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2018年12月26日水曜日

絵がうまくなる?ワークショップ

さて、この絵は何でしょう?
ピカソの絵ですが、上下、逆向きですね。


実は、これが絵が上手に描ける秘密なのです。

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私はごく小さな頃、家でよく「お絵かき」をして遊んでいた記憶がありました。
それも同じような女の子の絵ばかり描いていました。
少女漫画の主人公のような絵だったと思いますが、そこそこうまく描けていたような思い出があります。

それが小学校高学年になった時、図工は専科の先生が教えることになりました。
一緒のクラスに、とても観察力に優れて、細かい絵を描く男子生徒がいて、その子は、いつも図工の先生に褒められていました。
私にはとうてい描けないような丁寧な絵でした。
それ以来、そういう絵を描くのは自分には無理だと思い、絵を描く興味が失せてしまったようです。
小学校、中学校は図工の時間はなんとか普通に過ごしていましたが、高校の芸術科目は選択制ということになり、美術は取りませんでした。
ということで、私の長い歴史の中では、絵は見るものであって、自分で描くものではなくなりました。

******

前置きが長くなりましたが、そんなこんなで、ご近所で絵を教えているという方の展覧会に行った時にも、絵手紙の先生の展覧会に行った時も、「教室があるから一緒に絵を描きましょう。是非いらして下さい」というお誘いがありました。
でも、自分は絵が描けないからダメだという意識があるので、絵の教室には行っても無駄だろうと思っていました。
絵を描くということに対するコンプレックスがあったのでしょうね。

そんなとき、脳科学セミナーのお知らせで、「あなたも絵が描けるようになる」という方法を教えていただけるワークショップがあることを知りました。
普通の絵画教室ではないようなので、ちょっと覗いて見ることにしました。


この会は、眼鏡のパリ-ミキがスポンサーとなって、脳科学者の先生たちと共同で行っているニューロクリアティブ研究会という研究会です。


会社の入り口では、眼鏡をかけたキティちゃんがお出迎えをしていました。


今回は20人ほどの方が参加されていましたが、会場にはクリスマスツリーなどが飾られていて、和やかな雰囲気でした。


まず、脳科学の専門家である理研の入來篤史先生から「人間と脳と芸術」というお話を伺いました。
動物は感覚と反応で生きているのに対して、人間は言語という象徴を用いていること。
また芸術とは美の追求であること、などの前置きがありました。
そして、動物の段階では脳が発達していないので、ただ食べるだけ、生きるだけという本能的生活ですが、だんだん進化して、脳が大きくなるとともに、それ以外にも生きる目的が生まれてくるとのこと。
また人類も、石器時代より脳の重さが増してきて、道具を使ったりしてするようになったという話を聞きました。
その後は、専門用語でのちょいと難しいお話になったので、ここではまとめきれませんが、30分くらいのレクチャーでした。

実は入來先生の講演は、10年ほど前の2007年に「脳と教育」というテーマでお聞きしていた▼ことがありました。
その時の、お若い頃にされていたという剣道のりりしいお姿が印象的でした。
当時の講演でもサルの実験のビデオを見せていただきましたが、今回もサルが道具を使って学習していく様子を見せていただきました。


ワークショップを担当されたのは、「アート&ブレイン」▼という会を主宰されている斎藤由江先生です。
アメリカの大学で学んだという、変わった方法で絵を教えていらっしゃいます。
3歳の子供から85歳の老人まで、その方法で絵を描くと、みんなとても絵が上達するとのことでした。

私たちが実際に行ったのは、次の3つのパターンです。

1.絵を上下逆さまに置いて、その状態の絵を反対側の空きスペースに写し取る。
  30分かけて、じっくりと描く。
  ↓
  その結果はこちら。
(本来の方向に置き直したものです)
逆さまなので、何が何だかよく分からず、結果的にじっくりと絵を見て描いたからでしょうか、普通に描いた時よりも、うまく描けたかも?


2.右手と左手を180度の位置に置いて、鉛筆を持った手と反対側の手をじっと眺めながら、紙を見ないで、1ミリ進むのに1秒かけてじっくりと手の輪郭を描く。
この方は2回繰り返す。それぞれ5分ずつ描きました。
2回目は袖の布の様子を描いたつもりです。
これは「アイハンドコーディネーション」と呼ばれていて、目の動きと手の動きを一つにする方法だそうで、とても難しかったですね。
何がなんだか分からない絵になりました。
それでも上の最初の方よりも、下の2回目の方がスムーズに描けていました。


3.「ビューファインダー」という透けたアクリル板のようなものに、手を下から当てて、その輪郭やシワなどをじっくりと描く。その後、ファインダーからはずして、同じ絵を描く。

作業中はこんな感じです。
シワシワな手ですいませんが、リアルに描くとこうなります。


そして手を枠から離してみると、こんなふうに描いていたのですね。
なかなか立体的に描けているようです。


この後は、ファインダーに描いたものを、こんどは紙に写し取るという作業がありました。
(写真はありません)

1.2.3のそれぞれの作業をした後は、壁にみんなの作品を飾って、先生の講評があり、また描いた本人が感想などを述べました。
それぞれみなさん、個性が出ていて、とても面白かったです。

私の個人的な感想としては、とにかくこういう体験はしたことがなかったので、かなり疲れました。
とくに2の、首と手を180度の方向に置くというのは、首が痛くなって、早くやめたいと思うほどでした。
またどの方法も、私はよほどせっかちなのか、時間が余ってしまいました。
いくらじっくりと描いても、他の方よりも早かったようです。

でも、それが絵がうまく描けないことの理由だったのかもしれません。
観察力が足りなかったのでしょうね。

斎藤先生のお話では、「絵を描くときは右脳で描く」「ゆっくりと描く」「自分が勝手に見て描いている脳のクセを直して、本来の空間を取り戻す」というようなことが大切だということでした。

