2026年3月12日木曜日

「源氏物語を楽しむ会」92回報告 2026年3月

今回の「源氏物語を楽しむ会」はスペシャル・バージョンでした。

この読書会は、これまで8年間ほど続けてきましたが、いつも内輪のメンバーで「原文を読む」ということを細々としてきました。

8年間といっても、私自身は源氏物語に対して教養が深まったり、古典の世界に没頭したり、というほどではありませんでした。平安時代と現代との違いや、あるいは時代を超えた同じような感情が見つかった、といった程度です。(ただし、私以外のメンバーは、源氏物語に対してもっと真面目な思いを持っているはずです)

それ以上に、この読書会では日本の文学や伝統芸術、着物についての情報共有ができるので続けているわけです。

そんな読書会ですが、実は「源氏物語」を面白い角度から研究されている方と出会うことがありました。私は図々しくもその彼女を「源氏物語を楽しむ会」のゲストとして参加していただくようお願いしました。

快く引き受けていただいたのは、Kさんという方です。

Kさんは、もともと「ある香りをかぐと、ある昔の情景が思い出される」ということに興味を持っていたそうです。それは「プルースト現象」と呼ぶのだそうですが、長編小説「失われた時を求めて」(1913)にもそのことが書かれているそうです。

そしてKさんは、「日本にももっと昔からそのような現象を扱った小説があるかもしれない」と考え、日本の古い文学を探ってみました。

そして最初は「伊勢物語」に花橘の記述を見つけ、そして源氏物語にも橘の香の話があることを探し出しました。それは源氏物語の第11帖「花散里」の巻でした。

その巻では、光源氏は亡き父の桐壺院の女御であった麗景殿を、五月雨のない晴れ間に訪問します。彼女は院がお隠れになってからはたよりない身の上になっていましたが、源氏の好意で生活していました。

そして橘の香が懐かしく匂う中、亡き父の桐壺院のことを思い出したのです。

そこには静かに暮らす花散里もいました。彼女は麗景殿女御の妹です。花散里は温和で家庭的な性格で、光源氏の大勢いる愛人の中では地味な存在であり、源氏にとっては安心できる女性でした。

光源氏は、昔の人(父帝)を思い出させる橘の香を懐かしく思ったのでした。

そしてKさんは、「香」が「なつかし」と関連性があると見つけ出しました。

ふーむ、素晴らしい分析ですね。

それから先の研究方法は、ちょっと言葉で表すのは難しいのですが、簡単に述べると「源氏物語の文章をデータ化して、どの用語がどのように使われたか」を数量的に表すことに辿りつきました。

ここから先は、彼女の研究の核心に触れることなので私からはお伝えできませんが、源氏物語を題材とした研究、すごいな~と思わずにはいられませんでした。

「花散里」の巻は、光源氏がまだ25歳頃の話です。だいぶ前に読みましたが、もう一度、読み返してみようと思いました。

写真は牛車から、屋敷の中で琴を弾く花散里の姿を眺める光源氏の姿です。

(國學院大學図書館「源氏物語 嫁入本」より)

この後、光源氏は須磨に流されるのでした。

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実はこの日は、東京でも朝からかなりの雪が降りました。東京では3月の雪は珍しいかもしれません。それで着物着用は諦めました。

この日は時間が足りなくて、みなさんの写真を撮るのも忘れました。

おまけ:こちらは「楽しむ会」の後に、メンバーと一緒にいただいたランチ@ガストです。

鶏の唐揚げに、なんだか不思議な味のソースがかかっていました。