さて、今日のブログは結構長いので、適当にお付き合いくださいね。
写真は中身とは関係なく、先日出かけた信州の休日です。

(信州の午後1)
先週の土曜日は源氏物語の追っかけ(?)をして、東京の西の郊外にある日野市というところまで行ってきちゃった。
どうしてそんなところまで?というと、日野市には源氏物語関係の研究をしている実践女子大学短大というのがあり、そしてその校舎のお隣にある日野市民会館というところで、講座が開かれたからなの。
今回の源氏物語講座は、これまでのアカデミックな雰囲気とは違って、源氏物語の映画鑑賞会でした。
ということで地元の日野市民も多く参加していたみたいよ。
何せ、無料の公開講座だから、中高年もたくさんいました。
(私もその一人だけどね)

(信州の午後2)
上映されたのは、戦後に公開された6本の源氏物語の映画。
その映画をDVDで少しずつハイライト部分を見ながら、立教大学の立石先生という方が解説してくれるの。
この先生、たぶん45歳くらいだと思うのだけど、映画オタクなのか、話しぶりがおもしろかったの。
立石先生の源氏物語データベース:映画編 淀川長治先生や水野晴朗先生ばりに、
「あー、このシーン、いいですねぇ」
「ここんところ、ちゃんと見てくださいよ。ほらね」というようなノリの良さなのよ。

(信州の午後3)
さて上映された映画は以下の6本でした。
1.昭和26年に上映された「源氏物語」
主人公の光源氏は
長谷川一夫。
藤壷が
小暮美千代。(濃艶なのよ)
紫の上が
乙羽信子。(すごく可愛かった!)
モノクロ映画だったけど、戦後6年という時に、よくここまでお金をかけてできたもんだと思いました。
2.昭和32年に上映された「源氏物語 浮舟」
これは宇治十帖の部分だけを描いた映画。
登場人物がみんなお歯黒とまゆをぼかしてあって、いかにも平安貴族なんだけど、ちょっとギョッとしたわ。
主人公の薫は
長谷川一夫。
浮舟は
山本富士子。
つまり当時としては絶世の美男美女の大映映画だったんでしょうね。
匂宮は
市川雷蔵。こんなにきれいだったとは!
若くして亡くなったのが惜しいわね。
この頃は戦後の源氏ブームだったそうで、舞台(明治座)やラジオでもあちこちで源氏物語が上演されたそうよ。
3.昭和36年に上映された「新源氏物語」
これは若き日の光源氏を描いたもので、須磨に流されたところでお話は終わるそうです。
光源氏は
市川雷蔵。
桐壷は
寿美花代(高嶋兄弟のお母さんよ、宝塚で活躍)。
朧月夜が
中村玉緒。(お茶目で可愛かった)
葵の上が
若尾文子。(すごくきれいでした)
思い起こせば、もう今から45年以上も前の映画なのよね。
でも女優さんは今でも活躍しているのだから、すごいものね。
4.昭和41年にピンク映画の武智鉄二が監督をして撮った「源氏物語」
このころは映画産業が斜陽化していた頃で、予算も少なかったそうです。
そのせいで、あまり有名人は登場していないのだけど、若き日の
浅丘ルリ子が出演していました。
5.昭和62年に上映されたアニメによる「紫式部 源氏物語」
これは大胆なアニメですごくきれいでした。
アニメだからこそできたというシーンをいろいろ見せてもらったの。
たとえば、六条御息所と若き日の光る源氏のシーン(事が終って、源氏が帰宅するところを御息所がけだるそうに責めているシーン)なんて、ぞーっとするくらいきれいでした。
声の吹き替えは光源氏が
風間杜夫。藤壷が
大原麗子、他にもそうそうたるメンバーが声の出演をしていたの。
この映画は朝日新聞社が100周年記念として制作されたそうよ。
6.平成13年に上映された「千年の恋 ひかる源氏物語」
これはこの前、私もDVDで見ました。
特徴は紫式部が出てきて、それを
吉永小百合が演じていること。
光源氏は
天海祐希、紫の上は
常盤貴子、想像上の妖精が
松田聖子。
海外向けに「これぞオリエンタル」ということを強調したくて制作された映画だというそうです。
これは東映創立50周年ということで制作されていたの。

(信州の午後4)
立石先生によると、源氏物語を語る時は、「いわゆる古典的・王朝の美」という視点と、「天皇制」からの考察は避けられないというのよ。
つまり源氏物語というのは、十二単とか牛車とか蹴鞠のシーンのような、きれいきれいな日本の美を語るには十分なものがあるのだけれど、でもそれだけで終了するものではないというの。
つまり、天皇の奥さま、つまり皇后と義理の息子が密通しちゃってできたその子供が、天皇になるという、いわゆる戦前なら「不敬事件」ともいうべきストーリーからは絶対に逃げられないものが潜んでいるというわけ。
そういう物語を映画化するには、表面的な日本の美をいかに美しく撮影するか、つまりいかに俳優さんを美しく撮るか、というのも重要であるということ。たとえば光線をどのように当てるかとかね。
そしてまた、天皇制を避けて知らん顔して脚本するか(つまり天皇の姿はいつも後ろ姿ばかり)、あるいは天皇制に正面からいどむのか(4の武智鉄二監督のものなど最たるもの)によって、映画の質も違ってくるという指摘をしていました。

(信州の午後5)
これだけたくさんの源氏物語の映画を一挙に見ることができたのは、ハッピーでした。
会場に来ていた多くの熟年層の方にとっても、昔の思い出を引き出してくれたひと時だったと思います。
こういう研究をしている立石先生というのも、すごい方だわと思ったわ。
こんなふうにいろんな角度から研究できる対象になるということは、やはり源氏物語は奥が深いな~。