最近読んだ本、あるいは読んでいる途中の本の感想です。
注目したのはこちらの5冊。
橋本 治著「リア家の人々」
私は橋本さんの本は、「桃尻娘」とか「窯変源氏物語」などの古典しか読んだことがなかったので、現代小説はこれが初めてでした。
この「リア家の人々」は、現代小説の最高の部類に入る小説だと思いました。
シェークスピアの「リア王」をなぞったお話ですが、妻に早死されてしまっただった男性と、残された3人の娘の物語です。
これぞ、東京に生きた人間の「ザ・昭和」を描いた小説、とでも言ってよいのではないかしら。
表紙からして、私の子供時代に流行ったフラフープです。
主人公の男性は文部省の役人をしていましたが、彼の戦中・戦後を描いたものです。
特に戦後の話は、私がうっすらと覚えているような東京の風景を見事に再現しています。
実は橋本治さんは、私が学んだ都立高校の2年先輩なのですが、昭和の出来事をこんなにもよく覚えているなんて、信じられないくらいです。
ただし、後半、時代が現代に近づくにしたがって、なんとなく物語に魅力を感じないようになりました。
それにしても、橋本さんがお亡くなりになったことは、本当にもったいなかったですね。
もう少し、彼の他の現代小説を読んでみることにします。
中野 翠著「いちまき」
中野さんも、だいたい橋本さんと同世代の方です。
彼女のエッセイはいつも見事ですが、これはその路線ではありません。
彼女のひいおばあさんが主人公。
安政時代に生まれたというおばあさんや、その家族のお話です。
ちなみに「いちまき」とは「一巻」であり、一族とでも言うようです。
中野さんは、この家族の話を書くことによって、中野さんは「私は何かに操られている」と感じたそうです。
私自身も、父や母の生まれた場所(上野と京橋)に足を向けるたびに、「こういう繋がりがあったからこそ、私は今、ここにいるのだ」と思うことがたびたびです。
他の人が血統とか、家族のつながりとかを重視したりすると、ちょっとうさん臭く感じることもありますが、これは別です。
中野さんのひいおばあさんが、桜田門のすぐ近くで生まれて数奇な人生を送った、というだけでも、興味深いですね。
山本 有三著「路傍の石」
これは「山本有三記念館」を見学▼した後に、読んでみました。
「路傍の石」は、小学生の時に、学校から連れられて行った映画で見た記憶があります。
その時の主人公は池田秀一だったかしら。
それで「路傍の石」は少年が主人公の物語だと思っていましたが、この小説を読むと、青年時代までの話なのでした。
元は1937年(昭和12年)の作品ですが、山本有三は、そのころの言語統制に抵抗して、物語を途中で打ち切ってしまいます。
ですから、未完の作品でもあるのです。
もうちょっと最後まで読みたかったな、と思います。
堀内 永人著「江川太郎左衛門の生涯」
これは「韮山反射炉」見学▼した後に、図書館で探し出した本です。
まだ全部読んでいませんが、「代官」というと時代劇に登場する「悪代官」を思い出してしまいますが、江川太郎左衛門は国のことを思い、土地の民衆のことを思った進歩的で科学的な能力の持ち主でした。
子供でも読めるように、難しい漢字には振り仮名が振ってあるので、人名や土地の名前もはっきりと分かって良いですね。
それにしても、江戸幕府末期に、こういう優れた人がいた、というのはすごいことだと思いました。
中原 淳一著「きもの読本」
中原淳一さんといえば、昭和の女の子には憧れの存在でしたね。
私は「ひまわり」や「それいゆ」などを愛読して育ちました。
それはそれは、素敵なファッション雑誌でした。
でも彼は着物にも詳しい人だったのですね。
「日本人には着物がいちばんよく似合う」という発想で、可愛い着物姿や、着物に似合うヘアスタイルをたくさん提案しています。
パラパラと眺めているだけで、幸せになる一冊です。
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