本当は、もっと時間をかけて作業を行うのだそうですが、なかなか刺激的なワークショップでした。
ただしこれで私に絵を描くという才能が開花したかどうかは分かりませんが。

お二人の先生、ニューロクリアティブ研究会のみなさまに、お礼申し上げます。

2017年9月22日金曜日

脳の世紀シンポジウム2 「脳を知る」

「第25回 脳の世紀シンポジウム」のレポート2回目です。


さて、染色家でもあり、染織の歴史に詳しい吉岡先生のお話▼を聞いた後は、専門家の話になりました。

まずは、大阪大学大学院生命機能研究科教授の藤田一郎先生の登場でした。
タイトルは「色ときらめきにあふれる3D世界と私たちの脳」

ところが、私はこのところ物忘れの度合いがひどくて、一週間前に聞いたシンポジウムの内容も、もろくも忘れ去ろうとしています。

それでも、講師の先生のシャツの色が、ベージュ色で、焦げ茶色の幾何学模様だったということは、まだしっかりと脳裏に焼き付いています。

それくらい「色」というのは、インパクトがある事柄なのでしょうね。

以前、やはり脳科学の話を聞いたとき、
【「赤い」色の「車」が「走っている」】
という事実を目の前にした時、ほとんどの人は、まず「赤」という色を思い出して、その次に「そうか、あれは車だったね」という事柄を思い、最後に「走る」という動作を思い浮かべる、という話がありました。

私が藤田先生のシャツの色だけは忘れずにいた、というのも当然のことかと、無理やり自分をごまかしています。

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藤田先生のお話は広範囲に渡り、面白い内容でした。
しかし専門的な用語も多く、スピードが早くて、ゆっくりと考えていると次の話になってしまい、理解できたかどうかは自信がありません。
その中で、一番インパクトのあったことは、こういうことでした。

それは「モノには本来は色はない」ということ。

でも世の中には赤やら黄色やら緑、ピンク、などいろいろな色が氾濫していますね。
それは、
◆光と
◆見るということを処理する脳と
◆分光反射率の違い
があるからこそ、いろいろな色に見える、ということでした。

何となく哲学的ですね。
でも真っ暗闇のところでは色は見えない、ということは体験的に分かるので、色には光が必要なのですね。

そして人間の眼は、なんと数万色は識別できるのだそうです。

「色の不思議」ということについても、いろいろと例を挙げて説明されました。

たとえば色には色の明るさという特性がありますが、これが明るい場合と、暗い場合では印象が異なり、たとえば同じ人間の顔写真を見ても、色黒だと男性のように見え、色白だと女性のように見える、ということです。

またfacebookなどでもよく見かけた事例ですが、同じ色のドレスを着ていても、周りの色によってブルーに見えたり、銀色に見えたりすることがありましたね。

それと「金色の不思議」ということも紹介されました。
金色というのは、部分的に見ると、単に黄色だったり茶色だったりするのですが、全体として見ると金色に見える。
そして、てかっているような感じがあると、それだけでゴージャスに見えたり、ぬるっとした感覚も沸いてきます。
金色の持つ光沢感、というのは私たちがアクセサリーを選ぶときにも重視することですね。ただの、のっぺりとした金色では高価なものに見えませんね。

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藤田先生は動物学から研究を始めたそうで、人間以外の動物の視覚についても詳しい説明がありました。
動物の種類により色の見え方が違うというのはよく耳にしますが、「ミツバチ」は特殊で、人間よりも紫外線の外の色まで見えるそうです。
(それでミツバチは、花のミツのありかが分かるのかもしれません→私の感想)
つまり動物が見える世界と人間が見える世界は違うのですね。

脳の話では、サルの脳のことも取り上げていましたが、サルの大脳を切り開いて、平らにすると、そのうちの半分くらいは視覚に関係する部分になるそうです。

また人間の脳の細胞のうち、どの色に反応する細胞かは決まっているそうですが、「赤」に関係する細胞が多いということだそうで、それは吉岡先生のお話にも通じることでした。
「赤」という色が目立ちやすいのは、細胞レベルでの違いなのですね。

脳というのは、かなりベトベトとした物質でできているものだそうですが、脳のどの部分で色が分かるとか、言語が分かるとかなどは現在では細かく研究が進んでいるそうです。

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藤田先生のお話はいろいろあったので、以上は、私が気になったことだけをまとめてみました。
なかなかうまくまとめられませんでした。

以下は、私の感想です。

「赤」い色を見るとメラメラと燃える火を思い出したり、「青」い色を見ると爽やかな気持ちになったりするのか、ということはみな同じではないとは思います。
たまたま同じような環境に長く生きているという積み重ねがあってこそ、そういう感情は共有できるのでしょうね。
人種や歴史によって異なるのは、どちらが良くて、どちらが悪いということではないと思います。
双子が違った環境で育ったときのその後の研究、というのがありますが、時代や環境に寄っての違いはどうなのか、気になりました。

色の話とは直接関係がないかもしれませんが、色から受け取る感覚は先天的なものと、後天的なものがあるということがある程度分かると、たとえば人種による差別なども少なくなるのでは、と思いました。
日本人だけが優れているとか、他の人種は劣ってるということは、簡単に口にすべきことではないでしょう。

また、「光と眼と脳がないと色が見えない」というのは、たとえば生まれつき盲目の人には、色は存在しないのか、という疑問が湧きました。

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吉岡先生のお話と、脳科学の第一線の研究者の話を一度に聞けたのは、ラッキーでした。

ただし、シンポジウムは平日の昼間に行われましたが、会場には専門家のようなレベルの方から、定年退職者のようなおじいさんたち、学生など8割くらいが男性でした。

色の話は、本来はファッションとか、子育てにも関連すると思うので、女性向きでもあるとも思います。
女性向けの企画を立てるのは、なかなか難しいのでしょうか。

研究に性別は関係ないと思いますが、男の人が面白いと思うことと、女性が面白いと感じることは違うのと思います。
「脳研究」というと堅苦しい感じがしますが、女性研究者にも頑張ってもらい、身近な研究をしてもらえると、いいですね。



