2018年12月12日水曜日

お江戸×アバター×落語家@法政大学

先日、法政大学において、「朝日教育会議」▼という朝日新聞が主催する、全国15大学との協力による「教育の力で未来を切り拓く」というテーマのシンポジウムに参加してきました。


それぞれの大学では、それぞれのテーマを持っていますが、法政大学の場合は、「江戸から未来へ アバターforダイバーシティ」▼というちょいと分かりにくいタイトルでした。
「江戸」と「アバター」に、どういうつながりがあるのか、まるで分からずに参加しました。


このシンポジウムに申込んだ理由は、一つは江戸の文化を研究されている田中優子総長を生で見て(!)みたかったこと。
田中先生は、研究内容にも興味がありますが、なんといってもお着物姿が魅力なのです。

また私は今までの仕事の関係で、全国各地の国立大学にはあちこちお邪魔をしていましたが、私立大学はあまり中に入ったことがなかったので、私立大学の中を見学してみたかった、というミーハー的理由もありました。

法政大学は、明治時代が始まった頃、フランスから来日した法律学者のボアソナード博士が、1880年に東京法学校の教頭となったのが大学の始まりだそうです。
「自由と進歩」が校風だそうです。
今では学部も関係施設もたくさんあり、キャンパスも市ヶ谷の高層校舎(ボアソナードタワー)をはじめ、たくさんあるようです。


法政大学は、創立150周年である2030年までにスーパーグローバルな大学を目標としているそうです。
「グローバル」であるということは、「ダイバーシティ」すなわち「多様性」を目指しているのだとか。


大学というのは、今後の少子化を考えて、どの大学も特色ある大学を目的としているようですが、法政大学は2014年に田中総長になったためか、今年1月には「江戸東京研究センター」▼という特色あるセンターが発足しています。
そのセンター長もご挨拶されていましたが、女性の理工学部の教授だというのが、意外でした。


そういった大学の観点から、田中先生は「江戸から現代」に共通する「多様性」という切り口でお話をされました。
江戸時代には、「連」というゆるやかな組織があり、俳諧や浮世絵などもその連の中の人が活躍していました。
また1人の人間の中にも、複数の名前を持って活動している人がたくさんいたという説明でした。

江戸時代の小説を読んでいると、1人の人がいろいろな名前を持っていることに気が付きます。
たとえば戯作者として有名な山東京伝は、浮世絵師としては北尾政演という名前を持っていたし、後期琳派の絵師で有名な酒井抱一は、姫路藩主の弟としての武家の場面では、別の名前を持っていました。
そのような例をたくさん挙げて、江戸時代の人は、それぞれの場面において、いくつもの顔を持って生きてきたというお話でした。

そのようにして生きていると、たとえある場面で追い込まれても、別の場面では別の人格として生きて行けば楽なのかしら、というように、私は受け取りました。
現代人はどの場面においても、たとえばサラリーマンの「山田太郎」はいつでもどこでも「山田太郎」です。
ところが、江戸時代風にいえば、彼がサッカー好きならその時は「三浦次郎」になってもいい、ということかもしれません。
それが「アバター」つまり、人間の分身であるということでした。

そのような江戸時代の社会のことを、田中総長はもっと理論的に説明されていましたが、人間にはいろいろな側面があるので、その場面において、いろいろな名前を名乗るのは面白いと思いました。

さてさて、田中先生は、淡い色(薄黄緑)で裾にぼかしの入ったお着物に、金色系統の博多帯をされていました。
かなり小柄でほっそりとしていて、なで肩で、素敵でしたよ。

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その後は、ニューヨークのニュースクール大学というところの池上英子さんという先生の講演でした。
ニューヨークそのものが、ダイバーシティを表している社会です。

この方は以前は歴史社会学が専門でしたが、現在は「アバター」という手法を使って、発達障害の人の助けとなる活動をされています。

「アバター」というのは元々はインドの仏教の用語で、「化身」という意味だそうです。
それが現在ではインターネット上の顔(?)のようになって、いろいろとアニメのようになっています。

そのアバターを利用すると、発達障害の人には、「自分でないもの」になって、自由に活動ができるというようなことでした。

なかなか分かりにくいところもあるお話でしたが、「ニューロ・ダイバーシティ」という新語を使っていました。
「The Brain is wider than the Sky」
脳は空より広い
その言葉が新鮮に響きました。

