宮尾登美子さんの「錦」。
この本の表紙の画像を見ただけで、着物好きな人はどんな話か、すぐに分かるでしょう。
そう、あの有名な織物やさん、龍村のお話なんですけれど、本の厚さが3.5センチから4センチほどもある分厚い本なのです。でもストーリーの面白さと文字が多少大きいので、2日間ほどで読み上げてしまいました。
実は読み終わったのはだいぶ前のことなのですが、内容に圧倒されて、ついつい感想を書きそびれてしまっていた本です。
宮尾さんと言えば、女性を主人公にした大河小説の書き手としては最高の方だと思うのですが、そんな彼女でも男性が主人公のこの本を書くにあたってはなんと30年間ほども資料を集めたりああでもない、こうでもないと迷いながら書いたのだそうです。
私は龍村の名前とその柄くらいは知ってはいましたが、主人公がこれほどこだわりのある人で、学術的にも見事な研究をした人だとは知りませんでした。法隆寺や正倉院に保存されている貴重な国宝なども研究材料として触れていたのです。
龍村平蔵という人は大阪の生まれで、若くして丁稚となり、そしてこれまでにない技法を編み出し、美を追求し、そして世間の波にもまれながらも一流の織物屋さんとなっていくわけですが、職人気質のためにずいぶんとご本人も周りの人も苦労をしたようでした。
龍村平蔵の人生
この本は平蔵さんの生涯を書いているのですが、やはり宮尾さんの手にかかると、彼を取り巻く3人の女性たちのお話が面白いですね。
いざというときには本領を発揮する立場の本妻さん、芸者上りの美人薄命のお妾さん、そして彼を仕事の面からも公私ともに苦労を共にしてきたお仙さん、この3人の話がすごく面白くてどんどんと引きつけられるので、やはり宮尾さんほど、女性を書かせたら右に出る人はいない、というのがよく分かりました。
私はこの小説を読みながら、本妻のようには賢く振舞えないだろうし、美人じゃないし大人しい二号さんタイプではないし、かといって自分の愛情を抑えながら仕事の片腕となる立場も難しいだろうし・・・・なんてあれこれ思いを巡らせていました。
でももし私がこの龍村平蔵さんの近くにいたとしても、こんな自分勝手な男はご免こうむるかもしれませんね。それほど平蔵さんは仕事の鬼の人でした。
「錦」はとにかく宮尾ワールドが楽しめるし、帯や着物のこともよく分かる本です。
ちなみに「龍村WEB美術館」というサイトがあり、いろいろな織物が楽しめますよ。
4 件のコメント:
としちゃん、ブログが復活してよかったわね。私も、ほっとしました!
で、としちゃん、スミマセン。私は、宮尾さんの本を図書館で何度か借りてきたことがあるのだけど、最後まで読んだことがないの。何がダメなのかなぁ~。今度、この本に挑戦してみますね。
今、私が読んでいるのは、宮本輝の「骸骨ビルの庭」です。宮本輝の描く主人公は、精神が美しいですね。
マサさん、読書の傾向と言うのはひとそれぞれだから、合う合わないがありますよね。
私は宮尾さんの本の中では序の舞とか東福門院和子とか篤宮とか、実在した女性の話が好きですけどね。松風の家とか平家物語もおもしろいけれど、でもクレオパトラだけはちょっと読む気がしませんね。
というか、私は宮本輝さんとはミスマッチのようで、泥の河とか蛍川もなんだか寂しい感じがして、図書館でいつも「宮」のところで「宮本さんとはあまり縁がないな」と考えてしまうのです。
宮尾登美子さんの本は読んでみたいです。
特に実在の人のもの、文庫本探してみようかな。
龍村は有名ですものね。
一度会社に行ったことがあります。
簡単な帯があるようなので見てみたいわ。
でも今は着物よりやりたいことが多くて余裕がないなぁ(苦笑)
それにしてもとしちゃんの読書量はすごいよね。
さとさん、龍村の会社に行ったことがあるんですか。さすがですね。私はこの方は京都の人だと思い込んでいたのですが、大阪の人だというので意外でしたね。
この本は宮尾さんの本にしては割と読みやすいと思いますよ。
私の方こそ、バラにスキーにお料理にカメラにお仕事に忙しいさとさん、いつもすごいなーと思っています。
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