2017年9月19日火曜日

脳の世紀シンポジウム1「日本の色を鑑る」

先日、第25回「脳の世紀シンポジウム▼に出かけました。


去年は、「食と脳」というテーマ▼でしたが、今回のテーマは「色と脳」でした。

今回は午前中しか参加することができませんでしたが、聞いた講義だけ、ちょっとまとめてみます。

ちなみに参加できなかった午後の部は、以下の講演がありました。

脳を守る 「失われた空間」 石合純夫先生(札幌医大教授)
 
脳を育む 「iPS細胞による網膜再生医療」高橋政代先生(理研)
 
脳を創る 「人間と機械の質感認識」西田眞也先生(NTT科学基礎研究所)

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最初は特別講演で、京都で江戸時代から続く染屋「染司よしおか」五代目当主・吉岡幸雄さんのお話でした。

(吉岡さんは著名な方なので、もっとよくご存じの方が多いと思いますが、直接お話を聞いた者として、少しだけまとめてみましたので、ご了承下さい。)

吉岡さんは大学卒業後は美術出版のお仕事をされていましたが、その後、生家である染物屋を継ぎました。
日本伝統の天然素材を使った染色と、そして染色の歴史に深い知識と見識をお持ちで、著書もたくさん出されている方です。

そのような講演があるので、会場のロビーには、染色された美しい絹糸が展示されていました。


吉岡さんは最初に、ご自身は「色」の専門家ではなく、「彩」の専門家である、と言って笑わせました。
「色」というと、本来は男女の道を指すのですが、「彩」は木や草や花のもつ色を表す、ということでした。

吉岡さんはその植物染めをされています。
いろいろな植物から染められた絹糸は、見事な光沢で、ほんとうに美しい色でした。
写真の真ん中の列には、その材料となる植物が置かれていましたが、このような木や葉から、色がつくことを見つけたのは、大昔の人の知恵ですね。


染の起源は、大昔、類人猿がサルに進化したころ、顔に赤いものを塗っていた、という証拠があるということでした。
それは化粧して美しくなるため、というよりも威嚇のために赤く塗られていたそうですが、原始時代から「赤」は特別な色とされていたそうです。

またエジプトでも、紅花を使った口紅を使っていたという歴史があったそうです。

日本では、縄文時代から土器に赤い色を使っていたことも分かっているそうです。
その後、古墳時代になると、死者を再生させたいという希望のために、古墳の内側に赤い色を塗ることもありました。

吉岡さんによると、「赤」はすべての色の原点ではないかということでした。
それは太陽が地平線から上がる瞬間の色であり、「アガル」が「アカ」になったのでは、というお話もありました。
また血の色である赤は、人間の脳を刺激する色ではないか、というお話でした。

(蘇芳の赤)

(日本茜の赤)

その後は、たくさんのスライドを見せていただきながら、色についてのお話が進みました。
まず最初は縄文式土器を見せていただきました。
これには赤と黒が塗られていましたが、赤は鉄のさびから、黒は焚火の墨を利用していたそうです。

弥生時代の土器は、はにわの眼のあたりが、赤く塗られていたそうです。
卑弥呼の時代には、朱と丹の赤が使用されていた、と「魏志倭人伝」に書かれているのだとか。

飛鳥時代にはさまざまな色が藤樹しますが、正倉院には数多くの茜色のものが保存されているそうです。

(紫根の紫)

その後、平安時代、鎌倉時代、戦国時代にも、人々の衣装には「赤」が使われてきました。
上杉謙信、家康の衣装なども、男性のものとは思えないほど、美しいものでした。

(蓼藍の青)

吉岡さんは、日本の色というと、「わび」とか「さび」のようにくすんだ色を想像されることがあるが、本来の日本の色はもっと鮮やかな色だった、と指摘されました。

(刈安の黄色)

昔のものを修復する際に、化学染料で修復すると、それは発色がよくて美しい色になります、それ以前に植物で染めた色の方が退色がなくて、持ちがよいそうです。

吉岡さんのお話は、染色の歴史がよく分かり、興味深いものでした。
「源氏物語千年紀展」▼の時も、源氏物語の色を再現されました。
私もそのイベントには足を運びましたので、どこかで吉岡さんの展示を拝見させていただいたことだと思います。

その後、図書館で吉岡さんの著書を借りて読んでいます。
その中で、紙についても書かれていますが、たとえば和紙に書かれた文字は千年ももつのに、今の印刷物はいつまで持つのだろう、ということもありました。
便利になって大量生産できることと、不便でも長持ちすること、それは私たちが選択しなければならないのかもしれませんね。

吉岡さんは訥々とした表情でお話されて、ちょっと頑固職人気質という感じの方でした。
ご自身で染められたと思われる藍のシャツを着ていらっしゃいました。
今の若い世代には、言いたいことをたくさんお持ちのようにお見受けしました。

会場には、脳科学とはちょっと無縁のような、吉岡ファンの着物姿の方もいらっしゃり、目の保養をさせていただきました。
私は着物で参加できずに残念でした。


(次の講演の藤田一郎先生のお話は、また別にアップします)

2017年5月18日木曜日

市民カレッジ 「芸術を創る脳」2

2回目の「芸術を創る脳」は、将棋がテーマでした。
サブタイトルは「なぜ将棋は奥深いのか」です。
初回の様子はこちら▼


将棋が芸術にあたるかどうかは、私には判断できません。
ただし、芸術的な側面も、あるのかもしれません。

講師の先生によると、
≪芸術とは美の追求である≫
ということだそうで、
そしてその≪美≫とは
1.単純であること
2.対称性がありバランスがよいこと
3.意外性があること
を満たしていることだそうです。

そして将棋はその3つの条件をすべて満たしているあるからして、美である。
したがって将棋を芸術と呼ばなくてなんであろう、とお考えになるのでした。

ふーんそんなものかなと思ってしまいそうです。
この論法はちょっと無理がないかな、と思いましたが、いかがですか?