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その後は、上のお二人に加えて、落語家の柳家花緑さんとのパネルディスカッションでした。
花緑さんは、柳家小さんの孫としても有名な方ですが、最近は、ご自身が発達障害(学習障害)であることを公開されています。ということで、今回のパネラーとして登場されたのでした。
「発達障害の特性により、ものすごく多弁である」、ということもおっしゃっていましたが、とにかくたくさん話し、伝えたいこともたくさんある、というお気持を分かりやすい言葉で述べられたので、よく伝わってきました。

「江戸と未来とをどのようにつなげるか」という司会者の質問に対して、3人のパネラーの話を聞いただけでは結論は分かりにくかったですが、一つのヒントとして、次のような説明がありました。

江戸時代には日本全国には270の藩があり、それぞれの地域において多様な特色を持っていたのが、明治政府になり、中央集権が始まったことにより、全国各地同じような風景になってしまった、というのは理由はあるでしょうね。
「それを取り戻すのが、アバターの世界である」と指摘されると、それはどうかな、とは思いますが、一つのヒントにはなると思います。

江戸時代の人々の文化を研究している先生と、「アバター」を研究している先生と、発達障害の落語家さんとをちょいと無理にこじつけたような感じもありましたが、まぁ面白い話を聞けました。
とかく社会学というのは、社会の側面をあれこれ切り取って、当たり前のことを難しい言葉で表現する、という傾向があります。
私も大昔は社会学を専攻していましたが、なんでも社会学の対象となりうるので、社会学を応用した「アバターを利用した発達障害の人のサポート」もありかな、とは思いましたが、一般の人にはなかなか理解されにくいかもしれないと感じました。

「多様性」というのが法政大学の目標のようですから、そういう意味では、いろいろな考え方があるのも面白いですが。

そして法政大学の洗面所の美しかったこと。
まるでホテルの化粧室のようでした。

この講演会の様子は、後日、朝日新聞の紙上でも掲載されるそうです。
どのようにまとめるのか、興味がありますね。

また、田中総長のお着物ファンかもしれませんが、今回の講演会には着物姿の女性がチラホラいました。こういう講演会では珍しいことです。

それにしても、本来なら若い人に集まってもらいたい教育シンポでしたが、来場していたのは、私と同世代のおじさんやおばさんばかり。
というか、ジジババ世代でした。
「法政大学の良さを知っていただき、お孫さんを是非、法政大学に入学させていただきたい」というのが、大学側の本音かもしれませんね。

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この日の装い。

青い横じまの小紋ですが、神楽坂のフリマで2000円くらいだったかしら。
丈が少し長いのですが、ほぼ新品でしたのでラッキー。


帯はBerry工房さんのレース帯。
いつも重宝しています。


4 件のコメント:

  1. カンカン12/13/2018

    花緑さんは地方にもあちこち行かれて活躍されているのですね。
    知らない落語家でしたが、ひょんなことで、最近ご家族の方と
    知り会いになり、親近感があります。精力的に活動しているので
    いつか落語も聞いてみたいと思いました。券も売り切れてしまうらしいのね。
    TVでカミングアウトしたのも見ましたが、何処かひかれるところがあります。

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  2. あら、花緑さんのご家族とお知り合いになったなんて、すごいですね。
    結構、昔から有望な落語家さんでしたよ。
    発達障害でも、個性を活かした生き方をされていますよね。
    分かりやすいご自分の言葉で語っていたのが、良かったと思いました。
    「着物を脱いで、スーツを着て、椅子に座って落語をする」というのが
    彼の夢なんだそうです。
    そのほうが、どこの国の人も落語ができて、グローバルになる、というご意見でしたよ。
    ふーむ、新作ならいいかもしれませんけどね。

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  3. カンカン12/15/2018

    彼は写真で見る限り和服がすごく似合いますよ。逆に羽織袴を世界に
    浸透させてほしいですよね。和服をグローバルにしてほしいです。
    新しいことに挑戦は歓迎ですけれど。

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  4. 私も、着物姿の方が似合うと思いましたよ。
    ただし、今の落語家は高齢者になると、みんな膝が痛くなり
    正座をするのがすごく辛くて、それで落語から離れて行く人が多いんですって。
    それで洋服で椅子、ということを彼は考えたようでした。
    着物で椅子でも構わないと思うのだけどね。

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