出し物は井上ひさし原作の「もとの黙阿弥」。
緞帳がいつものと違って、とてもシックで素敵でした。
「もとの黙阿弥」ということわざは、物事が振り出しに戻るという意味でよく使われていますが、このお芝居も、男爵と書生、お嬢様と女中がお互いに入れ替わってはみたものの、あれこれ騒動を起こした挙句、結局最後は元通りになるという悲喜劇でした。
時は明治20年、文明開化の真っ最中。
浅草の七軒町というところにある芝居小屋の大和屋。
食い詰めた芝居小屋の女主人(波乃久里子)は、ここで「よろず稽古指南所」を開いています。
そこに男爵家の跡取り息子(片岡愛之助)と、大金持ちの娘(貫地谷しほり)が西洋舞踏を習うためにやってきました。
ところが彼らはそれぞれ書生(早乙女太一)と、女中(真飛 聖)にお互いの役目をして振る舞ってもらうことにます。
そこから入れ替わり劇が始まります。
劇中劇あり、西洋舞踏あり、音楽隊ありの賑やかな舞台でしたが、中でも一番おもしろかったのが素人歌舞伎の場面。
世間知らずの男爵の息子が、歌舞伎役者に扮して見得を切ったり、歌舞伎のセリフを言うのですが、本物の歌舞伎役者である愛之助が、わざと素人っぽく下手に演じるところは、大笑い。
どたどた歩いたり、ぎごちなく首を回すところは、面白かったわ。
役者さんにとっては上手に演じるよりも難しかったかもしれませんね。
宝塚出身の真飛 聖さんという女優さんは初めて見ましたが、さすがに歌もセリフもばっちりで、よく声が通っていて、演技力もありましたね。
ジャニーズ系の若手タレントも出演していましたが、基礎がまるで違うという感じでした。
一番の役者はもちろん久里子さん。勘三郎を彷彿とさせる場面もありました。
最後はちょっと泣かせるシーンも用意されていて、人生にとっては、ウソと真のどちらが良いのかも考えさせるお話でした。
ちょっと前に見た映画「駆込み女と駆出し男」▼もそうでしたが、井上ひさし原作というのは、どれも膨大なセリフがあって、役者さんは大変だろうなと思いました。
ちなみに「河竹黙阿弥」という江戸時代幕末から明治にかけて活躍した歌舞伎狂言作者がいますが、この人と「もとの黙阿弥」とは何か関係があるのかしら。
お隣の席と、右の前側の席に、どこかの修道会のシスターたちがベール姿で観劇していらっしゃいました。シスターもこういう世俗的なお芝居を見るのね、とちょっと意外でした。
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この日の装い。
透けた麻の夏着物。
名古屋の大須観音骨董市で買ったものなので、産地は不明です。
帯はレインボー帯。
劇場はかなりクーラーが効いていたので、着物でちょうど良いくらいでした。
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