また前回の講義でも分かるように、先生はクラシック音楽にも造詣が深い方のですが、将棋と音楽には共通点があるとのことでした。
それは将棋は二人で交互にさしていき、最後には「詰み」というフィナーレを迎えることが共通であるとのお話でした。

でもそれは将棋でなくても、たとえばテニスとかレスリングとかでも同じではないですかね?

というつっこみはさておき、先生は脳の話をするよりも、「9マス将棋」いう将棋本から例題をあげて、みんなに「この問題を解いて下さい」と言うのですよ。

えー、私は将棋にはいろんな駒があって、それぞれの動き方がある、という程度は知ってはいますが、どうやって勝負をするのかなんてことは全然知らないので、その段階ですでにお手上げでした。
分かっている人は頑張って解いたかもしれませんが、ここは将棋教室ではないのに・・・。

お目当てだった羽生善治さんの話も、なんだかスルーされてしまったようで、私にはなんだかわけのわからない2時間になってしまいました。

現代ではAI将棋や、中学生棋士藤井君の登場、映画などでも将棋は割とブームになっていると思うので、その辺りの解説も少しはありましたが、どうも消化不良になりました。

とにかく先生はご自身の興味がある事柄については、ものすごく早口でお話になるので、ほとんど内容は理解できませんでした。
言語脳科学というジャンルがご専門のようですが、なんとも難解な科学分野である、という印象を受けました。
単に私の頭が悪いだけなのかもしれませんが。

そうそう、徳川家康は将棋が好きで、1602年には大橋宗桂という人が、詰将棋集「象戯造物」を献呈したという話は面白かったですね。

実は私の亡くなった父は、囲碁や将棋はかなり気を入れていた人で、いつも一人でその世界に没入していました。
囲碁や将棋などの勝負事は女子供には分からないだろうと思っていたようで、父から教えてもらう機会はありませんでした。
今にして思えば、子どもの頃にでも少しは教えてもらっておけば良かった、と後悔している私です。

*****

この日の装い。

雨がザーザーぶりで、またその後に歩いて行くところもあったので、着物はさっさと諦めてパンツルックにしました。
無理して着物を着て、濡らすこともないと思っています。
それに着物コートはだいたいもっさりとしてダサいのが多いですから、あまり好きではないのです。


洋服の写真を載せても意味はないのですが、覚え書きとして載せておきます。
10年以上前から着ているワンピース風のチュニックです。
娘が見たらきっと「ダサい」と言いそうなスタイルですね。


2016年9月17日土曜日

脳の世紀シンポジウム 「食と脳」

先日、「第24回 脳の世紀シンポジウム 食と脳」▼に参加してきました。

このシンポジウムは1993年からスタートして、今年で24回目だそうです。
これまで「音楽と脳」、「スポーツと脳」など、興味深いシンポジウムを開催しています。

私は、以前は脳科学関係の仕事をしていたので、主催者からお知らせをいただいたこともあり、また講演内容も面白そうなので、期待して出かけました。


今回のメインは京都の有名料亭「木乃婦(きのぶ)」▼の三代目ご主人による特別講演でした。

美しい日本料理の数々をスライドで紹介されながらのお話を進められました。
このご主人は立命館大学で法律を学んだ後、吉兆で料理の修業をしたという経歴の方ですが、京都大学農学研究科の修士課程も修了されて、またワインのソムリエの資格もお持ちであるというユニークで素敵な方でした。

和食がユネスコの無形文化遺産に登録されて、海外の人もだしのおいしさにも気づいたというお話から始まりました。

京料理は、≪八寸、お造り、お椀、焼き物、揚げ物、焚き合わせ、ご飯≫という献立になっていますが、これも一つのストーリーになっている、ということでした。

そして料理人の思考回路は、「技術と知恵の結集」であると自信を持ってお話されていました。

会場からの質問で面白かったのは、「生野菜は料理と言えるか?」という質問に対して、生野菜だけでは料理でない、塩を振るとか、煮含めなどしてひと手間加えないと、日本料理とは言えない。つまり野菜にドレッシングをかけただけのサラダは、日本料理ではない、と言い切ったことでした。

ちなみに「木乃婦」のお食事は15,000円はするそうなので、そうそう気軽に行けるところではありませんが、一生に一度くらいは行ってみたいですね。

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2番目は生理学研究所の先生の「口の中で辛みと温度を感じるメカニズム」という講演。
専門的な用語が多くてちょっと分からないこともありましたが、唐辛子などの絡み成分を感じるのは、痛みを感じる温度と同じで55℃ということでした。つまり冷えた冷蔵庫に入っているカレーは辛く感じない、というのは実感がありました。

またアイスクリームにミントの葉っぱが乗っているのは、それはミントの主成分であるメントールは5℃で感じるので、アイスクリームをより冷たく感じさせるためにもミントが添えられているのだそうです。ふーむ、なるほどね。

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この後はお昼休みになりました。
食事を食べる気にはなれずに、かき氷をいただきました。
北海道の小豆使用ということでしたが、それほどおいしくはなかったな。
これを今年の夏最後のかき氷にはしたくない、という気持ちになりました。


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午後の最初は、国立精神・神経医療研究センターのお医者さんのお話で、「うつ病の予防・治療のための食生活と栄養」という講演でした。

現在、うつ病患者というのは全国には112万人もいるそうで、潜在患者も含むと500万人くらいいるのだとか。
そしてうつ病は肥満、メタボ、糖尿病などが原因で起こることが多いそうです。

うつ病を防ぐためには、魚などに含まれるエイコサペンタ塩酸(EPA)や、ドコサヘキサエン酸(DHA)などを取り、またビタミンや葉酸、テアニン(緑茶やコーヒー)、ビフィズス菌などをバランスよく取るのが良いそうです。
当たり前と言えばそれまでですが、現代の食生活はバランスが崩れている、ということでしょうね。


