2013年10月25日金曜日

「きりきり舞い」

最近の私の読書傾向は、女性作家による時代小説がメインを締めています。

平岩弓枝さんの「御宿かわせみ」は図書館に置いてある30数冊をすべて読み尽しました。


本来の「御宿かわせみ」は大川端にあるお宿「かわせみ」の女主人るいさんと、彼女のいい人である東吾さんが主人公で、彼らをとりまく人たちもとても素敵な人が多くて、なかなか面白かった捕物シリーズです。
しかし、彼らもだんだん年を取り、ふたりがめでたく結婚して子供が生まれて、そして時代も明治維新となり、ヒロインやヒーローは彼らの子ども世代がメインの新シリーズになると、やはりそれほどわくわく感がなくなったように思えます。
やはり江戸時代の話のほうが面白かったですね。

宇江佐真理さんの「髪結い伊三次」シリーズにしても、だんだんと子どもたちが主人公となっていくのよね。


と、読み手は、いろいろ文句をつけますが、小説家はシリーズを長く続けるのは大変でしょうね。

ということで、平岩さんの「御宿かわせみ」は新シリーズがまだまだ続いていますが、ちょっとお預け。

*****

諸田玲子さんの「きりきり舞い」(2009年)はすごく読みやすく楽しい小説です。
時代小説の初心者にもお勧めです。



主人公は「東海道中膝栗毛」で有名な戯作者、十返舎一九の18歳になる娘の舞ちゃん。
おきゃんで可愛い下町の娘さんです。
そこに奇人変人がからんできます。
お父さんの一九からして大酒飲みで奇行が多いし、住所不定の大変人の葛飾北斎、そして彼の娘でやはり変人絵師のお栄さん、おまけに訳のわからない押しかけ居候の浪人。
みんなおかしな人ばかり。
そんな人たちに翻弄させられる可愛い舞ちゃん。
せっかくのイケ面のお武家さまとの縁談も、奇人たちにぶち壊せれてしまいます。

でもとても楽しくて、おまけに江戸時代の地図がついているので、場所も分かりやすいですね。

私は登場人物に実在の人が入っている小説が好きなので、この「きりきり舞い」は私好みでした。

それに村上豊さんの挿絵がほっとさせられますね。

この「きりきり舞い」は面白いのですが、ただし諸田さんの小説は、すごくいいものと、それほどでもないのとが混ざっていて、波がある感じです。

井伊直弼と彼の愛人が登場した「奸婦にあらず」など、ためいきがでるくらい最高の出来だと思うのだけれど、「お鳥見女房」シリーズは、ちょっと読んだだけで止めてしまったほど、私には合わなかったわ。

でもこれまで読んだのは「犬吉」、「恋縫」、「希以子」などほんの数冊だけ。

美人作家の諸田さんの小説はまだまだたくさん読む候補がそろっているので、これから次々に読むのが、楽しみです。





2 件のコメント:

よーでる さんのコメント...

としちゃん様 こんばんは。
宇江佐真理さんの小説、私も好きです。電車での移動中や、ウンザリする程長い大学病院の待ち時間に読むのにピッタリです。
それに、諸田玲子さんは波があるにも賛成です!「奸婦にあらず」は日経連載中に毎朝楽しみにしていましたが、今連載している「波止場浪漫」は1週間程で読むのを止めてしまいました。不思議ですねぇ。
他に大好きなのは幸田文さんですが、世田谷文学館で「幸田文展」を開催中の様で、会期中に是非行きたいと思っています。随筆に描かれたお着物も展示されているらしく、とても楽しみなのです。
長々と失礼しました。

おおしまとしこ さんのコメント...

よーでるさん、こんにちは。
コメント読んで、とても嬉しくなりました!
宇江佐真理さんのすごいところは、一度も上京したことがないうちに、古地図だけを頼りにあんなにたくさんの江戸の小説をお書きになったことですね。
ご主人が大工さんだそうで、それで彼女の小説には多くの職人さんが登場するのでしょうね。
髪結い伊三次はもちろん、泣きの銀次、切られ権佐、波堂日記、おろく医者、深川恋物語、あやめ横丁、聞き屋与平・・・みんな大好きです。登場人物の顔や姿が浮かび上がってくるようでいいですね。
諸田さんの作品はやはり波があるのですね。最初にいい作品に出会えるとラッキーですが、そうでないとちょっと残念ね。
幸田文さん、青木玉さん、青木奈緒さん、それぞれ素敵な着物の本を書いていますね。私も世田谷文学館には行ってみようと思っていますが、雨続きなので晴れた日に狙っています。
よーでるさんとこういうお話ができて、とても嬉しいわ。
またどこかでお会いできるのを楽しみにしていますね。