DVD屋に行くと、足が向くコーナーは決まっていて、「思い出映画館」という昔の映画ばかり置いてあるところです。
そこに、名監督と言われる人の映画がまとまってあるのだけれど、溝口健二監督というのに目が行きました。
今まで名前だけは知っていたけれど、どんな映画を作っていたのか知らなかったの。
初めに見たのが「雨月物語」。
上田秋成が江戸時代に書いた原作を映画化したもので、1953年の大映の作品でした。もう57年前なのね。
話の内容はだいたい知っていたのだけれど、人間の欲望を真正面からとられた優れた映画だと思いました。
戦国時代の物語です。
主演を演じる貧しい夫婦に森雅之と田中絹代。その弟夫婦は小沢栄と水戸光子。
怪しい妖艶な女性が京マチ子という配役です。
もちろんモノクロ映画で、ベネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞した映画だそうで、これで一気に「ミゾグチ」の名前が世界に広まったというそうです。
ストーリーを簡単にいうと、近江の国の琵琶湖の近くに住む貧しい農夫が、金もうけをしようとしてせっせと陶器を作り、町に出かけて売り始めました。そこで出逢ったのが、美しいお姫様。農夫はそのお姫様と大きなお屋敷で生活を共にするようになり、楽しい毎日が続きました。でもその夫の帰りを待っていたはどうなったのでしょう・・・・。そして農夫も気づいてみると、目の前からお姫様は消えてなくなり、まるで夢を見ていたかのようになったというお話。
戦国時代って、私たちが日本史で習ったときには、豪快な武士のイメージばかりだけれども、現実は貧しい人が多かったというのがよく分かりました。そしてその貧しさを溝口監督はリアルに描いています。
その厳しい現実に耐えかねて、男たちは金を求めて町に出かけたり、侍になりたいと言って村から出かけていく。しかし村に残された妻たちは、侍たちになぶり殺されたり、心身ともに傷ついて遊女に身をやつしたり・・・。
これは戦国の嵐に巻き込まれていく女性たちの悲劇の話だと思いました。
画面はゆっくりと動き、じっと観賞するのにふさわしい映画でした。
初めは暗いシーンが多くて、こういうのが外国人に分かるのかしらと思いましたけれど、見ていくうちに悲しさや残酷さというのは、万国共通のものだと思いました。
それにしても女優さんたちの美しいこと。妖怪のような幻想的な京マチ子の美しさはもちろんのこと、田中絹代や水戸光子は汚れ役をしていても、はっとする美しさがありました。
6 件のコメント:
もう何十年も映画はご無沙汰しています。
この写真 どこで入手されたのでしょうね。
文中で 近江の国の琵琶湖の近くに住む
貧しい農夫が、・・・
たぶんジイのじいちゃんかもね^^
としちゃん、昨日ようやく「京まんだら」を上下二巻読みました。
仕事の合い間に少しずつ読んでいたのですが実に面白かったです。
すでに40年近く昔のお話なのに現代に通じるものが多くありますね。
男と女も同じね(笑)
こういう映画もきっと時代は変わっても人間は同じなのかもしれませんね。
京都のよさも改めて感じました。
よい本を送っていただきありがとう。
「雨月物語」ね。有名な作品ですよね。
国際的な映画祭でなにやら賞を受賞したことは知っていたけど、よく考えると映画は見てないかも。
京マチ子さんは、凄みを感じさせるゾクッとした美しさがありますよね。
田中絹代さんは地味な顔立ちで、キレイなんだか私にはよくわからないのだけど、演技のためには歯を抜くこともいとわない、根性ある女優だったらしいですね。
ハッセルぶらっとさん、この映画は50年前の作品で著作権切れのせいか、あちこちに画像が出回っています。
じつはうちから2分くらいのところに大映の撮影所(今は角川大映ですけど)があります。ここで撮影したのかなと思うと、感慨が深いですよ。
ハッセルさんのご先祖様は近江の方だったんですか。近江商人といわれるくらい、商売が上手な人が多いところなんでしょ?
さとさん、「京まんだら」気に入っていただき、ありがとうございました。さとさんなら、いろいろとご縁が深い内容もあるかもしれないと思っていたの。
男女のことは今も昔も変わらないわね。
この雨月物語もそういうお話なのよ。夫婦共働きで頑張って生活していたのに、男だけが町に出かけてしまい、妻は悲しい思いをするの。
マサさん、これは必見の映画だと思うわ。星5つあげてもいいくらいだけど、原作が優れていたという部分もあるかもしれないわね。
でもそれを映画化したのは偉いわ。
田中絹代は美人ではないけれど、役になりきっているのではないかしら。この後、「山椒大夫」も見たのだけど、その汚れ役、ほんとひどくて、普通の女優さんなら絶対にやらないと思いましたね。
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