その次は九州大学の先生が「味と匂いを数値化する」という講演をされましたが、早口でパワフルにお話になり、とても面白い内容でした。

食べもののおいしさは主観的なものですが、それを客観的に数値化するというお話でした。

酸味、甘味、苦み、塩味、うまみを数値化できる味覚センサーを開発して、ビールやワインなど、それぞれの銘柄で、どの味が多く含まれているかを分析するというのだそうです。
このセンサーはすでにいろいろな場面で実用化されているそうで、たとえばJALのコーヒーや、ローソンの食品にも応用されているそうです。
九州大学ではオリジナルの「鹿児島ハイボール」という飲料も販売しているそうです。

また人の年齢によって味の好みが変わり、たとえば赤ちゃんはビールは苦くて嫌いだが、大人になるとその苦みが好きになるというような当たり前の話も、面白く説明していました。

最後にユニークな「ハイブリッド・レシピ」の紹介をされました。
たとえば牛乳とたくあんを混ぜるとコーンスープの味になり、醤油ラーメンにバニラアイスを混ぜるととんこつラーメンになるということでした。

重さを測るためにはかりがあり、時間を測るために時計というものがあるように、これからは味覚を測るための味覚センサーは活躍しそうです。
また今後は触感(食べもののブツブツした感じやザラザラした感じ)なども数値化する必要であるということでした。

先生の思いは、「おふくろの味」や「伝統の味」を「食譜=食べ物の譜面」として記録して、未来に伝えたいということでした。

*****

最後は東北大学の女性の先生のお話で、「脳と脂質の良い関係~発生発達に必須の高度不飽和脂肪酸~」というお話でした。

脳というのは神経細胞が複雑な突起物を持っているため、けっこう脂っぽいのだそうです。
脳の中の水分以外の物質のうち、60パーセントは脂質なんだとか。
それで、ドコサヘキサエン酸(DHA)やアラキドン酸という脂質が必要だそうで、それらのバランスを崩した餌をマウスにやった場合の実験報告をされました。

かなり専門的なお話でしたが、簡単にまとめると、妊婦の取る栄養によって胎児の脳の神経細胞が減少するということに繋がっていて、これは子どもを産む女性には大切なことだと思いました。

いずれにせよ、人間の身体は、脳を含めて、口から入るものによって構成されているわけです。
食育の重要性を感じました。

*****

この日の装い。

雨の予報もあったので、濡れても良いように1000円のポリの無地着物です。
帯はろっこやのレインフォレスト。
(顔がちょっとコワイ!)


これだけだとあまりに寂しいので、紅型半襟と、玉ねぎの皮で染めた帯揚げをしてみました。
どちらも専門の先生に教えていただきながら、自分で作ったものですよ。




2013年8月22日木曜日

創造する脳 ~女性の直感が世界を変える~

久しぶりに脳科学関係のセミナーに行ってきました。

場所は虎ノ門。
ちょうどお昼時だったので、町には首からカードを吊るしたサラリーマンやサラリーウーマンが、ランチを求めて歩いてました。


会場はビルの13階にある金沢工業大学の東京キャンパスです。


さすが金沢だけあって、受付では石川県の銘菓がずらりと並んでいて、「このうちのお好きなものを2品お取りください」と言われました。赤いだるまちゃん(?)の最中とお煎餅にしました。もちろん金沢のお茶付きです。
写真の左にある赤いものは、丸い紙を自分で折りあげて、器にしたものです。
なかなかオシャレですね。


セミナーは「創造する脳~女性の直感が世界を変える~」というテーマでしたので、
女性の参加者が多いと思っていたのですが、会場のほとんどは大学教授クラスのおじさまばかりで、意外でした。(実は内容はテーマとはあまり直結していませんでしたが。)

さてセミナーは2つの講演があり、一つは脳科学の先生のお話。もう一つは金融関係の先生のお話。どちらも講師は女性の方でした。

結論から言うと、脳科学のセミナーは、それほど難しくはなかったのですが、経済・金融の内容はあまりに難しくて、まるでついていけませんでした。講師の先生は私の卒業した大学の後輩でしたが、同じ大学で学んだのに、どうしてこんなに差がついてしまうのだろう、と思うくらいに有能な方でした。


セミナーの内容をざっとご紹介すると、脳科学の担当は、主に脳の発達や加齢の研究をされていらっしゃる東北大学の大隅典子先生でした。先生は『なぜ理系に進む女性は少ないのか?』という本を翻訳されたので、お話は主にその本に沿っての説明でした。
たとえばノーベル賞受賞者を対象にすると、女性の受賞者は極端に少ないのですが、これは男女の脳に違いがあるのではと考える人もいるそうです。実際にアメリカのハーバード大学のサマーズ学長という人も、「女性の脳は男性よりも劣っている」という発言をして物議を醸し、結局学長を辞任したことがあるそうです。
ただし、さまざまなデータを研究した結果の結論から言うと、男女の脳にはそれほど根本的な違いはなく、それよりも個人の差や国の差のほうが大きい、ということでしょうか。また社会的な刷り込み(たとえば医者といえば、男性の医者を想像してしまうとか)の影響も多くあるとのことでした。
それでも女性特有の面というのもあるようで、たとえばリーダーシップをとることは、あまり得意ではない人のほうが多いそうです。そういう女性の脳から判断すると、アベノミクスで提唱された「管理職に女性を増やす」という方針は、管理職を増やすことが女性の幸せにつながるかどうかは疑問であるというお話でした。

まとめてみると男女それぞれの個性を生かすのが大事、という平凡な結論のようでしたが、いろいろなデータを教えていただきました。

それと面白かったのは、日本の公立大学で、初めて女子生徒の入学が許可されたのは、今から100年前の東北大学の化学と数学だったそうです。
紅花の研究で有名黒田チカ、やはり化学の丹下ウメ、そして数学の牧田らくだそうですが、みなさん理系であったこと、そして女子学生の可能性を最初に見出したのは東大でもなく京大でもなく、東北大学であったというのは、意外でした。
そして現在でも東北大学では女性研究者への支援や、女子高生へのアドバイス(「サイエンス・エンジェル」)などを行っているそうです。もちろん構内には保育園もあるということです。
私は東北大学には2回お邪魔しましたが、そのときにはそのような視点はなかったので、もし次に何かの機会で行けることがあったら、見てみたいと思いました。

