2008年7月10日木曜日
千年の恋
奈良の旅行記が終了して、京都編を書く前に、ちょっと一息休憩ね。
今回の京都も、また源氏物語関連ツアーだったの。
ということで、光源氏に関係のある映画のご紹介。
「千年の恋」
この映画は2001年に東映映画が創立50周年を記念して作った映画だそうで、「ひかる源氏物語」というサブタイトルがついているの。
ご覧になった方も多いと思うけれど、宝塚出身の天海祐希が光源氏役で、吉永小百合が紫式部役という配役で話題を呼んだ映画。2時間30分ほどの長い映画でした。
映画の構成は、光源氏が登場する源氏物語の部分と、それを執筆している紫式部の周りの人たちの世界を描いた二部構成。
紫式部が、藤原道長の娘・影子の家庭教師役として登場して、彼女をいっぱしの女性に育てあげるために、源氏物語を書いている、という設定のわけ。
最初のシーンが度肝を抜くのよ。
なんと、現代の京都駅近辺(京都タワーとか)を航空撮影しているの。
ふーん、そういう手があったのね、という導入。
さらに紫式部のライバルである清少納言も登場するのだけど、清少納言役はなんと撮影当時は80歳くらいだった森光子。
若作りでがんばっていたけれど、ちょっと無理があったわね。
でも天海祐希の源氏役はさすが、元宝塚のトップスター。
顔がとっても小さくて、10頭身くらいなのよ。
青海波(字があっているかな?)を踊るシーンは、さすがにピシッと決まっていたわ。
その彼女が光源氏となって、いろんな女優さんとラブシーンを演じるわけ。
それって、下手をするとレスビアンになってしまうんだけど、そうは見えないの。
女優さんがみなとてもきれいに写されていて、本当の男女のカップルが愛し合っているように見えたのよね。
でもね、この映画は、本当の源氏物語を知らない人が見たら、「えっ、光源氏ってただのロリコンの女たらしじゃん!」と思うかもしれないわね。
彼の内面の苦悩などは全然描かれていなくて、単なる女たらし。
いろんな女優さんが登場したけれど、私は紫の上を常磐貴子が演じたのは良かったと思うわ。
彼女は好きな女優さんです。
それと60歳に近い色狂いの源典侍役を岸田今日子がやっていたの。
うーん、原作でもかなりの好き者として書かれているけれど、ちょいと下品だったな。
明石の君をしたのは細川ふみえだったけど、なんだか原作のイメージが狂っちゃうわ。
全然きれいに写っていないし、教養もなさそうな田舎の娘なのよ。
須磨に流された光源氏と愛し合うのは海の中。
よく水族館で水中ダンスとかあるじゃない? あんな感じなのよ。
おまけに明石の姫を産むシーンは、なんと水中出産で、びっくりよ。
明石の君は、まるで海女でしたね。
ま、映画だから仕方ないけれど、原作にはない揚げ羽という天女みたいなのが出てくるんだけど、これが松田聖子。
けっこう素敵な歌を歌っていましたけれど、1000年前の紫式部が見たら、驚いたでしょうね。
それに一番のショックは、若いときにはあんなにきれいで、素敵だった光源氏が、最後のシーンで見せた老け顔。
これは見たくなかったな。
だって、光源氏が亡くなるのは50歳くらいのはずなんだけど、映画の中の天海祐希は60歳、いや70歳くらいのおじいさんなのよ。顔中シミだらけで、目もうつろ。
こんなの天海ファンじゃなくても見たくはないわ。
私の想像では、中年になった光源氏はもう少し肉付きが良くなっていて、口ひげを生やしているの。
それが、ずっと後姿だけを見せていて、こちらにぱっと顔を見せたら、細身でよれよれになっているのよ。
ちょっとひどすぎたわ。
天海ファンだったら、泣いてしまいそうなくらい。
それと紫式部を演じた吉永小百合は、なんというか、誰を演じても小百合さんになってしまうのよね。
ちょっと違和感があったわね。
おまけに監督の趣味かもしれないけれど、やたらに少女(小学生6年生くらい)の、裸身があったのは、いやだったな。なんだか痛々しい感じでした。いくら当時は12歳でお嫁に行くといっても、そういうシーンをローティーンの少女にさせるのは、わいせつだわ。
大人の女優さんのラブシーンは、とてもエロティックできれいだったけれど、少女の裸身を見せるのは法律違反じゃないの?
いろいろケチをつけたけれど、源氏物語の大胆な解釈があったし、女優さんたちの衣装もきれいだったし、CGもあったし、面白いと言えば面白い映画でした。
それと、源氏が中年になって娶った女三宮が、柏木と密通して子どもを産んでしまうのだけど、そこはばっさりとカットしていたのも、意外とすっきりしたみたい。
でもそれだからこそ、源氏の苦悩(自分も若いときに義理の母と密通して帝の子どもを産んだと言う因果応酬)が描かれていないので、ただの男の一生に終わってしまったのは残念でした。
いずれにせよ、私にとっては小説より面白い映画はめったにない、というのが結論かな。
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6 件のコメント:
この映画が上映されたのは知っていたけどそのときはあんまり興味がなくて見ませんでした。今はちょっと見てみたい感じ(笑)
配役はイメージがあるから大切ですよね。
としちゃんの解説を面白く読みましたよ。
中々鋭いね。
やっぱり実際どんな感じか見たいわ。
さとさんも、源氏にはまってきたしら?
娯楽映画として見る分にはいいんじゃないかしら。「こんなのありえないよ!」と目くじらを立てるような場面もたくさんありましたけど、ま、天海祐希がきれいだったしね。
「小説より面白い映画はめったにない」
私もそう思うの。
天海祐希の老け役は見たくないかも。
常盤貴子は私も好きなので観てみたい。
としちゃんの
解説で逆に興味をそそられたわ。
天海さんみたいなきれいな人でも、シミがあるとあんな顔になっちゃうのね、と我が身を振り返りましたよ。(とほほ)
唯光や頭中将といった男性軍は、みんな老け顔になってしまうんですけど、それが喜劇みたいでした。
紫式部が最後に福井の海で、網を引いたりするんだから、笑っちゃいますよ。
常盤貴子はいいムードでしたよ。
私は原作に感動した映画は見ないことにしているの。例えば「ナルニア国」とか昔の「カラマーゾフの兄弟」。イメージが崩れるから・・
としちゃんみたいに冷静に見れないな。
でもこういう見方のも面白いかもと思いました。いつもながらさすがです。
私もカンカンと同じように、原作が好きだったら映画は見ないようにしています。でもこの吉永小百合の映画は、どんなふうに描かれているのかと以前から興味があったので、見ることにしたの。自分のイメージとは違っていたけれど、「ほほう、こんな風に解釈できるのね」という驚きもあるわね。
逆に映画に感動して、原作を読むこともありますけど、でもその場合もやはり小説のほうが、すごいと思いますけどね。
小説を書くのは一人の作業だけれども、映像化するというのは、共同作業だし、どこを中心として描くかという脚本力も重要。それに小道具やロケ地などによってイメージが変わってくるから、映画化というのは、大変と言えば大変だろうな。
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