2020年6月11日木曜日

「野の花巡り」3 ムラサキシキブ

先日参加した、水生植物園の「野の花巡り」▼ですが、意外な草花に出会いました。

「ムラサキキシブ」です。
紫色の実が可愛いお花です。


ムラサキシキブは、秋になると紫色の果実が成るので、その名前が付いたようです。
「シロシキブ」というのもあるそうですよ。

この草花は「可愛い」というイメージが強かったのですが、今回、出あったのは、草花というよりも、樹木と言った方がふさわしいような大木でした。
なんだか別物のようですね。


「ムラサキシキブ」は漢字で書くと「紫式部」となり、「源氏物語」の著者の名前と同じになります。

ところで現在、読んでいるのは「紫式部の生涯」というサブタイトルがついた「散華」の下巻です。


前に、上巻を読んだとき▼、なんだかあまり面白くない、と書きましたが、いやいや下巻になったら面白いこと、面白いこと。

とても分厚い本なのですが、あっという間に読み終えてしまいました。
そうしてもう一度、上巻から読み直しているところです。

この小説を読んで、紫式部に対するイメージが少し変わりました。

彼女は若い時には、父親に付き添って地方(福井)で暮らしていて、結婚したのはもう30代後半でした。
その夫は15歳も年上の男性で、そして宮中で務めるようになったのはもう40歳に近い頃だということです。
若い時から、華やかな宮中で生活していたわけではないのですね。

そして源氏物語を少しずつ書きとめていましたが、それは自分の身の回りの友人に読んでもらうためのものでした。
その原稿をみんなで書き写して、回し読みをしていたところ、次第に多くの人の目に触れるようになり、中宮も面白がって読むようになりました。

そんな紫式部の人生が、とても丁寧に描かれている小説です。
その中には、藤原一族の血族の争いや、さまざまな人間関係が描かれています。

面白いのは、清少納言との出会いが数か所あるところです。
彼女は非情に強くて、イヤミな女性として描かれています。
紫式部とは4歳年上とのことです。

そして、紫式部が源氏物語をどのような気持ちで書いたかを、著者(杉本苑子さん)が代弁しているようなところもありました。

当時は、いわゆる平安朝の優雅な時代とはいえ、地震、火事、疫病などの災害が多く、人々は加持祈祷で無事を祈ることしかできない時代でした。
天皇や皇后のような高貴な人でさえ、宮中は火災で消滅して、仮住まいをするような状況でした。
そのような時代の中で、光源氏という架空のヒーローを作り上げ、多くの女性たちを登場させて、いったい何を伝えたかったのか。
そしてまた「宇治十帖」は何とも中途半端な終わり方をしていますが、あれはいったい何だったのか。
正解は書かれてはいませんが、血筋や、婚姻関係がモノを言う平安世界の中で、文学少女だった紫式部が描いた小説が、その後千年もの間、受け続けられてきた熱い心情が、伝わってきました。

そんな紫式部さんのイメージとはまるで違ったムラサキシキブでした。

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「一日一句」

これがあのムラサキシキブか花巡り

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