3年ほど前のことだったと思いますが、市のシルバーセンターで、心理学の被験者募集がありました。
市内にある白百合女子大の発達心理学の先生が、高齢者を対象にして心理実験をするというので、その被験者を求めていたのです。
なんだか面白そうだと思い、応募して、被験者になったことがありました。
アルバイト代として、ほんの少々、謝礼金もいただきました。
先日、その実験結果が送られてきました。
ずいぶんと長い期間に渡り、実験されていたのですね。
その実験というのは、高齢者と若者では、立体図形の認識についてどのような差異があるかを調べる、というものでした。
実験の初めは一般常識をして、その人がノーマルであるかを見ました。
「今の総理大臣は誰か?」とか「源氏物語の作者は誰か?」というようなジャンルの質問があったような覚えがあります。
こういう問題は、簡単にクリアーできました。
その後は立体図形を見て、それを二次元的、三次元的に移動して、元の図形と同じものはどれかを当てるものでした。
簡単に言うと、凸凹の箱型のものを縦や横にずらしてみたり、斜めにずらしたり、あるいは逆さまにしたり、裏返したりして、その図形がどれと同じかを判断するものでした。
これが意外と難しくて、ちょっと手こずったものもありました。
実験対象の高齢者は65歳から79歳まで。
全員で67名、平均70歳だったそうです。
これに対して、大学生のデータは49名、平均年齢19歳ということでした。
その結果によると、一般常識や、言葉の意味についての問題は、高齢者でも若者でもほとんど差はなかったそうです。
しかし立体図形に関しては、高齢者は解くまでの時間がかかったり、正答率が下がったという結果になったそうです。
単純な図形問題では、それほど大幅に下がったということでもなかったそうですが、しかし複雑な三次元問題になると、高齢者は反応時間が長くなるようになりました。
高齢者になると、複雑な図形に対して、苦手意識が生まれるのかもしれませんね。
ただ、こういう実験は「すぐにすべて正しい」と結論付けることはできないと思います。
というのは、その実験対象になった老人がもともと図形に弱い人であり、老化しても同じ程度に図形が弱いかもしれません。
(実は私もそのタイプ。小学生の時の能力検査でも図形はダメでしたから、今になって始まったことではありません)
ということがあるとすると、もし可能であれば、同じ人間の若い時と老人になった時(半世紀ほど時間がかかりますが)のデータを比べて見なければ、若者と高齢者を単純に比較できないのではと思います。
また今の若者は、小さい時からゲームやテレビなどを通して、図形に対する直観力があると思うのですが、老人はこれまでは文字や耳を通しての経験が多いので、図形に対しての親しみが薄いのかもしれません。
つまり今の若者が老人になった時は、どのような結果が出るかは何とも言えないですね。
この論文の中で、先生は、高齢者でも一つずつステップを踏むように考えると、間違いが少なくなる、と書かれていました。
ちょっと意味深長な論文ですね。
私も日々、老化が気になりますが、ただ悩んでいるよりも、打つ手はありそうです。
たとえば、分からないことは紙に書いて覚えるとか、複雑な問題も分解して分かるところからやってみるとか・・・・。
いずれにせよ、私が参加した実験で、先生の論文が出来上がったことは、嬉しいですね。
(写真は無料写真サイトから拝借しています)
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