2010年10月19日火曜日

宮尾本 「平家物語」

宮尾登美子さんの「平家物語」全4巻をようやく読み終えました。
一冊の厚みが3センチくらいほどもある分厚い文庫本でした。
読み応えがありましたね~。


宮尾さんは私の大好きな作家の一人で、「櫂」「一絃の琴」「篤姫」「鬼龍院花子の生涯」「岩伍覚え書き」「寒椿」「序の舞」「朱夏」「松風の家」「きのね」「東福院和子の涙」「蔵」「仁淀川」など著作はほとんど読んでいましたが、この「平家物語」はあまりにも長いので避けていました。

でも少しずつ読んでいくうちに、宮尾さんの平家物語は単なる歴史小説、軍記もの、というだけではなく、宮尾さん独特の「女の目」でとらえた平家物語であることにぐんぐんと魅かれていき、読破することができました。

平家物語はいわずとしれた平清盛を中心とした平氏の物語ですけれど、この本は清盛よりもその奥さんである時子や、彼女の娘たち、息子のお嫁さんたちを中心とした物語です。そして平家の栄華の絶頂から源氏に滅ぼされて都落ちをして、ついには海のもずくとなり消えていく姿は、涙なしには読めないものでした。こういうのが本当の大河小説だと思いました。

平家物語には、高校の古典の授業で習った富士川の先陣争いとか、那須与一の話もありますが、それよりも女性たちの話の面白いこと。
それというのも宮尾さんは登場する女性たち一人一人に名前をつけてあげたことが、彼女たちのことをより身近に感じるようになったのだと思います。原本では「女御」だとか「北の方」などという身分や肩書で呼ばれていたり、単に「女」としか書かれていなかった女性たちを、宮尾さんはそれぞれ「明子」とか「てこな」などという名前を与えています。それだからこそ文中の彼女たちがいきいきとした存在に感じられ、現代の私たちにも胸打つものとなったのだと思います。
こういう書き方をした古典をもっと昔に読んでいたら、私の人生もどんなに変わっただろうと思わずにはいられません。

いつか一度、平家の人々の信仰の対象となった安芸の宮島や、最期の地である壇ノ浦に行ってみたいものです。彼女たちが参拝し、そしてずっと見つめていたであろう瀬戸の海をしみじみと眺めて見たいと思います。

この本にも宮尾さん独特の文体である、「それは・・・・だったであろうか」という文章もあちこちにでてくるので、宮尾ファンにとっては嬉しいものです。

おととしは源氏物語に取りつかれたようにたくさんの源氏本を読み漁りましたが、今のマイブームは「平家」になりそうです。「吉村昭の平家物語」という本を読み始めました。
これは1冊に収められているので、かなりダイジェスト版だと思います。

本を読むのは本当に楽しいことです。

2 件のコメント:

さと さんのコメント...

としちゃんの読書量は並はずれてますよね。
いつも凄いなぁと感心しています。
何分の一でも真似したい(苦笑)
解説を読みながら私も興味がわいてきます。
長いのはたぶん難しいと思うのでわかりやすくて読みやすいものを紹介してね。

吉村昭さんの本を読んだらまた感想聞かせてね。
ダイジェスト版なら私でも読めるかも(笑)

おおしまとしこ さんのコメント...

さとさん、吉村昭さんのはダイジェスト版ですけれど、はっきり言って面白くないわ。筋書きだけを追っているようで、宮尾さんの本のような心理描写や色彩感覚がないのよ。やはり長編は長編のまま読むほうがいいかな。
私のお勧めは吉屋信子さんの「女人平家」です。これは女性が多く登場するし、それほど長くないからお奨めよ。だいぶ前に読んだのでまた読み返そうと思っているところです。