2020年11月17日火曜日

「洛中洛外画狂伝」

谷津矢車さんという人の「洛中洛外画狂伝」を読みました。

これは狩野派の画家・狩野永徳の青年時代の物語です。

永徳の物語と言えば、山本兼一さんの「花鳥の夢」▼が有名ですが、山本さんの小説は永徳が有名な絵師になってからの話ですが、こちらの小説はまだ少年時代から始まります。

絵師の家に生まれた源四郎(永徳)ですが、絵はものすごくうまいのに、家業として絵を描くのは嫌いでした。それは粉本というお手本通りに描くものだったのです。彼は自分なりの絵を描きたくて、父親に反発します。才能のある息子と、才能のない父親の対立は、いつの時代にも存在するテーマでしょうね。

そこに彼を手助けしてくれる人たちが登場して、彼は一流の絵師になるというお話です。

永徳が、タイトルでもある「洛中洛外図」をどのようにして描いたか、の謎解きも面白かったですね。今ならたぶん、クローンでも飛ばして、そのデータをもとにして絵を描いたかもしれませんが、彼はこの寺、あの寺、というように足で稼いで描いたのでした。

彼をサポートしてくれる人物の中で、足利義輝という室町幕府の将軍の存在が面白かったですね。

この人は13代将軍ですが、テレビの「麒麟が来る」にも登場した人物だそうです。

「洛中洛外画狂伝」は、ストレートに生きる源四郎をストレートに描いていますが、もう少し、こなれたところも欲しかったかな。というか、読んでいて、アニメのような感じがしました。アニメならこれで良いと思いますが、小説だともうひとひねりあると完璧だと思いました。

それと永徳がもう少し年をとった時の様子も、読んでみたかったと思いました。

とはいえ、著者の谷津さんという人はまだ30代の方で、私の娘と同世代です。そう思うと、その割にはほんとうに良く描いていると思いました。

今は彼の出世作である「曽呂利」を読み始めたところです。

私は、気になる作家を見つけると、その人の作ばかり読んでしまう傾向がありますが、彼もそういう存在になりそうです。

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「一日一句」

初冬の日同じ歴史を読み直す


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