素人が始めた「源氏物語を楽しむ会」ですが、今回でなんと60回目となりました。もう5年も続けているわけです。
こちらは会場として借りている世田谷区の施設です。ここも5年間お世話になっているのですね。
さて今回の「玉鬘」ですが、割と内容が濃くて、面白い場面がいくつかありました。
ちょっとだけご紹介してみます。
1.玉鬘の高い教養について
筑紫国から都に上ってきた玉鬘(光源氏のかつての彼女と、頭中将との間にできた娘)ですが、ひな育ちの割には、とても教養がある女性であることを示す場面がありました。
それは初対面の光源氏が「あなたとは長く分かれていたが、積もる話もしたいのだが、どうしてそんなによそよそしいのですか?」と彼女に尋ねました。
すると玉鬘はある和歌から引用して「足もまだたたないうちに田舎に落ちてしまったので、何もかも頼りないのです」と答えました。
実はその和歌は、「倭漢朗詠集(わかんろうえいしゅう)」という歌集にある歌を引用したものだったのです。
この「倭漢朗詠集」は平安時代の代表的な歌人である藤原公任がまとめたもので、日本の和歌や中国の漢詩を集めたデータベースのようなものだそうです。
有名な白居易の漢詩や、「君が代」のもとになった歌も入っているそうです。
そのような歌謡集にある歌を、玉鬘はどうして知っていたのでしょうね。お付きの人から学んだのでしょうか? あるいは母・夕顔が持っていたのでしょうか?
私達の会のメンバーのUさんは、書道をされていますが、この和漢朗詠集の中の歌を、書道のテキストとして使用されることもあるそうです。
倭漢朗詠集は、現在でも読むことができます。
どんなものか、図書館で借りてみようかな?
2.光源氏のいやらしさ
玉鬘は光源氏の実の娘ではありません。それでも彼は他の男どもに、「こんな可愛い娘ができたのですよ」と見せびらかします。その反面、自分のものにしたい、というスケベ心を持っているのです。
中年男のいやらしさがあちこちに顔を出します。
3.女性たちに着物のプレゼント
光源氏がそれぞれの女性たちにお歳暮として着物をプレゼントする場面がありました。紫色、赤色などの鮮やかな反物が仕立てられて、それを着る人の雰囲気に合わせて贈るのです。この場面は、とても美しくて女性には嬉しいシーンだと思います。きっと来年の大河ドラマでも再現されるのだろうと思います。
こちらは漫画「あさきゆめみし」の場面です。
4.貴族の居室について
光源氏が玉鬘に逢いに来る場面で、原文では「渡り給う方の戸を、右近かい放てば、この戸口に入るべき人は、」という部分がありました。
さて、平安時代の戸とはどんな形の戸だったのでしょう?
引戸ではないし、もちろんドアのような形ではないでしょう。
そこで図鑑で確かめたところ、仏壇の扉のような、観音開きの戸ではないかと気づきました。
上のイラストの四隅にあるのが、戸だろうと思います。
こちらはプライベートゾーンなので、キッチンもありません。トイレはどうしていたのかな?
こんなふうにして、私達は源氏物語の原文を少しずつ読んで、当時の衣食住や日本古来の伝統を知るようにしています。指導者はいないので、それぞれが知恵を絞って想像力を働かせて、なんとか続けています。
それにしても、紫式部さんという人は、男心も女心もよく分かっていて、そして賢い人だな、と思いますね。
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「一日一句」
こう読めば 古典も楽し 暑き夏