こちらはそのロゴマークです。
着物姿の女性が試験管を持っているところがいいですね。
大正時代の「リケジョ」ということでしょう。
これは蛇足ですが、大隅先生のオシャレ感度はかなり高度でした。花柄のワンピースに茶色のジャケット、そして黒のパンプス(白い縁取り付き)というお姿は大学教授らしくなくて、好感が持てました。

大隅先生の「仙台通信」▼


次に経済・金融のお話ですが、担当は金融コンサルタントであり大阪大学で客員教授をしている岩本沙弓さんでした。この方は海外の金融機関にも勤めていたし、日本の銀行のことにも詳しいので、そういう現場で見聞きした体験を話してくれました。日本経済はもちろんのこと、アメリカやヨーロッパの経済にも詳しく、すごい方でした。
それでも私には金融や経済の内容は難しすぎたので、よく理解できなかったのですが、この方の予想では、消費税は来年は見送り、その翌年に一気に10パーセントにするが、その反動で2015年ごろには消費経済は落ち込むのではないかというお話でした。アメリカやヨーロッパもちょうどそのころに経済的問題が発生する時期なので、注意が必要ということでした。
それと、日本国の借金が1000兆円を超したといっても、家計の借金と国の借金は種類が異なるので、一律に扱うものではないので、日本の国そのものはまだ他の国に比べれば、健全であるということでした。

岩本さんのお話の中でも、大隅先生と同様に「女性はリーダーシップをとるのは苦手な人が多い」というお話がありました。つまり女性は出世欲や名誉欲は少ないということでしたが、ただし社会進出することが多くなれば、そういう女性も出てくるのではないかと思います。

岩本さんのファッションは、きっちりスーツでしたが、どういうわけだか足元がナースサンダルのような格好で、これはアウトでしたね。せっかく弁が立つ方なのに、足元だけは気が緩んでいるように見えてしまいました。

岩本さんの公式サイト▼

さて、しっかりとお勉強をしていたのですが、外では雷と豪雨がすごくなってきて、帰宅できるか心配になってしまいました。
まだまだセミナーは続いていたのですが、その後のディスカッションは失礼して引き揚げました。

この日の装いですが、こういうセミナーで白っぽい着物なんぞ着ていたら目立って仕方ないので、濃紺の夏着物にしました。写真では分かりませんが、かなり透け透けです。


でもこの前のカラーコーディネート講座で、私には濃い青は似合わないと指摘されたので、着物から目をそらすよう、ド派手な水色の帯揚げでごまかす作戦にしました。これは去年、娘からの誕生日祝いの品です。

夕方の雷雨にもそれほど濡れずに済んだので助かりましたが、電車の駅に落雷があって、帰宅がだいぶ遅くなりました。今年は何回もゲリラ豪雨にやられています。



2011年2月16日水曜日

日舞と脳科学

今日のタイトルは一見、正反対というかあまり関連がないように思えるでしょ。

日舞は趣味の世界だし、脳科学はサイエンスの世界ですものね。
でも、私には意外と関連があるのかもしれないな、と思った一日でした。

********

今日の日舞は、体験見学を入れると3回目のお稽古でした。

お稽古の時には浴衣を着て踊ります。
セルフタイマーで写していますけれど、立ち方がダサいわね。もうちょっとポーズを取ればよかったわ。


お稽古は2週間に1回なので、前回教えていただいた振りなどすっかり忘れてしまいました。

今日のお稽古は、主に扇の持ち方の練習。

こういう大きな扇を持って踊るのですけれど、持ち方にも何種類かあって、なかなか思うように動かせないんですよ。開くだけでも難しいのよ。「扇の先までが自分の手であるように」と教えられるんですけどね。


言い訳ではないのですけれど、どうも私は空間的要素が必要な学習能力に疎いと思うんですよ。
文字や形のあるものなどは割と理解できるんですけれど、それに動作が加わるとよく分からなくなってしまうの。

扇の持ち方にしても、持つだけならなんとかできても、持ちながらクルッと身体を一回りする動作が入ると、もう手と足の動きがばらばらになってしまい、我ながらぎこちない動きで、サマにならないなーと思っているのです。
目では先生の動きを見ているつもりなのに、自分がやる段になるとよく分からなくなってしまうのです。右足を出すのか、左足を出すのか・・・・。

これって昔からからそういう体質で、テニスはボールの動きについていけないのでサーブは空振りばかりだったし、鉄棒で回ったりするのが不得意だったし、車の車庫入れなんて距離感がまるで分かりませんでしたもの。自分とモノの位置感覚が把握できないのです。

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さてさて、踊りのお稽古の後は、夜は久しぶりに情報学研究所の市民講座に参加してきました。

会場は神保町から少し歩いたところにあります。

テーマは「脳でモノを見る~脳の中に創られる世界とは?~」というテーマでした。
なにやら難しそうなタイトルのお話でしたけれど、この講座を聞いて、先ほどの日舞の謎が少しは解けました。


講師の先生は国際的に活躍されていて、また国内各地の研究会などでもたくさん講演をされているこの業界では長老という立場の方なんですけれど、その先生が一般向きの講演をするというので、会場には300人くらいの人が集まっていました。

視覚関係のいろいろなお話があり、人間の視覚というのは、いかに神秘的で不思議で素晴らしいことなのだという説明がありました。

中でも人間の視覚能力で優れているのは、「手ぶれ」がないことだそうで、カメラには「手ぶれ防止」機能がついていますけれど、人間にはもともと「手ぶれ防止機能」がついているのだそうです。
よくビデオ撮影が下手な人の画像を見ると、風景が流れてしまったりぶれたりしていますけれど、人間の目はそういうことは起こらずにスムーズに見えるというのは、人間に備わった能力なんだそうです。

