「源氏物語」は紫式部が書いた長編小説で、主人公は光源氏だということは、どなたもご存知だと思います。
ただ、光源氏が主人公だったのは、全体の8割くらいで、最後の10巻は光源氏が亡くなってからのお話です。
では、その部分は誰が主人公になったかというと、二人いて、一人は光源氏の息子(と言われているが、本当は違う)の薫であり、もう一人は光源氏の孫である匂宮です。その二人の貴公子たちと、愛人たちのお話です。ちなみにこの二人は、名前の通り、とてもよい香りのする人たちでした。
今回私が読んだこの「薫大将と匂の宮」という小説は、著者の紫式部が作りだした二人の男性が、恐ろしい事件を起こし、そしてそれを著者である紫式部が解決していくという、何とも変わった推理小説でした。
そしてその小説では「宇治十帖」といわれる巻に登場するヒロインたち(浮舟、中の君)や、主人公の一人である匂宮も次々に殺されてしまい、薫が殺人犯に仕立て上げられてしまうのです。
そしてまたおかしなことに、文中には紫式部がすごく嫌っている清少納言まで登場するという賑やかさ。
よくもこんなおかしな物語を作り上げたものです。
この小説は 岡田鯱彦という人が1950年に書いたもので、今年2020年に創元推理文庫から出版されています。現代の小説ではないので、文章がなんだか読みにくいのですが、発想は面白いですね。
読んでいくうちに、本当に薫や匂宮がこの世に存在していたかのような錯覚を覚えてしまいそうになります。
「宇治十帖」は、私が読んだ限りでは、なんとも中途半端な終わり方をしていて、本当にこれで終わりなのか、とずっと思っていました。
それが一応、終止符が打たれたわけです。
ユニークな小説でした。
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「一日一句」
秋の夜の長きを楽しむ源氏もの
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