。
それで新聞広告に出ていた、こちらの本を買ってみました。
「第7回山田風太郎賞受賞」
「週刊文春ミステリーベスト10」という帯が目立った「罪の声」です。
著者は塩田武士さんという方。
新聞広告では嵐の絶賛でした。
「面白すぎて止まらない」とか
「切なくて闇の多さに心が痛んだ」とか
「今年の最高作」と書かれていました。
内容は1984年に実際に起きたグリコ・森永事件を元にしています。
今からだと32年前の話になりますね。
この未解決の誘拐事件には、「かい人21面相」と名乗った子供の声が残されていました。
主人公は、たまたま見つけたテープのその声が自分の声だと知ってしまったテーラーの息子。
もう一人の主人公は、この事件を改めて追って記事にすることになった新聞記者。
この二人が主人公です。
私の感想としては、この物語の著者は主語を省いて書くくせがあるので、文章を読み出しても、その話や心情が、どちらの人(テーラーの息子か、新聞記者か)か、なかなか分かりづらいところがありました。
何行か読んでいくうちに、ああこれは、こっちの人の話なのだなと分かる具合でした。
ということに加えて話が入り組んでいて、また登場人物がすごく多くて、誰が誰だか分からない。
おまけに特徴がなくて、私の頭では付いていけないことがありました。
もう少し整理してほしいと思いました。
またこれは小説だから仕方ないでしょうが、人は32年前に起きた事実をどれくらい明確に覚えているものでしょうか。
犯行に加わった男が、
「あの時にいたのは7人だったと言わているが、実際は9人いた」と話す場面がありましたが、30年以上昔のことを、そこまではっきり言えるなんて、そんなこと、ありえないと思うのですが。
実は、この事件の発生時には、私はカナダにいて、日本の事情に通じていたわけではありませんが、それでもグリコ・森永事件というのは「キツネ目の男」というインパクトがあり、大事件であることは事実でした。
しかしその後、事件はうやむやになってしまい、翌年の1985年の夏には日航ジャンボ機墜落事故が起こり、人々の関心はこちらに移っていき、この事件は次第に風化されてしまったのでした。
そういう事件を掘り起こして、関係者や犯人と思われる人を登場させる著者の手法はすごいとは思います。
ただし登場人物の描き方を工夫し、それぞれの個性を明確にして、もう少し整理して、文脈なども分かりやすくしてもらいたいと思いますね。
最初の導入部分と、最後の部分は読みごたえがありましたが、中だるみを感じました。
400ページ以上ある分厚い本だったので、電車などに持ち運ぶことができず、家のベッドで読みましたが、これは保存せずにすぐにブックオフ行きだと思います。
ただし、私の感性には合いませんでしたが、こういうのを好きな読者はいらっしゃるでしょう。
辛口感想ですいません。
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