「なぜこの薔薇が赤く見えるのか?」
そんなお話もありました。


さて、目の中の構造の話や盲点の話、色の識別方法の話などもありましたけれど、視覚と脳の関係の話を聞いていた時、私はふと、日舞のことを思い出したのです。

どうして私は空間的な動きの学習が苦手なのかと! それが分かりました。

つまり脳の中で視覚に関係しているところにも、色や形などを理解する分野と空間を把握する二つの分野があるというのですよ。
色や形の情報を処理するところは「腹側視覚経路」といって頭の横のところにあり、動きや空間の情報を処理するところは「背側視覚経路」という名前で頭の上のほうにあるそうです。(ネーミングが難しいですけどね)

私の脳は多分、この頭の上の方のところがうまく働かないのだろうと理解しました。
つまり自分ではちゃんと先生の動きを見ているつもりでも、型は覚えても動作は覚えにくいというわけが。

なーんて、日舞の動きがすぐに習得できないのを脳のせいにしてしまっています。

講座ではさまざまな錯視(だまし絵?)を見せてもらったり、ぐるぐる回って見えるような幻覚のような図を見せてもらいましたけれど、そういうふうに見えるのは、その人の経験やら学習が投影されている結果のようです。つまり人間って「今までの例からすると、これならこう見えるはずだ」という思い込みが強いのでしょうね。

私は夜道を歩いて帰るとき、いつもある一定の場所で、そこに人間が立っているように見えるところがあるのです。
でもその影は本当はただの木だということはそこを何回も通って知っているのに、そこを歩くたびに私は「あ、誰かいる!」と思って、はっとしてしまうの。それってきっと「ああ、こんな暗い所に誰か人がいたら嫌だなー」と思っている私の心の反映なんでしょうか?

それと常々思っていることなんですけれど、ブログ用に写真を写す時、いつも「あー、自分が感じている通りの写真を写したい」と思っているのに、カメラに写った映像はまるで違っていて、ショックを受けることがあるのです。
「こんなんじゃないの、私が写したいのは!」と思って何回シャッターを切っても、いつも結果には違和感があるんです。
それってむしろ当然のことのようです。
つまり3次元で見ているものを2次元にするのだから違っていて当然なのだとか。

うーむ、今日の講座は1時間のあいだにカラフルなスライドが60枚くらいあって、お話がかなり急ぎ足だったので私の能力ではなかなかついていけないところもありました。専門家の立場からしたら、一般人にいろいろ伝えたいことはたくさんあるのだろうと思いました。

講演の詳細を知りたい方は、情報学研究所のHPに講演のビデオと質問回答コーナーが近日中にアップされると思いますので、そちらをどうぞ。


私にとって印象的だったのは、講師の先生が最後に「いい絵を見て素敵だと思い、おいしい料理を食べてよい味だと思えるような感動できるかどうかは、あなた次第です」と言われたことでした。

自分の感覚を磨くためにはいろいろな体験をしたほうがいい、それが幸せになれることだ、と勝手に理解してしまいましたけれど。

2010年3月27日土曜日

タンゴの後は香水で・・・

さて、本場のタンゴに度肝を抜かれた後は、カヒミ・カリイさんという人が登場しました。
ハーフの方で、歌手の方だそうです。
「遊びが開く創造性の扉」という詩を朗読しましたが、とてもソフトなお声の持ち主で、ゆったりとした気分になりました。

(写真はカヒミ・カリイさんのブログから拝借しました)

そしてお次は場所を移して香水作りの時間です。

タンゴに香水、いったい、このイベント、何だと思います?


実は「創造する脳 未来からの時空を遊ぶ」というフォーラムだったのです。

主催したのは、某眼鏡メーカーが母体となった、ある団体。脳科学の創造的な研究をする人のスポンサーというか、パトロンのような立場なの。ちなみに眼鏡(視覚)と脳科学というのは、かなり密接な関係にあるのです。

そこの社長さんはユニークな方で、ご自分がアルゼンチンに旅したとき、そこでタンゴに出会ってその素晴らしさに感激し、それを脳科学の研究者たちにも伝えたい、というのでこういうイベントを考え付いたようですよ。

ちなみに、昨年のフォーラムでは、能楽堂でお能の鑑賞があったらしいわ。

自由で創造的な研究をするためには「大人にも遊びが必要だ」ということで、いろんな遊びの要素を詰めたみたいですね。男女の愛の出会いをダンスという形に表現したタンゴを楽しんでもらい、またいろんなイベントがある科学技術館で、子供向けのワークショップに参加してもらい、大いに遊んでもらおうということで企画されたのではないかな、と勝手に思いました。

ということで、科学技術館に集まった脳科学者たちが、本来は小学生向きの「香水作り」や「ブーメラン作り」などの企画を実際に体験したり、プラネタリウムで星雲を眺めたりというイベントに参加したのです。

私は仕事柄、こういう脳科学関係のシンポジウムなどの情報が入ってくるので、それで参加したのですけれど、今回は難しい話はなかったので、楽しかったわ。

こちらは香水作りの様子。
白衣を着た理科の先生のような人が、香りのことをレクチャーしているところ。


私は昨年、アロマテラピーの教室に通っていたので、香水作りはお手のものよ。


ここでは、使う香料もアップル、レモン、ストロベリーという分かりやすい表示になっているし、ベースになる香料も「クラシックタイプ」「モダンタイプ」と2分してあるので、初心者でも作れます。それでもふだんは香水など手にしない脳科学研究者のおじさまたちは、四苦八苦していましたね。


私はムスクっぽい香りをベースにして、ミドル・ノートにはフローラルの香りを加え、最後にトップ・ノートに少しレモンを垂らして、なかなかいい香りになりました。それを小さな瓶に詰めて、お持ち帰り。お土産があるのって嬉しいですよね。

