「利休遺偈」は、この前読んだ井ノ部康之(いのぶやすゆき)さんの「利休再興」▼に続く「利休」シリーズものです。
タイトルの「遺偈」は「ゆいげ」と読むんだそうです。
そんな難しい言葉、初めて知りましたが、お茶をされる方にとっては大切なもののようです。
簡単に言うと、利休が切腹した時に残した辞世の句を書いた遺言のようなもの。
人生七十 じんせいしちじゅう
力□希咄 りきいきとつ
吾這寶剱 わがこのほうけん
祖仏共殺 そぶつともにころす
提ル我得具足 ひっさぐるわがえぐそく
一太刀 ひとつたち
今此時そ天に抛 いまこのときぞてんになげうつ
天正十九仲春二五日
利休宗易居士
という内容です。
そんな大切なお宝なのに、ある時、行方不明になってしまって、仕方なく代用品を使用していましたが、表千家の7代目如心斎がそれを探し出すまでの物語です。
いったいどこへ行ってしまったのか、彼は執念深く追い求めます。
遺偈は、結局、江戸の豪商・冬木家(あの尾形光琳が小袖を描いたという家だと思いますが)に保管されていたのですが、それを取り戻すまでの家元の苦難が描かれています。
シンプルなお話なのですが、取り返すまでのいきさつのあれこれもあり、また表千家・裏千家の家族の物語としても読めて、面白い小説でした。
この7代目という人は、いろいろと茶道のやり方を変えた人でもあったようです。
つまり茶道にあまりに人気が出てきて、誰もかれもが茶道に興味を持ったとき、今まで通りの教え方やお稽古の仕方では間に合わなくなり、新しい方法を考え出した人でもあります。
茶道をされている方には、常識になっている話かもしれませんが、私はこういう裏話は好きです。
それにしても、家元って大変なんだなぁと思わざるを得ませんでした。
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