次のシリーズトークは「脳と教育」と銘打って9月1日に東銀座の時事通信ホールで行われた。
教育というと誰でも一言コメントができる割には、ちゃんとした説明がしにくいもの。
そういう難問をナビゲートしたのは生物の進化の歴史などを研究している佐倉統さんという東大教授。
ゲストはプロの棋士に能楽師、小学校の先生二人と理研BSIの研究者。というのでどうしてこういう人選をしたのかしらと思うほど、話はあちこちバラバラに飛んだのだ。
ゲストの中で、さすがと思ったのは重要無形文化財保持者という能楽師の方の振る舞い。
初めに謡をして、その後に踊りを披露してくださったのだが、背筋はピーンとしているし、
扇のさばき方とか、足をトントンと鳴らす動作とか本当に優雅で美しい。
背筋がぞくぞくするような緊張感がみなぎっていた。
面白いと思ったのは、その能楽師の振る舞いに誘われてか、BSIの研究者が若いときに親しんだ弓道の振る舞いを再現したこと。20年くらいされていなかったそうだが、昔取った杵柄、というのはこういうことなんだろうな、と思わざるを得ないほど、すっきりとした動きをしていた。
結局、トークでは小さいときに習ったことは忘れない、といういわば、当たり前のことが結論となったようだ。将棋にしても能楽にしても20歳くらいまでにその先が決まってしまうことが多いというのは厳しい話だ。
子供のしつけや教育は臨界期(ちょっと専門用語だが)に習得しないとだめ、ということで、もう子供が大きくなってしまった私にはがっくりとした結論であったのだ。
しかし理研BSIの3人の研究者の発表は脳のしくみを知るには面白い内容で、とくにサルがどのようにして道具の使い方を覚えるようになるかの実験をビデオで見せてもらったのが、私にとってはとても印象的だった。
この研究は脳の前頭葉の研究らしいのだが、実験がうまくいったときのサルの表情がすごくいい。
「おれ、やったじゃん!」と誇らしげ。そういう体験を子供にもさせてあげたいね。
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