こちらはブーメラン作り。おちゃめな若い女性の先生でした。


細長い紙、3枚をこのように切り込みを入れて、重ねて挟み込み、そしてちょっとひねりを加えるのです。


教室でみんなで飛ばしっこをしているところ。名誉教授と呼ばれる方も、みなさん、童心に返っていましたね。


こういうワークショップ体験の楽しさというのは、いつまでも忘れないでしょうね。


その後は、プラネタリウムでは3D眼鏡をかけて星雲を見たのですが、宇宙の広大さにうっとりしました。

他にも子供の喜びそうな装置のあるところで、自由に遊んで過ごしました。

その後は脳科学の先生が「人間はホモ・ルーデンス(遊ぶ人)である」ということをご自身の研究からいろいろとお話しされて、遊ぶということが大切だと力説されていました。


そしてこのフォーラムのメインである、研究助成金の表彰式がありました。
授賞式の進行は、遊び大好きという楽しい先生で、「創造する脳」というテーマには最適の方でした。

そしてこの団体から一人100万円ずつの賞金をもらった人が、喜びの言葉を語ったのですが、みなさん、ユニークな研究ですよ。

どんな研究なのか、簡単に書いてみると、
「思いつく瞬間、シナプスで何が起こるのか」
「美しさを感じる、と美しく創るとの違いは何か」
「乳幼児からの創造性を探る」
「社会性の異なる人々の神経メカニズムを明らかにする」
「心の分子機構への計算理論的アプローチ」

うーん、何が何だかよく分からないのもありますけれど、人間が感動したりするとき、脳の中でどんな変化が起こるのかというのを追求してみたい、という素朴な疑問の解明のために、みなさんあれこれと考えているんですね。つまり、感動する心とはいったい何か、ということを突き詰めるための研究なのでしょうか。

自分にとって遊びとは何か、ということを知るのが大切なのかもしれませんね。


今の私にとっての遊びは、三味線や着物を中心とした江戸時代の文化かしら。
それに読書と映画。これさえあれば、当分ひとりで楽しく遊んでいられます。

写真は科学技術館の近くで咲いていたレンギョウと椿。

科学技術館ではいろいろなイベントをしていますので、入館料さえ払えば、どなたでも参加できますよ。

2009年11月28日土曜日

見て分かることって・・・・

昨日は午後のお仕事はお休みにして、た○くりで行われた「市内・近隣大学公開講座」というのに行ってきたの。

私の住んでいる市の周囲には、なんと11もの大学があるんですって。そんなにたくさんの大学があるとは知らなかったわ。
その大学の先生たちが一般市民のために、分かりやすい講義をしてくれるというシリーズなのです。


今回の講師は、私が3月までいた研究室に4月から赴任していらっしゃったS先生で、「脳科学界の平井堅」と言われるほどかっこいい方なのです。とにかく話が面白い先生なので、どんな講義をされるのか、興味津津でした。

今回のテーマは「ロボットにはまねできない? 人間の視覚のしくみ」

人間の視覚のすごいところというのは

1.文字が読めること
2.顔が分かること
3.物を判別できること

なんですって。

そんなの当たり前じゃん、と思うけれど、もし機械だとしたら、手書きの文字を判読するのも大変だろうし、顔だって横顔になったら誰だか分からなくなるかもしれないし、物だって上下に置いたら分からなくなるかもしれないという程度だそうで、それを難なくクリアーしてしまう人間の眼や脳というのは、ものすごい能力なんだそうです。


そういうお話があって、その後にはいろんな錯視のモデルを見せてもらいました。

会場には定年退職者と思しきおじさま方が多かったのだけれど、こういうものをあまり見慣れていないせいか、「ほほー」とか「ふーむ」などという声が漏れていたわよ。

本来は動いていないものが動いているようにみえる絵とか、本来の色とは違った色に見えたりする画像とか、いくつかのパターンがありました。

錯視画を見た後で、S先生の解説がありました。

ここでその理由を端的に書くのは難しいのだけれど、そういう視覚の勘違いを、「細胞が疲れたからそう見えるのか」とか「あるいは人間の高度な識別作用なのか」ということをいろんな面から説明してくれました。
色のベクトルなんてことも教わっちゃったわ。ベクトルというのは、色を赤、青、緑の3要素の数で表すことなんですけれどね。
でも錯視というのは、脳科学者でもまだあまりよく分からないことが多いんですって。

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ここでその講義の中で、気になったことのご報告。

それは「ホワイトバランス」のこと。
人間の目の能力を説明するために、デジカメを例にとって説明してくれました。

写真を写すときに、私も少しはホワイトバランスを操作してみるのだけれど、でもちゃんと分からないでやっていたの。
納得がいったのは、ホワイトバランスというのは、昼の光、夜の光などの違いによって、本来の色とは違った色になってしまうのを、「本来の白になるように調節すること」ということでした。
私はなんとなく分かっていたような気がしていたのですが、これですっきりしました。
そうか、白がちゃんと白く写るように機械を操作すればいいわけのね。

それともう一つ、バードファンの方にもご報告。

鳥というのは(すべての鳥が当てはまるかどうかは分からないのだけれど)、人間の眼には見えない色(紫外線)が見えるんですって。つまり色を赤・青・緑の3要素ではなく、4要素で見ているそうなの。
どんなふうに見えるのかは鳥に聞いてみないと分からないけれど、そうやってみると、空を飛ぶ鳥を見るのも今までと違ったようになるかもね。


講義の最後には、視覚と脳のつながりというのを説明してくれましたけれど、とにかく複雑なの。ものが網膜に写ってから、それがものとして認識されるまで、実にいろんな経緯があるということです。
それを脳科学者たちは数式で表す研究をしているのだから、大変なものですよね。

私はマサさんちのチェリーちゃんのつぶらな瞳が見えなくなってしまったことを思い出し、何とか治らないのかしらと思いながら、視覚のお話を聞いていたのでした。