少し前に読んだ本の感想になりますが、有吉佐和子さんの著書2冊についてです。
有吉さんの作品については、専門家でもない私が感想を書くのはおこがましいのですが、好きな作家さんなので書かせていただきます。
たくさんの著作の中で、「紀ノ川」や「花岡青洲の妻」などの有名作ではなく、ちょっとマイナーな本のご紹介です。
こちらは1967年(今から46年前)に書かれた「地唄」。
有吉さんという人はほんとうに才能が溢れる人だった思いました。
「地唄」は短編小説をいくつか集めた作品ですが、ここに登場する人物はすべて和の文化の世界の裏方さんばかりです。
主人公となる人は、地唄舞の三味線弾き、着物に墨絵を描く絵師さん、歌舞伎の黒子、人形浄瑠璃の人形遣い・・・よくもまぁ、こういう世界のことばかり選んで書けるものだと感嘆しました。
文庫本のあとがきには、有吉さんは東京女子大学の学生のだったとき、歌舞伎研究会に属していたので、歌舞伎のことに詳しいと書いてあったけれど、女子大の趣味のサークルにいただけで、これだけ特異な世界のこと書けるわけはありませんよね。
きっと、ものすごい量の取材をしていると思うのです。
でも書かれた作品にはそのような苦労の跡はまるで感じられず、もともとこういう世界で生まれ育ったかのように書いているのがすごいと思います。
やはり有吉さんは天才なのでしょうね。
「地唄」を読んだその後に、同じような傾向の「連舞」(つれまい)を手にしました。
こちらは「地唄」以前の1963年(ちょうど50年前)の作品だそうです。
「連舞」は日本舞踊の家元の家に生まれた姉妹の小説ですけれど、ちょっと通俗的で世間受けを狙ったような小説で、私はあまり好きにはなれませんでした。
物語は太平洋戦争前後の話なのだけれど、戦前や戦中の部分はとても面白く読みました。
でも戦後のどさくさの中、日本舞踊を復活させようとして、舞台でストリップまがいの踊りをしてアッと言わせる、なんていうストーリーで、ちょっとウソ臭い感じかしら。
それにしても有吉ワールドに入ってしまうと、どんどん引きこまれていくのです。
有吉さんがお亡くなりになられたのは53歳のときだったそうです。
今もし生きていらっしゃったら82歳。
もっともっと小説を書いていただきたかったと思います。
有吉さんにしても、森瑤子さんにしても、干刈あがたさんにしても、氷室冴子さんにしても、私が好きな素敵な女流作家の方は、みなさん早死にされてしまうんですよね。
それが残念ですが、彼女たちのように、凝縮された短い人生を突っ走って行くのは、濃厚な人生だったのでしょう。
4 件のコメント:
有吉さんは”好きだけれどあまり読んでいない作家さん”でした。先日偶然文庫本で手にした”青い壺”は楽しく読みました。
青磁の壺が色々な人の間を転々とする話ですが、老女の同窓会の話など、これはもう少し先の私の姿かしら?などと思いながら、笑ってしまい、皮肉のきいた結末にもニヤッとしてしまいました。
”地歌”も読んでみようと思います。
歌舞伎座こけら落とし公演は行かれますか?
全く空席がないので(特に一部)来週にでも幕見の行列をしようかと思っています。80席あるので、早めに行けばなんとかなるかも、です。
Uより
Uさま
「青い壷」を読んだのはだいぶ前のことなので
ひとつひとつは覚えていませんが、壷のつながりでいろんな人が登場してくるお話でしたよね。面白かったことはよく覚えています。
宮部みゆきのなんとかという小説(タイトル忘れました)を読んだ時、「あ、これは青い壷のぱくりじゃないか」と思ったことありましたよ。
こけら落としや屋上庭園は興味ありますが、あまり人の噂になっているときには行かないという天邪鬼なタチなので、そのうちみんなが忘れたころにでもと思っていますよ。
ご覧になったら感想を教えてくださいね。
そうですか、としちゃんは有吉ワールドに引き込まれているのですね。表紙の感じが懐かしいですね。それにしても東京女子大の方々はどうしてこう知的なのでしょう(当たり前か)
有吉さんは歌舞伎?瀬戸内寂聴さんは源氏物語のパイオニアですものね。
私はこのところ瀬戸内寂聴さんを読み返していました。キッカケは本棚を整理しなければならなくなったからなのだけれど・・・「夏の終わり」はやっぱりすごかったです。私、ああこの文と思うところは付箋を貼ってしまうのですが、付箋だらけ(笑)
ついでに晴美と寂聴のすべてなどという自分史も読み返したりして。小杉慎吾さんという不遇の作家との許されぬ同棲が大作家・瀬戸内晴美を生んだのだと思うとなかなか感慨深いです。
森 瑤子さんも「情事」は衝撃でした。心の深淵をあそこまで吐露できますか?
森さんの早逝はしっていましたが、有吉佐和子さんの53歳もショックですね。
としちゃん、気をつけて。私は何も持ってないから長い人生になりそうよ(大笑い)
昨日「わりなき恋」手にいれました。ページ数320頁、どっぷり浸りますか!
ひょっこりさん、作家だけに限らず
優秀な方ってすごく長生きするか、短命かの
どちらかですね。
最近、つくづく思いますよ。
寂聴さん、いつまで生きるのでしょう。
たしかうちの母と同じなんだけど、あの頭の良さ、少し分けてもらいたいわ。
「わりなき恋」ですけれど、やはり岸恵子の臭いがぷんぷんしてきて(当たり前だけど)、ちょっと足踏み状態。
パリだとかプラハだとか、やはり彼女はそういうシチュエーションの話題しか書けないんだろうな。
単なる私のひがみですけどね。
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