2008年3月24日月曜日

痛いと辛い


先日、東京国際フォーラムで開催された立花隆さんがナビゲーターをしたシンポジウムの2番目のお話。
講師は生理学研究所の富永真琴先生という方。

タイトルは「温度と痛みを感じるメカニズム」でした。

分かりやすいところだけ、紹介しましょう。

よく唐辛子を食べると身体が熱く感じ、ミントを食べると身体が冷たく感じることがあるでしょ。

あれってちゃんと科学的に説明されていることなんですって。

つまり唐辛子はその中の成分であるカプサイシンが、43度で熱さを感じるセンサーでもあり、またミントの主成分であるメントールは冷たい温度を感じるセンサーでもあるからなんですって。

たしかに食べ物によって、熱さを感じるものと、冷たいと感じるものがあるのは分かるわね。

こういう温度を感知できるセンサーが9種類あるそうです。

ところで、温度や痛みというのはどうやって感じているのだと思う?

たとえば腕の皮膚や、足の皮膚に、温度を感じる細胞があるのか、というとそうではないのよ。
その皮膚にあるのは温度や痛みを感じる受容体(センサー)というもの。
そしてそこから脳に伝わって、脳で温度や痛みを感じるというわけ。

末端の神経では、電気信号に変わるのだけど、どうして変換されるかというと、このあたりが難しいのよね。
温度や痛みを感じると開くイオンチャネルというのがあって、そこが開いた時にカルシウムイオンやナトリウムイオンが入ってくると、電位が生じて、そしてこれが電気信号に変換されるそうです。

このあたりの話は何回聞いても、よく分からないのよね。
だってイオンというものは、実際にこの目で見たことがないんですもの。

「電位」とかいうだけで、拒否反応を示してしまうのが、情けないわね。

先ほどの唐辛子の話だけど、ちょっとかわいそうな実験を見せてもらいました。
痛みを感じることのできないマウス(欠損マウス)にカプサイシン入りの劇辛水を飲ませるの。
そうすると、この欠損マウスは、全然気にしないで、ぐびぐびと辛い水を飲んでしまうのよ。
ふつうのマウスなら「あー、辛い、辛い」というような動作(手を口に持っていく)をするのに。
なんだか可哀想な画像だったわ。

面白いと思ったのは、「痛い」というのも「辛い」というのも、英語では両方とも「ホット」という単語であるということ。
つまり両方とも元は同じ、ということかな。

でも痛みを感じない先天性無痛症という病気の人がいて、その人は足を切られたりしても全然痛みを感じないんですって。
それはそれで悲劇よね。

無痛といえば、私が子どもを出産した時は、その処置を取られたの。
先生が、「痛くないようにしてあげますからね」と言うので、ベッドにいた私は、何のことか分からずに「ハイ」と答えてしまったのよ。
だって、陣痛の最中に質問されたって、抵抗なんてできないでしょ。

というわけで、私は世の中のお母さん方のように、痛い思いをして頑張って出産したわけではないの。
知らない間に「笑気」というのを吸入されて、気が付いたら、隣にきれいに洗われた赤ちゃんが横たわっていた、というわけ。

もちろんその前の陣痛は覚えているけれど、でも障子の桟が見えないほど歯をくいしばって力んだ、という経験はしていないのよ。

そのせいだか分からないけれど、私は子どもに対してあまり執着心がないというか、自分の身体から出てきた分身のようなものとは感じられないの。

痛みを感じる話から、なんだか妙な方向に行ってしまったけれど、痛みは痛みとして感じていたほうがいいのではないかな、と思うわね。

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

先天性無痛症というのを、テレビで見たことがあります。気づかないうちにケガをしてしまうことが多いので、生活に細心の注意が必要なんですよね。痛みというのは体の異常を知らせるシグナルという意味で、必要なものでもあるんですね。

そのお産は、無痛分娩というものですか。
機会があるかわかりませんが、娘たちに勧めたい(笑)
私は痛みには弱い人間ですが、お産のとき、助産師&看護師さんに、「あなた、我慢強いのね」と、誉められました。
「痛い!」って騒げなかったのは、我慢強いんじゃなくて、シャイだからだと思うの。

おおしまとしこ さんのコメント...

そう、無痛分娩というのでした。私自身はそれを希望していたわけではなかったので、なんだか拍子抜けでしたね。
でも全然痛くないのではなくて、途中まではちゃんと痛かったですよ。でも途中から意識がなくなり、赤ちゃんの鳴き声で気がついたの。
欧米ではこういうシステムが多いそうですね。
でも看護婦さんをしていると、どのように思われるかしら。