自慢ではないけれど、私は本(小説)を読むのがすごく早いのです。早いだけで内容はあまり吟味していないので、すぐに忘れてしまうのだけれど。
その早読みの私が、何回も読み始めても、いつも数ページでつまらなくなって、読むのを嫌になり本を閉じてしまったのが、岸惠子の「わりなき恋」。
だってあまりにもセレブを強調して、鼻について、ばかばかしくなってしまうのですよ。
それでも単行本代金1600円も払ったので、5回目くらいになって、我慢をしてようやく最後まで読み通すことができました。
「わりなき」恋のそもそもの発端は、パリ行きのファーストクラスの座席に隣り合わせに座ってしまったという二人。
それからしてイヤらしいでしょ。主人公はエコノミークラスに乗る一般庶民とは違うのよ、というスタンスです。
そしてその二人(女性が69歳、男性が58歳だっかな)は、二人してプラハやら上海やらあちこちにお出ましになるのよ。
そしてあちこちで高尚な文学の話をしたり、世界史の話などを語り合うのだけれど、すごく嘘っぽい。私たちは教養があるのよ、という臭いがプンプン。
彼女は外国人男性と結婚したことのある高名な映像作家ということになっていて、これは岸惠子本人という噂です。
彼のほうは有名企業の副社長という設定なのだけれど、この彼氏、まるで存在感がないのよ。何をしている会社だかまるで分からないし、奥さんとの間には5人も子どもがいるのに、家庭の臭いのしない男です。もちろんお腹なんぞ出ていなくて、新橋駅でインタビューを受けるようなお父さんとは大違いの男性です。
おまけに二人の間で交わされるメールやラブレターの陳腐なこと。
超多忙の二人なのに、そんなことを書いている時間があるのか、と突っ込みを入れたくなるほど、長々とメールを交わしています。
二人の間のSEXもなんだかしらけてしまいます。
というのも彼女はそれまで長いこと未亡人だったので、久しぶりに男に抱かれても濡れなくて、それで翌日、産婦人科に行って処方箋(ホルモン剤?)を出してもらう、なんていうことまで書いて、バッカじゃないのと思わずにはいられませんでした。
すごく高尚なところと、そういうえげつないところが混在していて、どこまでが岸惠子自身の文章だか、あるいは編集者の助言なのかよく分かりませんでしたね。
この二人、結局は東日本大震災をきっかけにして6年間の付き合いの後に別れるのだけれど、そのへんもあまり理解できませんでした。震災をだしにしているみたいで、嫌だったわ。
岸惠子が美しい女性であることは認めるけれど、何のためにこんな本を世の中に出したのか、気がしれませんね。自己満足なんでしょうか。この彼氏(実在するモデルがいるとのこと)のことを自慢したかったのかな。
この小説を誉めている人も多いようですが、私はあえて「駄作」と言わせてもらいます。
共感できるところが一つもありませんでした。
岸惠子の自己満足に付き合わされ、おまけに文章の構成が悪くて読みづらく、時間がもったいなかったわ。
世の中には「わりない」恋愛というのはたくさんあると思いますけれど、きっともっとひっそりとしていて、表には出せず、心苦しいことがあるというのが、ほんとうの「わりない恋」ではないのかしら。
私は映画にしてもお芝居にしても、ここまでケチョンケチョンにけなしたことはありませんでした。つまらないと思った映画でも、どこかいいところがあるし、いろいろな発見があるものです。
ところがこの小説は、そういうところが少しも感じられませんでした。
ああ、ようやく読み終えてほっとしたわ。
2 件のコメント:
としちゃん、相当な酷評ですね(笑)
私は、図書館に予約を入れていて回ってくるのを楽しみに待っているのだけど、、あまり期待しないほうがいいかしら。
岸さんは、才女ぶるところがありますよね。
「私は、顔だけの女じゃないわ」みたいな。
映画化するとしたら、誰が演じるのかなぁ。やっぱり、黒木瞳かしら。
まさか、ご本人じゃないですよね。
確かに大女優かもしれないけど、以前テレビに出ていたとき、「誰?このヘタな人?」って娘が言っていたもの。
はい、今回は酷評です(笑)。
でも好みは人それぞれですから、マサさんはお気に入りになるかもしれませんけどね。
黒木瞳じゃさすがに70歳の役は可哀想でしょ。ここはご本人ですよ。
それよりか、問題は男のほうだと思うのよ。
誰かが「池部良がぴったり」と言っていたけれど、あの方、もうお亡くなりになったのよね?
60歳くらいの男優でかっこいい人って誰だろう?
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