2013年10月26日土曜日

「紡ぐ × 絹」

以下の3つにはある共通点があるそうです。

 1.着物

 2.日本画

 3.三味線

この3つは私の趣味でもあるのですが、さて、答えはなんでしょう?

実はその答えは「絹」でした。

1の着物と絹、というのはすぐに結びつくとは思いますが、2の日本画は紙ではなく絹に描くということ、そして3の三味線は弦が絹でできているという理由です。


このことを詳しく教えてくれたのは、昨日BS朝日で放送された「エコの作法 紡ぐ × 絹」▼という番組でした。

ご覧になった方もいらっしゃるかと思いますが、備忘録のために、少しまとめてみました。


この番組はウクライナ出身の歌手の美しい女性の方がナビゲーターとなり、見る人を絹の世界に誘いました。この方は「バンドゥーラ」という琵琶に似た楽器の奏者なのですが、日本の伝統文化に興味を持っている方でした。

絹はもちろん蚕からできているのですが、この「蚕」という文字は、「天」と「虫」を組み合わせていることから分かるように、天からの贈り物という意味も含んでいるとのことでした。
蚕から紡がれる糸は、なんと髪の毛の細さの4分の1しかないほどなのだそうです。
そして一つの繭からは1500メートルもの糸が取れるということでした。
不思議な存在ですね。

さて、繭は乾燥させて、茹でて、そして数個ずつ束ねて絹糸を作るそうですが、絹の特徴はなんといっても軽くて、そして暖かく、発色がよいということです。

ナビゲーターの女性は茨城県結城市を尋ねました。
ここは結城紬の産地として有名なところですが、結城紬は江戸時代に始まったそうです。当時は野良着として使用されていたのだとか。そして初めは男性のものだったそうですが、だんだんと女性も着るようになったそうです。

結城紬の特徴は生糸ではなく、袋真綿というものから手で紡ぐことだそうで、その手法が2010年、ユネスコの無形文化遺産に選ばれました。

結城紬の手順をざっと書いてみると、最初は真綿から糸を紡ぐのですが、これは「つば」をつけながら撚らないで紡ぎます。1枚の着物のためには、紡ぐだけで3ヶ月の時間がかかるのだそうです。そして1反のためには、糸はなんと30キロメートルもの長さになるのだとか。

そして次は模様を作るための「設計」があります。この設計図に基づいて、「絣くくり」という、模様を出すために1万回以上も縛るという気の遠くなるような作業があります。

それから染めになります。これは叩き染めといって、地面に糸を叩きつけて、色をしっかりと染み込ませるわけです。

そしてようやく機織りになりますが、これも古風な特別な手法で織るのですが、1日に20センチほどしかできず、1反を織るには3~4か月ほどかかるのだそうです。

このようにして多くの人の手を経てできた結城紬はとても風合いが良く、親子三代にわたって着る人も多いそうです。

最後にウクライナ人女性が結城紬を着ていましたが、とても着心地が良いとおっしゃっていました。とてもきれいに着ていらっしゃいました。

(こちらの写真は結城紬ではありませんが、絹の着物というわけです)

 
さて次は日本画と絹のお話でした。
こちらは山種美術館の美人館長さんが説明されていました。

日本画の材料は岩絵の具、胡粉、絹本とすべて自然のものを用いているそうです。

渡邊香織さんという若い画家の方が登場していましたが、絹を張って、その裏から色を塗っていたので驚きました。そうすることにより、線と色がきれいに合うのだそうです。

光沢のある絹に描くことにより、余白の部分が非常に美しく見えるということでした。
それが日本画の特徴ですね。


最後は和楽器と絹のお話でした。
琴、琵琶、三味線などに使用されている弦は、絹でできていますが、この紹介が非常に素晴らしくて感激しました。


滋賀県長浜市にある丸三ハシモト▼というお店を紹介していました。かつてはここで日本中の弦の90パーセントを生産していたそうです。

ここでは三味線の糸の作り方を写していましたが、弦を作るためにこんなに手がかかるとは思いませんでした。

まずは目方合わせといって、昔ながらの秤で目方を測っていました。
三味線は長唄、小唄、津軽などによってそれぞれ弦が異なり、全部で200種類くらいあるそうで、用途に応じて重さを変えるわけです。

そして撚糸といって糸に撚りをかけるのですが、独特の独楽を回転させて作業をするのですが、なんと4000回くらいの撚りをかけるのだそうです。
そして絹の持つ「セリシン」というタンパク質のためにこの撚りは乾いても戻らないのだそうです。

そして「うこん」で染色をして黄色く染めます。うこんには防虫の作用もありますね。

次に「かきもち」を煮て溶かした糊をつけます。

そして次がすごく美しいシーンでしたが、「糸張り」といって、煮上がった糸をこんどは柱と柱のあいだに張っていきます。
節くれだったところを丁寧に切り取って行きます。

この作業は2週間ほどかかるそうです。

普段何気なく使っている三味線の弦ですが、こんなに大変な作業をされて出来上がるのだとは夢にも思いませんでした。


ほんとうに美しい番組でした。

提供は資生堂でしたが、いつものCMとは異なり、美しくおだやかなCMを使ってたので、気分がよかったですね。





2 件のコメント:

マサ さんのコメント...

着物、日本画、三味線ときたら、共通点はとしちゃんの趣味だとやっぱり思ったわ。
繭から反物になるまでには、きの遠くなるほどの作業があるんですね。
どんなに素晴らしい化学繊維が出てきても、絹のもつ風合いにはかないませんものね。
蚕にも感謝!です。

三味線の弦が絹でできているとは知りませんでした。私は、ほんとに無知だわ(恥)

おおしまとしこ さんのコメント...

本当にいろいろ手のかかる作業を通して、素晴らしいものができるのだと思いましたね。とくに結城紬を紡ぐ時はつばをつけるのが一番なんだそうです。水とかじゃダメみたいね。

今はもうお蚕さんを作っているところはほとんどないでしょうが、昔、杉並区の社会科見学に蚕糸試験場というのがあって、子ども心に覚えています。

三味線の糸は細いのはよく切れるんですよ。でもあんなに大変な思いをして作っているのだから感謝しないとね。